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こちら異世界移民局!~転生・転移チートを許さない世界の物語〜  作者: ひろほ
第六章 幼馴染とはかけがえのないものなり?
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アレックスのその後

「さて、と……、貴女の行動や目的は分かったわ。もう一つ聞いてもいいかしら?」

「どーぞどーぞ」

「では、貴女の今後は?」


予想外の質問だったのか、言葉に詰まってしまうアレックス。


「今後……んー……とりあえず、また潜入捜査かな? まぁ、ほとぼり冷めるまでは休暇とかになるかもしれないけど」

「ふむふむ……なら、貴女自身のやりがいという部分ではいかがかしら?」

「自分には合っている仕事だとは思ってるよ。この仕事以外なら本当にアサシンぐらいしか向いていないだろうし」

「それに誇りは感じているのかしら?」

「誇り、か……。考えもしなかったな。自分の出来ることとしたいことを考えたらそんな感じになったってだけで。ただ、考えてみれば自分以外には難しい仕事だとも思ってる。誇りっていうのも、あながち無いわけじゃないようだね」


凛とそう言い放つ表情からは、驕りも自嘲も感じられなかった。


「とりあえず、自身のスキルに自信とプライドはあるってことね」

「まぁね。自慢じゃないけど自信はあるよ」

「そうなのねー、じゃあ、“ブレイブ”」


マリさんが魔力行使を行い、黄金色の光線が放たれた。

とっさのこと、かつ至近距離でのことで、アレックスもなす術がなかったようだ。

直撃した直後、光に包まれていくアレックス。

エナジードレイン? 電気? 熱? 衝撃波? 一体どんなダメージを負っていくのだろうか?


「さて、これで体は治ったはずよ。貴女の細胞を活性化させて、筋肉やらの損傷を無くしたわ」

「おや? 確かに体が楽になったみたいだ」


知らなかった。

“ブレイブ”にそんな使い方があったなんて。

でも、考えてみれば、何でもアリの能力なのだから、ちょっと理論めいた要素があれば実現できてしまうのだろう。

その理論が間違っていたとしても、本人が出来ると信じたのなら、あとから結果がついてくる。

問題は出来ると信じる思いの強さ。けれど、マリさんは疑わない。自分が出来ると信じたことなら、長期的にも短期的にもこなしてきた人なのだから。


「―――で、これは何の意味があってのことなのかな? ご令嬢?」

「立ち会いなさい。全力で」


え? 一体何を言い出すんですか?

せっかく無事で、真犯人?も分かって、平穏に済みそうだというのに……。

あれですか? 暴れたりないとかそういうことですか!?


「それは、何かボクにとってメリットがあるのかな?」

「貴女が負けた場合、『公安の潜入捜査官がその場に居合わせたことにより、難を逃れた』とマスコミに流すわ」

「……へぇ」

「私に勝った場合、それは不問どころか、貴女の望む通りの報告にしてあげるわよ」

「それは頑張らなければいけないねぇ」

「あ、そうだ、私が勝ったら、貴女の秘密をレミちゃんに言っちゃうかもしれないわ」

「っ!? ……死んでも知りませんよ?」

「言ったでしょう? 全力で来なさい、と」


いや、ちょっと待って。

何でこの人たちは簡単に命のやり取りを始めようとするの?

さっきまで、そんなことをしたんだから、もうお腹いっぱいですって、私は。


「―――参る」


ソファから後ろに回転しながら飛び降り、構えを取るアレックス。

力の抜けた肩、軽く前傾した上体、少し大きめに前後に開かれた脚、両の手の拳は緩く握られ、胸元に添えられる。

対するマリさんは体を半身にし、右拳を顎に添え、左手は開いた状態で中段に備えた。

止めようにも、下手に間に入れば、マジで私の命が危ない。

いつ始まるか分からない上に、どう狙っていくのかが分からないのだから。いやでも止めないと。

と、慌てている最中にアレックスの姿が薄くなっていく。

やはり、視覚以外にも、魔力や匂いまでもが、希薄になり、ついには完璧に見えなくなる。

…………しかし、アレックスもマリさんも、仕掛けない。

いや、もしかしたら、アレックスは色々仕掛けているのかもしれないけど、マリさんに動きは見られない。

静かな―――本当に静かな時間が過ぎる。

一分、二分、三分。

ボクシングという競技で言えば、一ラウンドを丸々使うほどの時間、動きは見られなかった。

しかし、不意に私の座るソファが動き始める。

―――というか、ぶっ飛ばされる。

さては、私ごとソファをぶん投げやがったな狂人め。

マリさんはそれを事もなげに優しくいなし、着陸させる。ありがとうございます。

しかし、それを安堵するのもつかの間、いつの間にか眼前に花瓶があった。

猛スピードで迫っていたそれを、またもやフワッと受け止めると私に預ける。

あの野郎、私を囮に使う気か。

それは初手でマリさんも気付いているはず。

問題は本命の攻撃がいつ行われるか。

アレックスは言っていた、「“インビジブル”はずっと使っていられるものじゃない」と、ならばタイムリミットが近いのではないのか?

しかし、またも訪れる静寂。

待て、アレックスが言うことだ、それが本当なのかもわからない。

一体、何がいつ本命なんだ?

私も流石に何が飛んでくるか分からない為、周囲に警戒をし始めた、次の瞬間に突き飛ばされる。

なーるほど、『本命の囮』は私ということか―――ふざけんな!

私を両手で抱きかかえるマリさんは、そのまま蹴りを放つ。

途端に衝撃音が響き、すぐさま柱にヒビが入った。


「勝負あり、かしらね?」


柱からアレックスがスゥーっと現れ、床に倒れ伏す。


「……くっそ……」


憎々し気な言葉を身動き一つ取らずに漏らすアレックス。


「貴女ねぇ……今度レミちゃん巻き込んだら、ただじゃおかないからね?」

「両手とあばら砕かれたのは、ただじゃおかないに入らないのかな?」

「授業料よ」

「……それはどうも……」


私を優しくソファに降ろす。

いや、ずっとこのままでも良いんですけどね?


「さて、と、貴女のその手段を選ばないところはとても気に入ったわ。もちろん能力もね。というわけで、貴女、私の御召し抱えにするから」


え? いや、一体なんでそういうことになるんですか!?

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