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入国!魔界!

崩れた顔を引き締めていると、車両がそのまま動き出す。


「こちらからですと、ホテルの方が近いですが、先にそちらに向かってよろしいですか?」

「レミちゃん、それでもいいかしら?」

「そうですね、何時に行くとも行ってませんから、先輩のご都合で大丈夫です」


そういえば、到着したことを祖父母に伝えないと。


「良かった。あ、そうだ、両替しないと」

「あれ? 両替ですか? 端末の電子通貨は?」

「キャッシュをいくらか持っておきたくてね」

「あ、そういえばそうですね」


現金でのやり取りは、今の時代はあまり主流ではない。

銀行口座から直接決済が出来るし、例え異国であっても自動で諸々のやり取りを行える。


「では、皆様、魔界に入りますよ」


空港のゲートを抜け、車は魔界の街を通り抜けていく。

看板や標識の文字が違うが、建物の形は皇国とそう変わらないため、街並みもそこまで変わらない。

しかし、歩いているのは人ではないものがほとんどだ。

それだけで異国情緒が感じられる。

そして、皇国との相違点をそれ以外に挙げるなら、歩道の道幅が広く取られているのと、専用歩道レーンがあることだ。

巨大な種族のために幅を広くするのは当然なのだが、影しか移動出来ないもの、水が無いと存在できないもの等々、面倒くさい奴らの為に、色々な移動方法を用意しているのだ。


そんなことも踏まえ、先輩に建物や地域の説明をしていると、何だかガイドさんになったような気がする。

あの建物が有名な魔界企業の~~ですよ。

あそこの○○公園は勇者が魔王討伐の際に陣を張ったそうですよ。

ここの××地域と呼ばれる地域は、以前、先代の魔王がブチ切れて焼け野原にしたところですよ。

こんな感じで説明と解説をするたび、先輩は目を輝かせながらはしゃいでくれている。

あれは? これは? それは? と聞いてくるときなんかは、とても可愛らしい。

先輩の子どももきっとこんな感じなんだろうなぁ、と妄想にふける。

ロリロリな先輩……うへへ……。

おっと、いけない。

また、だらしのない顔だと注意されてしまう。


「ごめんなさい、私ったらはしゃぎすぎよね」

「いえ、嬉しいですよ。一応私の母国?ですからね。まぁ、国籍は皇国にしましたけども」

「そういえば、大学まではこっちだったのでしょう? なんで成人の時に皇国の国籍を選んだのかしら?」

「あー、私みたいな人型って、こっちだと何気に暮らしづらいんですよ」

「あら、そういうの初めて聞くわね」

「皇国って、ヒューマン以外の人型種族も多く暮らしてますよね。エルフとかデミ(半)エンジェルとかデミデビルとか。なので、色目で見られることも少ないですし」

「その口ぶりだと、こっちは人型に対して風当たりが強いのかしら?」

「歴代の魔王は人型ですし、外交だったりの国家の要職もそうですから、何だかんだ選民思想みたいのを持ってる輩が多いですからね、それ以外の種族から恨まれたりもします」

「意外とそういうのドロドロしているのね」

「ですねー。私なんて半分なので、余計にうるさかったですよ。結局、人型の中でも純粋な魔族じゃないからっていうので、爪弾きされますし。なので、皇国に行く方が、私には楽な部分が多いんですよね」

「なるほどね。けど良かったわ、レミちゃんが私たちの世界を選んでくれて!」


この人は何でいつも嬉しいことを言ってくれるのだろう。

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