教育機関訪問6~トラキア・エルシュタット~
転生者候補、最後の一人、トラキア・エルシュタットは、ある意味異質な存在だった。
他の4人は突出した才能と良くて平均、もしくはお粗末なスコアを残していた。
トラキアに関して言えば、体術は飛びぬけて秀でており、錬金術もトップレベル。
で、他は平均点。
―――というなら他の連中とさほど変わらない。
しかし、回復、補助魔法やサポートプログラミングなど、他人を助ける技術に関してはまったく無い。
それで平均点という事なら、他者に害を及ぼす、攻撃性の高い技術は飛びぬけているということだ。
さらに言えば、こちらは今まで最年少の7歳だ。
サイコパスの気があるんじゃないかな?と思わざるを得ない。
で、コイツも貴族。先輩には劣るが、勇者のパーティだったものの家系のハズ。
「失礼いたします」
キリっとした声と共に、背筋をピンとした金髪の少年が入ってくる。
「トラキア・エルシュタットです。本日はよろしくお願いいたします」
「えっ?」
「えっ? ってどうしたのレミちゃん?」
「いや、天才ってもっと自分の才能に溺れている人物しか居ないのかと思ってました」
「ははは、確かに僕の先輩方は、とても個性的な方々ですね」
え、なにこの落ち着いた返し? いや、絶対お前。転生したとするなら絶対お前だわ。
何て考えてしまったけど、とりあえず話を聞くとしよう。
「初めまして、移民局のレミリア・エイプリルです。率直に聞きますが、この学校生活はいかがですか?」
「はい、つつがなく過ごしております」
「そういえば、私、会ったことあるわよね?」
「やはり、マリ・ミストラル様でしたか、お久しぶりです」
「やっぱり、エルシュタットの」
「メイガン・エルシュタットの第三子です。おそらく、昨年末のパーティでご挨拶させていただいたかと思います」
「そうね、その時はあまりゆっくりと話も出来なかったものね」
「はい、入室しましたらビックリしました」
「世間は狭いものね。つつがなくと言っていたけど、何か懸案事項はあるかしら?」
「そうですね、強いて言えば……もう少し物が低く造られていると嬉しいですね。蛇口や棚など、僕にはとても高すぎて……」
「そのうち低く感じるようになりますよ。人間関係では何か困ったことはありませんか?」
「人間関係も問題ありません。父が少し厳しすぎるかなぁ、と思う位で学内ではまったく!」
「それは重畳。勉学ではどうですか?」
「そうですね、父から手ほどきを受けたものに関しては、手ごたえを感じますが、それ以外は……といったところですかね」
先ほどから父親に対するワードが多い。
厳しい躾けをされているのだろうけど、あれかな、父親に愛されてないとか思っちゃってる子かな?
まぁ、優秀な教育に厳しい躾け、そして伝統ある家系なら、こういった子供が生まれてもおかしくないのかな?
などと、先ほどの確信が揺らぎ始めた。
いや、これほど礼儀正しい少年が、まさか転生者のはずがない。とさえ思ってしまっている。
「魔力行使なら、このお姉さんはとても上手なの。今度機会があれば、手ほどきを受けてもいいかもしれないわ。レミちゃん、本当にどうしようもなく予定が空いてて、けれども何かしなければ死んでしまう位暇な日があったら付き合ってくれないかしら?」
「ぼ、僕からもよろしくお願いします!」
「喜んで。そこまで限定的な日じゃなくても、いつでも呼ばれれば参りますから」
生来グータラな私は、何か予定が一つ入るだけでも超忙しく感じてしまう。
さらに、普段は寝るのと何もしないことで忙しい。
故に私に暇な日なんて無いのだ。先輩も気を遣わずに誘ってほしい、
「良かったわねトラキア」
「はい、ありがとうございます!」
「私ごときで、お力になれるかわかりませんが、こちらこそよろしくお願いします」
「そしたら、またお部屋に戻ってもらえる? 色々聞けて良かったわ」
「いえ、こちらもありがとうございました!」
さて、これで一通り終わった。
――――――あとは答え合わせだ。




