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こちら異世界移民局!~転生・転移チートを許さない世界の物語〜  作者: ひろほ
第四章 まったり恋バナ公務員。
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夜更けのシングルトーク2

途端、私は崩れ落ち、止まっていた感情が爆発した。

もう会えない両親への悲しみ。

死への恐怖、体へ突き刺さるガラスや破片の痛み、肌を焼く炎の熱さ……。

色々な感情、体験が混ぜこぜになり、私の叫びと頬を伝う水となって表に出ていた。

そんな私を少女はギュッと抱きしめて―――一緒に泣いてくれた。


あの日、何故一緒に泣いてくれたのか、それは未だに分からない。

けれども、あの日見た眼差し、抱きしめてくれた際の暖かみと匂い、それは今でも鮮明に思い出せる。


その後、私は魔界の祖父母に引き取られ、大学進学をきっかけに、この国へと戻ってきた。

そして、就職活動をごくごく普通に行っていると、公務員の募集説明会を行っていた。

自分で言うのもなんだが、私は優秀な学生だった。

故に、一流企業で高給取りになれる道が確定してはいたが、一応のすべり止めとして公務員も考えに入れることにした。

まぁ、官庁に入って将来は役人も悪くないかな? とも思ったりもしたけども。

その説明会の中で、私はあの時の少女を見つけてしまった。

移民局の業務や福利厚生の紹介の為に、講堂の壇上に上がった少女―――いや、グラマラスな体型に、気品を感じ美しい顔立ちは、少女というには失礼なほど綺麗に成長していた。

それでも、私を見つめたあの煌めくような瞳は変わっておらず、一目見た途端、私は確信した。

あの時の少女だと。


説明会を終えて、彼女に声をかける。

逸る心臓、熱を持つ頭が、なかなか上手く想いを言葉にさせてくれない。


ありがとう


ただそれだけ伝えたいだけなのに。

溢れる感情が、辛い思い出が、あの時の衝撃が、あれから何をしていたとか、私はこんな風にしていたとか……。

色々言いたいこと、聞きたいことが溢れてきて、餌を待つ魚のように、間抜けに口をパクパクさせるだけで、なかなか音になってくれない。


「私はマリ・ミストラル―――あなたは?」

「あ、あ……あ、れ、れれ、レミリア・エイプリル……でっつ!」


盛大に舌を噛む。


「ふふ、可愛らしいわね。移民局に興味があるのかしら?」

「はっ、はい!」


―――違う。

そんなことを言いたいわけじゃない。

そんなことを聞きたいわけじゃない。

ありがとうって言いたいだけなのに。

あなたのことをもっと知りたい。

私のことを知ってほしい。

あなたのその瞳でもっと私を見てほしい。

またギュッと抱きしめてほしい――――――ああそうか。


私は―――あなたに恋しているんだ。


なら、ありがとう、で終わらせるわけにはいかない。

よろしく、で始めなければいけないんだ。


「移民局に―――あなたの部下になりたいです!」


彼女は少し驚いたような顔をして。


「ようこそ! こちら異世界移民局!」


と握手を交わしたのだった。


その後公務員試験も採用面接もサクッとパスし、希望通り移民局への配属となった。

初出勤の日に彼女はこう言った。


「久しぶりね。これからよろしく!」

「はい! これからもよろしくお願いします!」


今では私の大好きな思わせぶりな笑顔を浮かべて、彼女はまた握手を求める。

―――今日からまた握手から始めよう。

生まれ変わった私のスタートの日なのだから。ね、先輩。

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