プロローグ
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日間ローファンタジー・日間異世界転生/転移にランクインしました!
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(2730字)
♥アイリスの場合
「アイリスは本当に可愛いな」
「この子はなんて可愛いらしんでしょう」
物心がついたときからわかっていたわ。
私に向けられる『可愛い』は、子どもとしての可愛らしさじゃなくて、容姿の可愛さだってことは。
大きな青い目に柔らかくウェーブのかかった金髪。
色白で華奢な体。
皆が天使だ妖精だって褒めてくれたわ。
フォスター侯爵家の第三子として生まれた私は、両親や兄たちから、それはもう大事にされて育ちました。屋敷の中で、私はお姫様だったわ。
そんな大事にしてくれる家族ではあるけど、私には秘密があるの。
私は誰かの生まれ変わり。
なぜなのかわからないけど、私には自分じゃない誰かの記憶がある。
そのことに初めて気が付いたのは、7歳のときだった。
その年の冬は、高熱と咳が続く病が流行っていて、兄二人が先にかかり、最後に私がかかったわ。兄たちは一週間ぐらいで治ったのに、私だけ長引いてしまって、両親はじめ屋敷中の者に心配された。
高熱にうなされる中、いろんな映像が頭に流れ込んできたわ。
どこか違う国の学校と思われる風景。
制服を着た女の子のグループ。
その中で特に可愛い小柄な女の子。
その女の子に話しかけてくる男の子たち。
一気にいろんな映像が流れ込んできて混乱したわ。怖くなって両親に話そうと思ったけどやめたわ。話さない方がいいって、私の直感が働いたみたい。
熱に浮かされてみた夢だと言えなくもないけど、あれは夢じゃない。
だって私、あの場にいた覚えがあるもの。
ずっと忘れていたことを、ふいに思い出した感覚だった。
流行り病が治った後も、頭の中に映像が流れ込んでくるようになったわ。
場面がたまに浮かぶだけなんだけど、あの可愛い小柄な女の子は、いつも困ったような、はにかんだ顔をしている。そして次の場面では、周りの男の子たちが手伝ってくれている場面になる。
私はあの子から学んだわ。
私も頼み事をするときは、上目遣いで困った顔をするようにしたの。
そうすると、あの映像通り周りの人が動いてくれるようになったわ。
14歳になると、はっきりとした長い映像が流れ込んでくるようになったの。
王立学園の入学式に出席するため、制服に袖を通した瞬間にそれはやってきたわ。
今までとは違う、もっとはっきりした映像。
あの子が、緊張しながら新入生の列にいる。
周りの男の子が横目で何人もチラチラと見ている。
教室で我先にと声をかけてくる男の子たち。
困ったように、はにかむ女の子。
他の女の子たちはさりげなく、あの子と自分の立ち位置を比べているわね。
中には、鋭い目つきになっている子もいる。
あっちの子もこっちの子もだわ。
─────だって仕方ないじゃない!
可愛く生まれてきたんだから。
可愛いというだけで、勝手に人が集まってくるものなの。
・・・そう、 あの子は私。
昔の私なの。
だから私は、この世界でも、可愛い私を思う存分楽しむことにしたわ。
♦ダイアナの場合
「ダイアナ危ない!」
ザーッ、ポキッ。
7歳の時、わたくしは木から落ちて、手首を骨折しました。
まさかこの出来事がきっかけで、前世の記憶が呼び起こされるなんて、その時は思ってもいませんでした。
わたくしは、幼い頃よりワーグナー侯爵家の娘として恥ずかしくないよう、愛情深くも厳しくしつけられました。と言っても、じっとしているような子ではなく、兄と弟に挟まれて活発に走り回っている子どもでした。兄ができることは、自分にもできると、あの時までは本気で思っていました。
家庭教師の先生が帰った後、大人に見守られながら、兄と私と弟は庭園で遊ぶのが日常でした。兄はわたくしより3歳上で、わたくしと弟はいつも兄の後ろをついて回っていました。
あの日は珍しく庭園に子どもたちだけになりました。夕方お客様が来ることになっていて、侍女たちは準備に追われていたのです。
注意する大人がいないと気が付いた兄は、普段やってはいけないと言われていることをやり始めました。庭園にある一番大きな木に登り始めたのです。
「お兄様、木登りはいけないと言われていますわよ!危ないです!」
「いいじゃないか、少しぐらい。それに僕は運動神経がいいからね。ほら!」
お兄様は、わたくしの頭の上まで登ると、そこからヒョイと飛び降りました。3歳下の弟は、ヒーローを見る目でパチパチと手を叩いています。その様子を見て、兄は言わなくてもいい一言を言いました。
「木登りなんて簡単だよ。まあ女の子にはできないかもしれないけどね」
・・・・・今なら、兄が言ったことは、能力的に無理ということではなく、そんな服装では無理と言ったのだとわかりますが、当時のわたくしは『お前には無理』と言われたと思ったのです。
「それぐらい、わたくしにだってできますとも!」
「そうじゃなくて・・おい、やめとけ。危ないじゃないか」
兄が止めるのも聞かず、わたくしは木によじ登りました。兄と同じ高さまでは登れませんでしたが、弟に見上げてもらえる高さまでは登りました。
「ダイアナ、わかった。女の子にもできる。だからもう下りろ。気をつけるんだぞ」
わたくしも、兄のように華麗にジャンプして下りるつもりでした。
ですが、ジャンプしようとした時にスカートの裾が枝に引っ掛かり、前のめりになって落ちてしまいました。顔を守るために、咄嗟に手をつきました。
ポキッと嫌な音がして、手首に激痛が走りました。
泣きました。
弟が先に。
弟の泣き声を聞いて、大人たちが走ってきました。
そこから記憶がないです。血だらけの左腕を見ているうちに意識が飛びました。
兄は大変怒られたようですが、わたくしは高熱を出して寝込んでしまっていました。
その間に夢を見たのです。
正確に言うと、夢ではなく記憶でした。
見たことがない場所で走り回る子どもたち。
子どもたちは、異国の子のようです。
その中の二人の男の子は、わたくしの実際の兄と弟とは全く違う見た目をしているにもかかわらず、わたくしの兄と弟に間違いないのです。
みんなで楽しく走り回っています。
「待って!」
と声をかけたところで、目が覚めました。
心配そうに、兄がわたくしを覗き込んでいます。
わたくしは、夢を見て感じたことを兄に話しました。兄は茶化すこともなく、真剣な顔で聞いていました。
「僕、それ知ってる。たぶんそれ、前世の記憶だ。僕が読んでいる小説に書いてあった。ダイアナは別の世界から転生したんだよ」
「転生・・・?」
「うん。生まれ変わったってこと。・・・いいなぁ。僕も体験してみたいなぁ。あ、でも、父上や母上には言わない方がいいかもしれないな。よその子の記憶があるって言ったら、イヤかもしれないし・・・」
言われてみればそうかもしれない、と思いました。
転生のことは、兄と私の秘密になりました。




