作戦会議
ショッピングモールからホテルに戻ってくる。
テロの話が頭から離れず、どことなく緊張しながらマリさんとのデートを過ごしてしまったのは勿体ない事をした。
反対に、マリさんはどこ吹く風といった体で、気にする素振りなど一切見せない。
マリさんの胆力に感嘆の意を覚えるとともに、これが日常的にある事なのだろうかと心配になった。
とはいえ、私が心配したところでどうにかなる人でもないけれど。
「レミちゃん、これ飲まない?」
と、こんな風に自然である。
そのマリさんの手元には、私が今日買ったお酒が持たれていた。
「あ、それは……」
「どこかの優しい方からの差し入れみたいよ。メッセージまで添えられて」
「あの、お好きなお酒の二番品なんですが、せめてもの御礼です」
「本当に嬉しい……レミちゃんが居ると、落ち着くの。今回の魔界行脚も、もしレミちゃんが居なかったら緊張し通しだったかな」
私はバカだ。
マリさんは優しい。
人の命が掛かっているとなって、平気で居られる人間ではない。
であれば、私に気を遣ったに決まっている。
平然を装っていたに決まっている。
そして、出来るだけの被害を抑えたいから、私にですら頼んだのだ。
「……私、明日頑張ります。何を頑張ったら良いのか分からないですけど、それでも全力を尽くします」
「……お願いね」
ミストラル家の顔をして、私に依頼をする。
その言動を受けて、私の気持ちはナイトになった気分であった。
「あとは、アレックスはどうでしょうか?」
「ええ、それも当然よね。アレックス!」
「はいはいお呼びで?」
隣の部屋からアレックスがシレッと出てくる。
何? お前ずっと居たの?
「明日の用件については知っているでしょう? あなたの情報、ありったけ出しなさい」
「仰せのままに。その前に、お嬢様方、グラスを用意いたしましょうか?」
「ええ、あなたの分も持って来なさい」
これだけ緊張する状況で、ひょうひょうとしているのは流石だ。
意外にも堂に入った手付きで、三つのグラスのお酒が注がれた。
三人で軽くグラスを掲げ、口を湿らせる。
「さて、今回は恐らく爆破だと予想されてるね……いますね」
「別に言葉遣いを気にしなくてもいいのよ」
「それは助かる。じゃあ続けようか。爆破といっても、単純に爆弾を張り付けてどうこうって話じゃない。ある程度の距離を離した状態で、ミサイルをぶっ放すと思われるね」
「ミサイル?」
「ああ、あっちの国から提供されたものみたいだね。ま、何にしても、結界の中からの発射を考えているんだろう」
「それを発射出来て、隠せるとなると手段も場所も限られますよね? 一体どうやって?」
「おやレミリアは分からないのかい? 戦争の戦術を思い出してごらん、直ぐに答えは出るはずだよ?」
またコイツは変な謎かけをしやがって。
だって、ちょっと魔力行使を添えてやれば、科学の自由度は格段に上がる。
ん?
そうか、手段も場所も、限られてなんかいなかったんだ!
「どうやってでも、ですか。そんなん、対策のしようがないじゃないですか」
「ご明察。結界の中といえど、ミサイルを転移させるとか、直前まで小さくしておくとか、やり口なんて色々あるしね。設置してくれている爆弾の方がなんぼか可愛いね」
「まったく、厄介な事をしてくれるわ。他の情報はどうかしら? 警備とか」
心底嫌そうな声を吐き出して、マリさんはアレックスに再度訊ねる。
「とりあえず、公安も軍も警察も動いているよ。結界内の捜査と監視、それにもろもろの規制なんかはバッチリなんじゃないかな?」
「タワーは? 入場規制とかするの?」
「いや、お偉方はそれで屈したと思われたくないみたいで、せいぜい特別警戒態勢ってとこだろうね」
「何処もお偉方というのは、同じような事をするものね。なら、そこら辺は任せるとして、私達はどう動こうかしら……そもそも、ミサイルを本当に打ってくるのかも分からないしね」
「そうそう、陽動って事も考えられるからねぇ……シンプルにタワーに行って、ぶっ壊してしまった方が遥かに楽だし」
「それが出来るのであれば、ね。仕方ない、ちっともスマートじゃないけれど、シンプルで確実にいきましょうか」
マリさんが問題に直面して、シンプルなのは嫌な予感がするがいつもの事だ。
だって、大概自分の力で何とかなってしまうんだから。
「確実っていうのは心強いねお嬢様。で、その手段ってのは?」
「迎撃するのが一番手っ取り早いでしょ?」
ほらもう超力技。




