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お金持ちパワー!

魔界の中でも一際大きいホテルの屋上に、緩やかに車両は止まる。

運転手さんはサッと降りて、待ち構えていたホテルマンたちに荷物を渡していく。

素早い動きだけれど、決してバタバタしているように見えないのは流石だなー。


「荷物は大丈夫? さぁ行きましょう」


マリさんが降りようとすると、素人?の私から見ても完璧だと思うタイミングでドアが開く。

ちなみに、私の方のドアもホテルマンが開けてくれた上、荷物まで預かってくれた。

車から降りると、「支配人」と書かれたプレートを胸に付けた人がエスコートにきてくれていた。

何だか凄い待遇に驚いた私は、マリさんの後に隠れるようについていく。

重厚な扉の大きなエレベーターはフカフカな絨毯に、木を基調とした誂えでどれも細工が施されている。

はめ込まれた窓のガラスもきっとクリスタルだったりとかするのだろうなー。

その窓から次第に外の景色を映し出してくる。

やはり視点が変わると、散々見てきた魔界の街も新鮮に見える。さっきまでは上空に浮いていたんだけどね。


「ミストラル様のフロアはこちらの階になります」


え、ちょい、このオッサン今なんて言った?

お部屋じゃなくてフロア?

エレベーターが開くと、大きな通路。その突き当りにまたも大きな扉。


「こちらがルームキーになります。エレベーターもこちらのキーで動きますので」

「ありがとうございます。こちらの彼女にも渡していただいてもいいですか?」

「かしこまりました、後ほどお持ちいたしましょう。ではどうぞお入りください」


いつもよりもゆっくりと低めの声に、丁寧な言葉と仕草。

これがマリさんの外部向けの仮面だ。……私も数度しか見たことないけど。

支配人が扉を開けると、猫足のソファとテーブルセット、煌めくシャンデリア、白く光沢を持った石の床には複雑な模様が編み込まれた絨毯が引かれている。


「そして、こちらは私共からのプレゼントでございます。どうぞお受け取り下さいませ」


コロコロとカートが音を鳴らしながら、氷が張られたボウルにボトルが数本、美しくカットされた果物が運ばれてくる。


「あら、私が好きな銘柄ですね。もしかして、揃えてくださったのですか?」

「以前お好きだと伺っておりましたので。こちらも合わせて、どうぞごゆるりとお過ごしいただければ何よりでございます」

「ありがとうございます。何かあったら呼びますわ」

「何なりと」


スッと静かに去っていく支配人。


「あーーーー、肩が凝る~~~」


マリさんの外部の人用の仮面がポロっと外れる。

簡単に外れ過ぎじゃないですかね?


「お嬢様、お茶でも入れましょうか」

「いえ、気付けにそのボトルを開けてちょうだい。泡が出るのが良いわ」


テーブルの上に置かれた果物をつまみ食いする姿は、失礼だがとても良家のお嬢様には見えない。

それどころか果物を選り分けてる姿なんて子どもにしか見えない。


「かしこまりました」

「レミちゃん、ちょっと休憩しましょ!」


ソファに飛び込み、横になるマリさんを真似て、私もソファに沈み込む。あ、フカフカで気持ちいい。

運転手さんが、音も無くグラスをサイドテーブルに置いてくれる。

溢れるいい香りと、はじける泡の音に唾液が出る。

マリさんと顔を合わせ、グラスを互いに掲げると口を付ける。

あ、凄い美味しい……。なんだろう、花とか蜜にイチゴのような大人しい酸味。

生きていて良かったな、と思わせるような味だった。

というか、マリさん寝ながらよく飲めるな。と思ったら、魔力行使で口に流し込んでいた。

この人の膨大な魔力量なら、体を動かすよりも魔力を使った方が効率がいいのかもしれないなぁ。


―――にしても、ホテルで休憩か……いや、何を考えているんだ私は……。

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