おめしかかえ
「御召し抱え!?」
マリさんのいきなりの提案に、つい声が大きくなる。
「そうそう、探していたのよねー」
「だって、その、言いづらいですが、ミストラル家でしたら、召使の方もたくさんいらっしゃるでしょうし……」
マリさんは家のことを話題にされるのを嫌っているが、こればかりは聞かなくてはならない。
「そうね、家には使用人は沢山居るのだけれども、私直属の者は居ないわね」
「え!? そうなんですか?」
「そうなのよー。本当なら、もう……とっっっっくに抱えてなきゃいけないらしいのだけどねぇ……まぁ、のらりくらりかわしきれなくなってきてねー。本当ならレミちゃんを、って考えていたけれど……」
「わ、私ですか!?」
は? ならアレックスが現れなければ、私が御召し抱えになったってこと?
24時間いつも一緒に居れたってこと?
で、現れちゃったから、そのチャンスがなくなったってこと?
ほーほー、そうですかそうですか……。
んー……やっぱ殺るかぁ、あいつ……。
「だけど、レミちゃんが移民局から居なくなるのはなー……と悩んでいてねー、いやーちょうど良かったわ」
「けど、おいそれと『はい』と言いますかね?」
「大丈夫。そこらへんは抜かりないわ」
「はぁ……?」
よく分からないけど、大丈夫なのだろう、きっと。うん。
「ちなみになんですが、御召し抱えって、どんな仕事するんですか?」
「そうねぇ、ざっくり言って雑用よ。買い物したり、物を受け取ったりね。まぁ、プライベートはあまり無くなるけどね、私の時計で動いてもらわないといけなくなるし、仕事も家業の方にかかわる細かいことをお願いすることになるかしらね」
「そっか、家業の方も関わってくるんですよね」
「そういうこと」
前述のとおりマリさんはあまり家のことを話したがらない。
それは、ミストラル家という威光で自分が評価されていることに嫌悪感を抱いているのと、国政などにも影響力のある家柄なのだから、裏では人に話せない色んなことがある為だろう。
今も少し困ったような顔つきで私にそう言った。
何でも話してほしい、何でも話してもらえるような間柄になりたい。
しかし、それには私は力が及んでいないのだろう。
「さて、このまま休んでしまいましょう。たいしたことはしていないけれど、このままパーティではしゃぐ気にも、そういう状況でもないしね」
「あの、アレックスはどうしましょう……?」
「朝には起きられるでしょ。後ろに飛んで衝撃をいなそうとしていたようだし」
「その口ぶりだと、いなしきれなかったんでしょうね」
「まぁ、それでも予定の半分くらいしかめり込まなかったわ。柱が折れるくらいするかと思ったけど、加減しすぎたみたいね」
「恐ろしい……」
ひび割れた柱を見ながら、私はそうつぶやいた。




