~旅立ち~
…それから5年の月日がたった。
レイもリュウも立派な青年となり、
体にあわなかった剣も、
長身の彼らにはすっかり収まっていた。
不思議な事に彼らの
誕生日は同じ日だった。
そして、20歳になった今日、
悲願だった旅に出ることを
許されるのだった。
2人の住むプラティの村の広場には、
多くの村人が集まっていた。
齢120歳の村長が
よぼよぼとした足取りで、
2人の前に出てきた。
『ふぉっふぉっふぉっ。
お主らも今日で20歳じゃの。
約束通り、旅に出ることを許そう。
2人で協力して、
困難に打ち勝つのじゃぞ。』
『お言葉ですが…』
と、それまで黙っていた
リュウが村長の言葉を遮った。
『俺はレイと旅をする
つもりはありません。 そうだろ?
レイ?』
そう宣言し、レイに尋ねた。
『もちろんさ!!
こいつと旅したって、
おもしろいことなんて
ないっしょ!!』
それを聞いていた村人たちは、
口々に反対を始めた。
『静まれぃっ!!』
と、村長が一喝し、
喋る村人は沈黙した。
『家族のないお主らを
ここまで育てたのは、
プラティのみんなじゃ。
心配する気持ちも
分かってやってくれ。
儂らは家族じゃ。
しかし、旅先の事は
お主らが決めるのじゃ。』
話を聞き終えたリュウは
『それでは、
個人で行動させていただきます。』
と言った。
『そうか…
このプラティの村から、
2人もの神の子が
生まれたのは奇跡じゃ。
リュウ、レイ、
左腕を出すのじゃ。
プラティの旅立ちの
印を押そう。』
リュウとレイはそれぞれ、
腕をまくり上げた。
それを確認した村長は、
静かに呪文を唱え始めた。
すると、次第に
村長の右の掌が輝き始めた。
呪文を唱え終えると、
2人に腕を自分に出すよう命じた。
2人は腕を出すと、
村長はまずリュウの左腕に、
そして、レイの左腕に、
自らの右の掌を押し当てた。
痛みはなかった。
しかし、村長が手を外した後、
プラティ村の印が火傷の後のように、
記されていた。
『これでよしじゃな。
お主らは正式に
旅立ちを許可された。
自由に行動するがよい。』
村長は疲れたように、
額の汗を手で拭いながら言った。
『別れの前に久しぶりに
一戦交えるか?』
リュウが微笑を浮かべながら、
レイに言った。
『…上等じゃん。』
レイは少しためらったが、
リュウの言葉に答えた。
リュウとレイは、
5年前のあの草原にいた。
あの日以来、
勝負はしていない。
レイはあの日からずっと
修行を続けていた。
レイは自分がどこまで
強くなったのか
試してみたくもあった。村人たちは既に帰った。
今宵もあの日のように、
満天の星空が輝いていた。
2人は剣を抜き、構えた。
そして、同時に動いた。
月に照らされ、
2人は何度となく、
剣を振るった。
不意に、
リュウが額に手をかざし、
その手をまっすぐ、
レイに向けた。
次の瞬間、紅蓮の火球が
3つ飛んできた。
しかし、
予期していたレイは、
地面から岩を出して、
火球を受け止めた。
2人はこの5年の間に、
村で唯一魔法が使える村長から、
様々な魔法を教わっていたのだ。
村長の魔法はそれほど
強大な者ではなかったが、
2人はそれを様々に改良を加え、
村長の目を驚かせた。
そして、再び剣による攻防…
こんな事が小一時間程続いた。
目の前には、
5年前と同じ状況があった。
しかし、前回と違っていたのは、
今回は、レイがリュウの胸元に
剣を突きつけている点だ。
『俺の…764敗0分…1勝…』
『強く…なったな…レイ…』
『いや…互角だったさ…』
2人とも汗だくで、
肩で息をしていた。
レイはリュウを立ち上がらせた。
そして、
2人は互いに自分の剣を
軽く合わせて、
互いの健闘を祈り合い、
全く逆の方向を歩み始めた。
レイは振り返り、
『俺たち、
またどっかで会えるよな?』
と尋ねた。
リュウは後ろ姿のまま、
軽く手をあげた。
2人の旅は今始まった。そして、星が1つ流れた。




