3 ホームセンター、現る!!
「これって……、俺の作ったキャラクターだよな……。」
いや、確実にそうだ……。容姿は元々の俺の顔に似せて作ってはいるが、この左右で色の違う目。
中二病みたいだなって、設定してから笑っちゃったんだよな。
「どうされましたか??」
俺が鏡の前から動けないでいると、メイドの一人が声をかけて来た。
彼女は、他のメイドよりもかなり若く、14~5歳ほどに見える。
「な、何でもないです!! すみません!!!」
「あ、いや、謝らなくても大丈夫ですよ!! こちらこそ突然話しかけてしまい申し訳ありません!」
「こ、こちらこそです!!」
「いや、こちらこそ……。」
「お主達は何をやっているのだ……?」
真とメイドがお互いに頭を下げ続けていると、そこにジルターが眉間にしわを寄せ何か不思議な物を見るような目で話しかける。
ジルターの姿にメイドはさらに慌てふためき、2人に頭を下げると目にも止まらない速さでその場を後にしていくのだった。
「な、何だったんだ……?」
「すまぬなマコト殿。彼女は私の娘なのだ……。」
「えぇぇ!! に、似てない……。」
俺は驚きのあまりついその言葉が口から漏れてしまい、すぐに口を手で覆った。
だがその言葉にジルタ―は気を悪くするどころか、大きく笑いながら答える。
「ハハハハハッ!! 確かにその通りだな!! ミュリーネ……、これは彼女の名前なのだが、あいつは私に似ず母親に似ているからな。今はこうしてミスト家で働かせてもっらているのだが、どうもあのように落ち着きがないのだよ……。」
やれやれ……。ジルタ―はミュリーネの後ろ姿を見つめながら首を左右に振るがその表情はどこか嬉しそうにも見える。
しかしジルタ―はすぐに俺へと視線を戻すと階段を上り、二階にある部屋へと案内するのだった。
しかしデカい屋敷だな……。操作をしているときはあまり思わなかったけど、実際目の当たりにしたらビックリするくらい広い。
それにこの世界では疲れも感じるし……。
「……っと、ここだ。マコト殿、ここでしばらく待っていてくれ。」
「分かりました。」
しばらく二階の廊下を進んでいると、ジルタ―はある部屋の扉を開き俺にその中にあるソファーへ腰かけるように促す。
その言葉通り俺がソファーに腰かけるのを確認したジルタ―は、扉を閉め再びその場を後にしていった。
広い部屋に一人になった俺は、ようやくこれまでに把握した情報を整理し始めるのだった。
「ふぅ……。どうやら俺は本当に別の世界に来てしまっているみたいだな。しかも服装とかはいつものままなのに、肉体だけが変化しているという意味が分からないものまで……。」
でももしかしたらユイさんやジルタ―さんの言葉が分かるのは、この身体だからかもしれない……。
屋敷に所々飾られている絵や書物に書かれている文字も、その上に日本語訳が浮き出てきて読めるし、特にこの世界で苦労しそうということは無さそうだ。
真はそう考えソファーの背もたれに体重をかけ、おもむろにポケットの中のスマホを取り出した。
「これもネットには繋げないし、出来ることと言えば写真や電卓くらいか……? あれ、でもこれって……。」
俺はそこであることに気が付いた。
俺がこの世界に来てからもうすぐ1時間ほどが経過する。にもかかわらず、スマホに映し出されている電池残量は56%のまま変わっていなかったのだ。
俺のスマホは古いものだし、使用していなくても電池が全く減らないことなんてありえない……。
あれ、ちょっと待てよ……?
今思えばホームセンターの電気、問題なく着いてたよな……?
それに蛇口から水も普通に出ていた。異世界に来たのなら、電気も水道も通っていないはずなのに、一体どういうことなんだ???
「失礼します。」
コンコンッ。俺が考えても結論が出ないでいると、しばらくして扉がノックされジルタ―、そしてユイ。
その後に続き始めて会う男性が部屋へと入ってくる。
その男性に顔を見た俺は、男性が挨拶をするより前に思わず声を上げてしまうのだった。
「お初にお目にかかる。私は……」
「ディルハルトミスト!!」
「い、いかにも私はディルハルト・ミストだが、どこかでお会い致しましたかな??」
「あっ!! い、いえ……。あのお名前だけは聞いたことが……。」
しまった!! ついテンションが上がってしまった!!!
俺の目の前にいる左目の下に傷がある40歳ほどの美しい服に身を包んだ男性。彼はアリストファンタジアで最初に出てくるキャラクターである。
アリストファンタジアを始めたプレイヤー、さらにマリン村を選択したプレイヤーは最初に彼に会い最低限の資金を受け取る。
そして村での生活で装備や初めての仲間を手に入れるのだ。
そのディルハルトミストの姿に、真はついその名が口から出てしまったことに慌てるが、ディルハルトは気にしていないのか笑いながら真の対面のソファーに腰かけた。
「ハハハハッ、そうであったか。私の名を知ってくれているのなら家族も同然だ! なぁ、ユイよ!」
「ええ、その通りですねお父様。」
ユイはディルハルトの言葉に笑みを浮かべ答えた後、ディルハルトの隣ではなく真の隣へと腰かけた。
その様子を見ていたディルハルトは、またも気にしていないように話を続けていく。
「それで? マコト殿と申したな?? お主は何やら奇妙な建物と共に田畑の真ん中にいたそうだが、一体どのようにしてそのような所にいたのだ??」
「それが……、私にも分からないのです。」
「分からないとは……?」
あの目……。ゲームで見るのと同じくどこか心の中を見透かされているような鋭い目。
これは下手な嘘をつくと危ないな……。
「それはですね……。」
だが真を答えようとしたその時、ディルハルトの口から出た次の言葉に、真は驚きのあまり言葉が出てこなくなるのだった。
「二ホンから来たのだな??」
「ど、どうして日本の事を……。」
いや、ユイさん達と初めて会った時、日本から来たことは行ったはず。
ディルハルトさんもそのことを聞いたに違いない。
だが俺のその言葉に、ディルハルトではなく隣に座るユイが答え始めるのだった。
「申し訳ありません、マコト様。実は私、二ホンの事を知っていたんです。」
「えっ……!! それは一体どういうことですか?!」
「はい。そのことを説明するには、まずミスト家に伝わる伝承を話さなければなりません。 あれは50年前、この地に一人の男性が現れたのです……」
ユイはそう話し始めると、マリン村に伝わる伝承を語り始めるのだった。
200年前、この世界は魔帝と呼ばれる魔物により混沌の世界となっていた。
だが突如現れた男性によって、その魔帝が倒され、さらに彼はこれまでこの世界になかった魔法というものを各地に広めていった。
そのおかげでこの世界はかつてない程の繁栄を見せ、シューストヘッグ王国はそのお礼として彼を世界を救った英雄として未来永劫語り継ぐと約束する。
しかし、それから20年後、その男性は突如として世界から姿を消し二度と現れることは無かった。
だが彼が初めて現れたここマリン村を預かるミスト家ではさらに伝説は続く。
それは彼は二ホンという国から来たものだということ。彼が突如として消えてから時折二ホンから人が来ては消えていったこと。
それらをユイから聞き終えた真は、ユイから手渡されたある物に驚くのだった。
「これが一番最近、20年前に現れた二ホンから来た人の忘れ物です。」
「こ、これは……!!」
そこにあったのは、俺にとってはよく目にするものである三色ボールペンがあった。
これがあるということは、さっきの話の人は確実に日本人、あるいは元の世界の人だ!
「やはり見覚えがあるのだな。」
俺がボールペンに目を奪われていると、目の前のディルハルトが口を開いた。
「は、はい。これはボールペンですよね??」
「うむ、確か20年前に来た者もそのように言っていたな。ただその者は2日とおらずこの地から消えてしまったが……。」
「消えた?? それはどういう……」
「言葉通りだ。まるで元からいなかったように突如として消えてしまった。部屋に残っていたのはそのボールペンとやらのみ。」
……つまり俺も時間が経てば元の世界に戻れるってことなのか??
いや、最初の人は20年この世界にいた。時間で戻れるということではないのかもしれない。
ただこれで元の世界に戻れる可能性は出て来たぞ! この世界はアリストファンタジアファンからすれば嬉しいけど、流石に一生という訳にはいかないもんな……。
「そうなんですね……。 でもこれで自分に何が起きたのか少し分かってきました。戻れる可能性があるのなら、その可能性に懸けてみようと思います。」
「そうか。うむ、そういうことであれば私も協力しようではないか! 二ホンからの者は、伝説の勇者と同じ。無下に扱えば罰が当たるというものだ!」
「私も同じように考えておりました! 流石はお父様、良いことを仰います!!」
「アハハハハッ、そうであろう??」
話を聞いていたユイの言葉に、ディルハルトは大きく笑い声を上げる。
ただ、真だけはどこか浮かない顔をしている。真はディルハルトの申し出をありがたいと思いつつ、父親から譲られたホームセンターの事が気がかりだったのである。
あの店に何かあったら確実に親父に殺される……。
でもあそこはこの村から距離がある。ディルハルトさんの申し出はありがたいが、この村に滞在し続けるわけには……。
…………っ!! な、なんだ?!
ズゥゥゥゥン!! 俺の顔色が悪くなっていることに気が付いたのか、隣のユイが俺に言葉をかけようとしたその時、突如屋敷全体が大きな揺れに襲われた。
突然の揺れにその場にいた者達は少しパニックに陥るが、揺れはすぐに収まった。
「な、何だったんだ今の揺れは……。」
「そ、そうですね……。すぐに確認を……。」
「ディルハルト様、大変です!! に、庭に!!」
「庭がどうした??」
「……わ、分かりません。ですが早く庭をご覧に……。」
ディルハルトが部屋を出て部下に何が起きたのかを確認するため扉を開けようとしたが、一人のメイドが顔色を変えその扉を勢いよく開いた。
そのメイドはパニックのあまり何を話しているのかよく分からなかったため、ディルハルト達は部屋を出ると、廊下の窓を開け目の間に広がる庭を見渡す。
するとそこには、いつもはあるはずがないある物が広がっていたのだった。
「……嘘だろ。」
ディルハルト達に続き外を見た真がそうつぶやいたのも無理はない。
そこには共にこの世界に転移してきたホームセンターの姿があったのだから。
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