ファッションとは奥深いものなり。
だだっ広く、豪華な誂えの客室に押され、ソファ以外に所在がない。
マリさんはリラックスした態勢で女性誌?ファッション誌?を宙に浮かして読んでいる。
「レミちゃんはどんな服が好きなのかしら? こんなのはどう?」
と私の方へ、本を向けてくれるが、私にはさっぱり分からない。
分かることといえば……
「あ、えーと、その、肩のところのヒラヒラが動きづらそうですね」
その見た目からの機能性くらいなものだ。
スカートやワンピースだって、通気性を求める以外に興味は無い。
「シンプルなデザインが好きなのねー。ならこれはどう?」
再び内容を確認すると、今度は無地の薄いピンクのブラウス。
袖は七分丈で、襟元には細いリボンが飾られている。
下はピタッとした濃い紺色のパンツスタイル。
スネの中ほどまで丈で足首が見えている。
なるほど、これなら動きやすそうだ。
「あ、これは動きやすそうですね」
「なら、こういうのにしましょうか。あとはドレスねー」
私の反応に微笑むと、違う雑誌を手元に寄せる。
パラパラとページをめくっていくが、ここまで手を使っていないのだ。
薄い紙を一枚一枚素早くめくるという、繊細な魔力行使をいとも容易く行うことに、今更ながら驚いている。
それどころか時折、グラスの中身を口に運ぶなんてことまでやってのける。
「あら、こういうの良いわねー。レミちゃんに似合いそう」
三度向けられた本には、黒いフワッとしたスカートのドレスが載っている。
肩から胸元へレースの模様が、私でも分かるくらい美しかった。
腰にはリボンが巻かれ、広がるスカートが何とも女性らしい。
「私、こういうの似合うんですか?」
「多分、似合うわよ。レミちゃんの綺麗な赤い瞳は黒が引き立ててくれるだろうし、肌も白いもの」
「ふむ、赤と黒、そして白ですか」
「ボブカットの髪だから、首元が綺麗なものの方がいいでしょうし、スッキリとしたボディラインだから脚を見せるとセクシーよ」
「セクシー……」
マリさんやレイさんのようなグラマラスな体に比べ、私の体は控えめに言っても、『控えめ』だ。
どう考えても、セクシーとは程遠い。
身長も低いしね。
ちなみに、私、ヤスモトさん、マリさん、レイさんの順に背が高くなる。
「私、そんなに男性が欲情するような体してませんよ?」
「男性が思うセクシーと女性が思うセクシーは違うのよ」
「違うんですか……」
異性が欲情することをセクシーと言うのではないのか……ふむ、奥が深いなファッションとは。
「さ、ある程度、服の目星も付いたし、レミちゃんのおじいさんのとこに行きましょうか」
目星が付いたのは、一体どのようなものだろうか楽しみにしながら、軽く身支度を整え始めるのだった。




