試作3号戦車と情勢不安
1934年、帝国や王立国家から新型戦車開発の話が聞こえてくるようになりました。
帝国は昨年再軍備計画とやらを宣言し、勝手に軍拡を始めております。
本来帝国は前大戦の敗戦の影響で軍備については出来ない状態でしたのに、勝手に軍拡にかじを切ったわけです。
各国非難声明は出したようですがそれだけですわ。
誰も戦争をしたいなんて思わないですし、世界的な経済不安の影響で私たちも含め少なからず影響を受けていた各国が立ち直り始めている中で、そんなことしている場合ではないというやつですわね。
みすぼらしいので書いておりませんでしたが、私たち貴族の人間もかなりひもじい思いをしたものです。
国家としても軍にお金をかけるわけにもいかず、結果的に試作2号は20両で打切りとなりましたし、万能戦闘機も20機程度の配備でとどまっておりました。
それでも十分な収益を確保していましたから、私たちはそれなりの生活ができましたし、ローザ様達の会社も辛うじて何とかなったというところでしょうか。
そして、試作3号戦車はより合理化と部品の共通化を進めた結果、なんとか54,600ドルまで押さえることが出来そうなところへやってきました。
車両は全周にわたり60度の傾斜装甲を採用。
均一圧延装甲による45mmを施すことができました。
駆動は大型転輪と80㎝にもなる幅広の履帯を採用し、砲塔正面は90mm側面背面を60mmとした6角形の全周溶接の装甲を採用。
主砲は8.8cm対戦車砲を搭載し、搭載弾数40発、エンジン出力は500馬力を確保。
最高速度は50km/h(不整地30km/h)を確保したものとなったのです。
というわけで、いつもの4人での打合せ(お茶会)なのですが…
「コストをもう半分ぐらいにしないと、数は揃えられませんね」
「ユーディ様のご懸念はごもっとも。
いまわが社のライン製造知識を持って徹底的に作業の効率化と製造工程の簡略化を進めていますから、近いうちに目標は達成できるかと思いますわ」
「試作3号戦車は既に陸軍の要求を満たしているそうですから、後は数をそろえたいと言われていますからね…何とかコストを下げなくては」
「8.8㎝砲はもう少し部品点数を減らす努力をするように指示しておりますわよ」
「エンジンについても航空機用と共用にいたしましたから、あちらの製造が軌道に乗ればさらに下がると思いますわ」
後は転輪やエンジンマウント用の合成ゴムの確保ですわね…
そこが一番ネックになっていますわ。
「そういえば、帝国では3号戦車なる戦車の開発が開始されたそうですわよ」
シルビア様、流石情報通ですわね。
私も陸軍からその情報を得ましたわ。共産国家を隠れ蓑にして戦車開発を進めていたようですわ。
ただ、搭載する砲が5cm砲との情報から、試作2号の敵ですらありませんわ。
帝国は初期型試作2号や、共和国のB1-bis、王立国家のマチルダあたりを相手にすることを目標にしているようです。
あと随分と快走なようですわね。
ますます”電撃戦”というドクトリンに傾いているようですわ。
「現在の情報を総合すると、私たちが開発した戦車の敵ではなさそうですわね」
「ところが、その3号戦車をサポートするための4号戦車というのが困ったことを起こしそうですのよ」
「どういうことです?」
「あたくしが調べたところ、8.8cm砲を搭載し、正面装甲は100mmを誇る化け物のようですわ」
「なんですのそれは…」
そんなスペック、私が本で読んだT-34-85の天敵、ティーガー戦車と呼ばれるものじゃありませんの!
もしかしなくても私たちが先んじて開発した試作2号戦車が呼び水になってしまったのでしょうか?
既に試作2号の時点で8.8cmの搭載をしておりましたから、対抗されたとしか思えませんわ。
「まったく、その4号戦車に対抗せねばなりませんわね」
「ですが、どちらも開発が始まったばかりのようですから、形になっていないかもしれませんわ。
カタログスペックだけ立派でも実際に使えるものができるかは別問題ですもの。
まだ、形になっている試作3号のほうがよっぽど優秀かと思いますわ」
「そ、そうですわね。
ですけれど、やっぱり戦争など起こってほしくはありませんわね」
とはいえ、何か対策を考えないといけません。
Su-120のような、フリゲート搭載の主砲を搭載できるような自走砲発展型も考えないとだめかもしれませんわね…




