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狙われるリノ

 リノは会議室を出て、天守閣の最上階へと向かう。

 そこにいるのは、ラノとレノだ。

 二人は、窓際に座って優雅にお茶を飲んでいる。

 給仕をしているのはキルリス。


「どうしたのリノ、渋い顔をして」


 ラノが部屋に入ってきたリノに声をかける。

 リノは、二人が座っているテーブルの開いている椅子に腰かけると、二人に報告した。


「私、悪魔に孕まれちゃうんだって」

「「ぶふっ!」」


 ラノとレノが口に含んでいたお茶を吹き出してしまう。

 リノは突然何を言い出すのかと。


「ちょっと、麗しいエルフ二人が噴き出すんじゃないわよ」


 その様子にリノが突っ込み炉入れる。

 現女王はリノだとしても、ラノもレノも女王をするのだ。

 それなりの品性という物があるだろうと。


「ごめん。あまりに唐突だったから」

「そうよ。いったい何?」


 ラノとレノがそれぞれ聞いてくる。

 リノは会議室であった、アシュリーからの話について、二人に報告する。


「悪魔が転移門でやって来てる?」

「そうなの。で、どうしたらいいかと」

「で、目的は魔力を持った人族との交配?」

「そうよ。それで最強の悪魔を作り出そうなんて、そんなこと、グレイス様しかできないに決まっているじゃない」

「そうよね。それをわかってもらうってことは?」

「神様のことを言っても、信じてくれなくない?」

「そうよね」


 うーん。と悩む三人。


「悪魔ってことは、第二階層よね? 第二階層を担当しているリーゼロッテ様にお伺いをたててみるっていうのは?」

「リーゼロッテ様? 自由人筆頭みたいな人よ。だから、第二階層にも、この階層にも興味はないわ、きっと」

「そうよね。下手につついて、ナンバーズを怒らせるわけにはいかないし」


 ちなみに、ナンバーズと言うのは、グレイスの妻、第一位のソフィリアから第二十位のステラまでを指す、妻ではない者達が使う隠語である。


「うん。ダメよ。ナンバーズを怒らせては。私達だって、ナンバーズ入りを狙っているんだから」


 うーん、と再び悩む三人。


「キルリス、何かいいアイデアは?」


 リノが宰相であるキルリスに何か案はないかと尋ねる。


「そうですね。まず、お三方は魔力を抑えて隠しておく必要があると思います」

「そうね。そうするわ」


 とは言われても、普段から抑えてはいる。


「それから、強大な魔力を持つもののダミーを泳がせる」

「えっと、私達より強大な魔力を持つって、そんな人族がこの世界にいると?」

「そうよ。私達の次は、キルリス、貴方じゃない」

「もちろん、私はお三方以外に付き従う気はありませんので、私もこれまでどおり魔力を抑えさせていただきます」

「ところで、悪魔の言う、強大な魔力の基準がわからないわよね」

「……その基準が低かったら、そこそこ高い人族というレベルですら連れ去られる可能性があると」

「そう言うことですね。その場合、もうすでに被害が出ているかもしれません」

「では、どうするのです? キルリス」

「あの、どちらにします? 魔力量の多い者をかくまう。それか、差し出す。いずれにしろ、魔力量が多そうな人族の情報を集める必要があります」

「わかったわ、キルリス。騎士団、冒険者共に名の知れた魔導士の情報を集めなさい。そして、その者達をかくまいましょう。おそらく、魔力量と言うことであれば、獣人やドワーフを除いてもいいかもしれません。つまり、エルフと人間族だけです」

「あの、ハイエルフの皆様は?」

「ラナ様とルナ様はそもそもナンバーズですし、ラミ様とルミ様も悪魔には引けを取らないでしょう。ですから、大丈夫だと思うわ」

「それでは、エルフについては、キザクラ商会に協力を求めます。人間族については各貴族に。それで、他国はどうします?」

「明日決めるわ。ありがとう、キルリス」

「は、リノ様のためならこの命……」


 そう言って、キルリスは部屋を出て行った。





「ところで、悪魔達は、どうやって魔力量を計るつもりなんでしょう」

「目を凝らして?」

「そんなこと、悪魔にはできないでしょう」

「水晶?」

「ま、それが確実だけど、一人一人やるのもね」


 レノが思いついたように言う。


「魅了がかかるかどうかじゃない?」

「「!!!」」

「ということは、悪魔の魔力が多いほど、悪魔が街に溶け込んでも気づかないってことじゃない」

「まあ、気づいていない人たちは安全なんでしょうけど」

「じゃあ、悪魔に気づいても、気づいていないふりをすればいいんじゃない」

「「……それだ!」」


 実際には、これらの認識は間違っている。

 魔力を持っていると疑われるや否や、悪魔の攻撃によって確認されるのだ。

 ラテのように。

 魔力を持っていなくても強大な魔法を使えば対象であると判断されるのだ。

 レーナやミシェルのように。

 それに、そもそも悪魔が求めている魔力の多い人族というのは、リノたちレベルなのだ。

 それも、何人も必要なわけではない。

 一般の魔導士や冒険者たちはおそらく悪魔達に狙われない。

 レーナとミシェル並みの魔法を使わない限り。

 つまり、現在狙われる可能性がある人族は、リノ、一人である。

 レーナとミシェルはダミーとして有効かもしれないが、精霊である。



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