2話
パーリナイです。
何日かは連続投稿します。
多大なショックを感じながら歩いて約十分、俺は取り敢えずテンプレを押し進める事にした。
「そう、テンプレと言えば自分のステータス確認から」
手の平を思い切り注視する。
―――――
名前:黒木 碧
種族:人種
Lv.2
【能力】
解析
演算Lv1
術化
―――――
解析······《理内の概念》を分析する。
演算······思考速度にLv×1.5倍の補正が掛かる。
術化······概念の術式化を可能とする。
「······悪くもないし、良くも、ないな」
何より今役に立ちそうな【能力】が見当たらない。出来れば探知系能力、もっと言うと地図能力が欲しかった。これ以上の迷子はしんどいのだ。
「俺の【能力】は〖術化〗を使うためのモノばかりだな。」
概念の術式化。
上手く使えば全能とは行かないでも万能には成れるかもな。それはそれで面白そうだ。
「······〖解析〗は、よくわからないな」
《理内の概念》と言うのが何なのか。
ゴブリンらしき緑色の個体の情報は見ることは出来たけど穴だらけだったし、その理由も判然としない。
(死んでいたから?)
一考の余地はある。あとは単純に扱いに慣れていないからかもしれないけど、それは追々わかることだ。···それにしても、理内、ねぇ。
「······『隠密』を解析」
今、必要になりそうな行動を思い付きでボソリと言ってみた。
≪『隠密』の解析を開始≫
開始されてしまった。どうやら『隠密』は《理内の概念》に入っていたらしい。しかし開始と言われても終了は何時になるのかさっぱりだ。これはやってしまったかな。
「〖解析〗に関して今は放っておこう。先に町を見つけないと。······ん? この音は」
歩いていく方向の先から聞き覚えのある音が聞こえる。考えているものであれと思いながら先を走る。
「よし! やっぱり川だ!」
あるのは水が澄んでいる川だった。霧があるので対岸はうっすらとしか見えないがそこそこ幅のある川だ。
「これで後は川を降っていけば町に着く可能性が高いな。もう無暗に歩かなくてすむ」
昔から川の下流に人は町を作る。
人は水がなければ生きられない。上流は気候が荒れやすいので自然と敬遠されているからこそ下流だ。
「それに歩き続けたから喉もカラカラだ」
水を飲もうと川に近づくとふと、思い出した。確か生水は腹を下しやすいんだったか。熱処理したいところだけど、火なんて付けれないからなぁ。······大丈夫と信じよう。
「ゴクゴク······っはぁ、これは中々」
冷たくてとても美味しかった。こんなことは都会じぁできないからなぁ。環境汚染が大変なことになっているし。
川辺に座り休憩を取る。
流石に歩き疲れた。どうせまた歩くのだから、ここで休息を取るべきだ。
とにかく何も考えずにボウッと川の流れを眺める。その様はエスカレーターを彷彿させ、余計疲れが浮かんだ気がした。
―――ザバァ トポン!
地球でもよく見るサイズの魚が元気よく跳ねている。虫でも探しているのだろうか。そう思っていた時、川の水が人の身長ぐらいの山なりに盛り上がる。魚が、水から飛び出す前の様に。
「······え?」
―――ザバァ!! ドボオオオオオン!!!!
怪魚だ。
異様に目が飛び出した怪魚。
大きさは小型のクジラ並みだ。川にクジラ······どんな生態系をしているのだろう。
口に咥えているのはさっき顔見知りになった別のゴブリンもどきだった。泳いでいる所を捕まったのだろうか、御愁傷様だ。
「······いやぁ、やばいな」
意図せず後ろに下がってしまった。あれは本当にないと思う。深海魚に似た見た目であの大きさだ。近づかれると考えるだけで怖気が走る。
「あっ···解析しとけばよかった」
あれ、そう言えば『隠密』を解析している途中だけど、並列して使えるのだろうか? 後ろにある木を注視する。見た目は始めに見た霧株にそっくりな物だ。
『霧株』▼
うん、霧株だった。
ん? 隣の逆三角はなんだろう。ん~···意識して注視する。
『霧株』
周囲の水気を幹から強制的に吸収、霧に変える。
おお! 説明文! これは嬉しい。訳のわからない物があったら困った事になるからなぁ。ちゃんと解析も出来ることはわかったし。
「···ん? 待てよ?」
ちょっと霧株の説明文、やばくね?
強制的に吸収?
人間死んじゃうじゃん! だから喉の渇きを感じるのが早かったのか。 で、川に近づいてあの怪魚にパクリといかれると。······あ、俺、やばい。
慌てて立ち上がり周囲を見回すと三体のゴブリンもどきを見つける。よく見ると肌はカサカサとしており明らかに水分が足りていない。コイツらも水を求めてここへ来たのだろう。
「···と、考察してる場合じゃなかった」
敵がいるのだ。殺さないと。······あ、その前に〖解析〗しないと。ゴブリンもどき達を注視する。
―――――
名前:なし
種族:ムーラム
Lv.4
【能力】
―――――
へぇ、コイツらムーラムって種族なんだ。でも【能力】はないのか。ん~、ゲームとかみたいに武術系統は【能力】には入らないのかな? これも追々でいいか。
他のムーラム達の情報も見てみたがレベルが少し違うだけで、やっぱり【能力】はなかった。【能力】持ちが珍しいのか、ムーラム達が持っていないだけなのか。情報が足りない。
でも、最初に見たムーラムの文字化けは死んでいたからか。情報が欲しいなら先に〖解析〗、覚えておこう。
「ムギィ!」
「ムギ、ギィ!!」
「ギィ! ギィ!!」
「うるさい、死ね」
川辺に落ちてある石を数個拾いそれぞれの片目に向けて投げる。俺は的当ては得意だ。祭りでは的当てのおっちゃんに当てすぎだと怒られた事もある。
「「「ムギァ!?」」」
ムーラム達は武器を持っていない。リーチは俺が勝っているので落ち着いて対処すれば無傷で殺せる。
片目の痛みにこちらを見ていないムーラムの背後に移動、抱き付くように左腕で右肩を、右腕で顎を持つ。
――ボギッ
一気に両手で引っ張り首を折った。人型の生き物は首を折る、斬るなど首から上をどうにかすれば殺せるから楽だ。
そのまま殺した体を持ち、一番近くにいたムーラムにぶつけ、転ばせる。残りの一体は仲間を殺されて怒っているのか一直線に向かってきていた。
「ムギィィィィィィ!!!」
「遅い」
掻き切る様に振り降ろされた腕を後ろに下がって避け、蹴りを入れる。跳ね上がったムーラムの頭を持ち、膝蹴りを放つとグシャリと潰れる音がした。
それを気にせず手を離すと、攻撃の反動で仰向けに倒れたムーラムの喉を全力で踏みつける。
「···ィ」
「ムギィ!!」
最後の一体が死体を押し退け迫ってくるのを対応しようと横目で見ていると、水の音が聞こえた。······先程聞いた、盛り上がる水の音を。
「ちょ!? まず!」
形振り構わず俺は横に飛んだ。
それと同時、恐ろしき巨大な怪魚が顔を出すと、まだ生きていたムーラムは声を上げることすら叶わず呑み込まれてしまった。
地面に倒れた俺は素早く近くの霧株の後ろに隠れる。あの怪魚は明らかに俺を狙っていたからだ。
(〖解析〗!)
―――――
名前:なし
種族:深闘魚
Lv24
【能力】
臓器拡張Lv3
―――――
臓器拡張Lv3···体内にある各臓器を限界以上に拡張できる。
初めての【能力】持ちだ。
しかもレベルが高い。勝てる気がしない、そして気持ち悪い。
少しの間こちらを見詰めていた怪魚――深闘魚はもう狙えないとわかったのか川へと帰っていった。どうも最後の辺り“いつでも狙っているからな”と言われた気がしたが被害妄想だろうか。これで俺は川に近づけなくなってしまった。
深闘魚が消えたのを確認した俺はその場に座り込んだ。ムーラムとの戦闘よりもよっぽど疲れたな。
「あ~あ、服がどろどろだ。新品だったのに」
気に入って買ったジーパンと白のパーカーは斑に泥を被ってしまっている。おのれ小魚め。
それにしても【能力】って自然的に起こることのない力のことを言うのではないだろうか。
臓器拡張ってあれだろ?
胃を拡張して多く食べられるとか、心臓を拡張して身体能力を上げるとか出来るわけで······戦いたくねぇ。
□□□
あれから俺は川を降って町を目指した。深闘魚に狙われない距離かつ川が目視できる場所を意識して。ビビリ過ぎ? 怖いのだから仕方ない。
そろそろ(今日は野宿かな?)と思い始めてきた頃、やっと町が見えてきた。
それはもう嬉しかったさ。町にさえ入れば安全性が高くなるんだから。
(よし、もう一息! 町に入れば宿とかに泊まれ···泊まれ、る?)
待って······俺······金、持ってない。
それに見たところ関所みたいな場所もあるみたいだし、ん~···金、取られるよねぇ。中世時代でもそんな感じだったようだし、何ら不思議ではないけど。
「え、本当にどうしよう」
このまま町に入ることは、出来なさそうだ。
次回
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