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第376話 追うよ!

 



 これで残りのオークはオークジェネラルが二匹、雑魚オークが二十六匹となったわけだが、オーク達は警戒を強めてしまい、五匹という小隊で行動する事が無くなってしまった。つまりオークジェネラルを含めた十匹以上の隊で水を確保したりするようになってしまった。さすがに5対10では分が悪すぎた。わたし達はしばらく様子を見守らざるをえなかった。


「あ、今日のオーク軍団はいつもより奥まで入って来てるわ。」


 夜もふけエルフの里で眠っていたわたし達は、フローラの一声で飛び起きた。どうやら先に動いたのはオーク軍団の方だった。


「数は?」


「うん。オークジェネラルが一匹。雑魚オークがいち、に、・・・・。きゅう、十匹だわ。」


 わたしの問いにフローラは数えながら答えてくれた。どうやらインコのキムちゃんは鳥目で見えないので鹿のしーちゃんの視点で見ているみたいだった。


「で、どこまで来てるの?」


「うん。水場の小川を超えて一列になってこっちに向かっているわ。」


 フローラはテーブルの上に広げられた地図に小石を置いて言った。そこはかってわたし達がエルフの里に来た時に通った道であった。


「まずいわね。みんな迎え撃つよ。ここ(エルフの里)に絶対に近づけさせないよ。」


「「「「おう!」」」」


 わたし達はエルフの里から一斉に撃って出た。


「それでどうする?」


 わたしは隣を走るユウに問いかけた。


「そうね。馬鹿正直に道を歩いてきてるみたいだから、わたし達は道の側で迎え撃ちましょう。木の上で待機するのはどう?」


「よし。じゃあ浜に出る前の所にちょっとした広場があったわよね。そこで待ち伏せしよう。」


「え?木の上じゃなくて。」


「うん。木の上も良いんだけど、わたし達は魔法が撃てるでしょ。だったら見通しの良い場所の方が良いと思うんだ。森の中に逃げられたら木が邪魔で魔法を撃てないでしょ。」


「そうね。リーダーの言う通りにするわ。」


 ユウは少し不満そうであったがわたしの意見にうなづいた。魔法よりも剣のユウなら側面から斬りつける方を選びたい気持ちも分かるが、肉弾戦は思いがけない危険をはらんでいる。飛び道具の魔法が使えるんだからあえて危険を冒す必要はない。


 オーク達よりも先に広場に到達したわたし達は自分達に有利になるように足場作りをする事にした。


「道をふさぐことはできる?」


「まかせて。」


 フローラが呪文を唱えると道の両側の木が突然成長し始めて道を覆い隠してしまった。さすがは森の支配者エルフである。樹木をどうにかする魔法はお手の物だった。これで袋小路の完成であった。後は広場の中に落とし穴やら大小様々な罠をわたし達は作った。罠にはまって身動きが取れなくなった所を魔法で一斉攻撃する作戦であった。


「あ、来るわ。」


 待つ事2時間ほどであろうか。フローラが警告を発した。わたし達がかたずを飲んで待ち構えているとオークジェネラルを先頭とする一団がついに現れた。オーク達の姿を見ると同時にわたし達は一斉に呪文を唱え始めた。


 しかし先頭のオークジェネラルは広場に来る前に違和感をすばやく察知して何事か声をあげた。するとなんとオーク達は全員踵を返して一斉に逃げ始めた。


 こうなっては作戦もへったくれもない。追うしかない。


「追うよ!」


 わたしは広場に隠れているみんなに声をかけた。


 見かけに騙されてはいけないがオーク達の身体能力は人間をはるかに凌駕している。言うなれば二メートルを超える巨漢力士が陸上選手のようにすばやく走るようなものである。逃がさまいとわたし達はあわてて茂みから飛び出した。


「え!」


 なんとそこに無数の火の玉が降り注いだ。


「みんな大丈夫?」


 わたしはみんなに声をかけた。もちろんたかがファイアーボールごときでやられるようなひ弱なわたし達ではない。しかしあまりの想定外の攻撃に無防備にくらってしまって足を止めてしまった。


「大丈夫だけど。ぜったいに許さん!」


 トシコが言うように、けがはしなかったけど痛い目にあったのは確かでわたし達は怒り心頭になってしまった。


 もはや作戦もへったくれもない。頭に来たわたし達は逃げるオーク軍団に追いつきざまに後ろから魔法を撃つだけであった。しかし殿のオークジェネラルも魔法で反撃してくるし、なによりこちらには身体能力の著しく劣るエルフ族のフローラがいる事もあって逃げるオーク軍団をなかなかとらえきれなかった。


「しまった!ごめんなさい!」


 一進一退の追撃戦をしていると突然フローラが叫んだ。


「どうした?」


 わたしは殿のフローラに聞いた。


「戦闘に夢中になって残ったオーク軍団の見張りを怠っていたわ。」


「それが?」


「いないのよ。一匹も。拠点に。」


「なにー!」


 夜も明け始めてようやくインコのキムちゃんも空を飛べるようになって拠点の監視を始めて発見したのであった。そんな事より消えた残りのオークはどこに行った。ま、まずい。


「ストップ!ストップ!みんな止まって!」


 わたしはあわててオーク軍団を追うみんなを止めた。しかしもう遅かった。無数の火の玉が今度はわたし達の後ろから飛んで来た。


「くそ!はめられた!」



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