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第19話

黒布さん達と別れた後、私は半妖さん達に聞き込みをしようとした。少しでも、元の世界の情報が欲しかったのだ。


「ひっ……」


「うわっ……」


普通に無理だった。全員、鬼面さんを見て逃げていく。まず、目が合っただけで逃げられてしまうのだ。


「すまない……」


「いえ……大丈夫です」


鬼面さんは、少し申し訳なさそうに謝罪する。黒布さんと白骨くんに話を聞けば良かったかもしれない。でも、鬼面さんが関わりたくなさそうだったしなぁ。


「うーん。どうしたら……」


考え事をしながら歩いていた。


そのとき――


凄まじい地響きが聞こえてきた。何かが近づいてくるような足音だ。


「なにっ!? 何の音っ!?」


「迷者……俺から離れるな……」


鬼面さんは刀を構えて、警戒態勢になる。遠くの方から黒布さんと半泣きの白骨くんが走っており、その後ろを黒い人型の怪物の群れが追いかけていた。


「あの男か……」


鬼面さんの肩から力が抜けていった。彼は呆れたようにため息をつく。


「鬼面さん、あれを見てください……」


私は震えてる手で空を指さす。上空から降り注ぐ大量の隕石のような物。そして、大きく口を開けた強大な赤黒い肌の人型の怪物。


「あの男、厄介な者たちを連れて来たなっ」


そう言って、鬼面さんは降り注ぐ隕石を刀で切っていく。この世の終わりみたいな光景に私は絶句していた。


「これが……不運の力……」


半妖さん達は逃げたり、逆に大喜びで戦いに行ったり、混乱を極めている。そんな中、誰かに口を塞がれた。


「んぐっ……」


背後から捕まえられて、路地の方へ引きずり込まれる。鬼面さんは直ぐに気づいて、刀を向けた。


「ははっ……鬼面っ、こいつ人間だろ……」


「………………」


背後にいる半妖さんは、少し興奮ぎみに私の体を押さえ込む。


「しかも、あの医者のお気に入りだ。仲間が噂してたんだよ。鬼面の傍に人間がいて、眼帯が狙ってるって」


震える声で、半妖さんは話し続けた。


「こいつを渡せば、眼帯に恩を売れる」


眼帯さんにだけは、絶対に捕まりたくない。縋るように、鬼面さんを見つめる。


「マヨイを離せ」


ピリッとした殺気が肌を刺す。鬼面さんの圧が増していく度に、喉を締め付けられるような痛みに襲われた。


「この人間を殺されたくなかったら動くなっ」


「ひっ……」


ナイフを首に当てられて、身動きが取れない。半妖さんの手が震えて、首から血が流れ出た。私は目を閉じて、恐怖を押し殺す。


そのとき――


空から黒布さんが落ちてきた。


瞬きをした瞬間、私は鬼面さんの腕の中にいた。黒布さんは素早く立ち上がり、倒れている茶髪の半妖さんを覗き込む。


「すみません、お怪我はありませんか? 見知らぬお方……」


黒布さんは優しく茶髪の半妖さんの体を揺さぶる。私は唖然としつつも、鬼面さんにお礼を伝えた。


「あ、鬼面さん。助けてくれて、ありがとうございます」


「…………」


何も言わない鬼面さんに、少し不安になる。もしかして、怒っているのかな。いつも面倒事に巻き込んでしまっているから、怒らせてしまったのかもしれない。


「おや、鬼面様にマヨイ様。もしや、あなた方にもご迷惑をかけてしまいましたか?」


「えっと……どうだろう……」


一応助けてはもらったけれど、元々は黒布さんのせいでピンチになった訳だしなぁ。複雑な顔をする私に、黒布さんは首を傾げた。


「その気配……もしや、マヨイ様は人間ですか?」


「えっ……」


黒布さんの言葉に息を飲む。いつの間にか、薬の効果が切れてしまったんだ。


「鬼面様、マヨイ様を連れて逃げた方がよろしいかと。この混乱した状況では、誘拐される可能性が高いでしょう」


「貴様が言うな……」


鬼面さんは心底不機嫌そうに言い放つ。どうやら、鬼面さんは黒布さんと相性が悪そうだ。


「ここは私にお任せ下さい」


黒布さんは、真っ黒な扇子を懐から取り出した。何の装飾もない真っ黒な扇子だ。


「さあ、私がお相手いたしましょう」


黒布さんがそう言うと、あちらこちらから半妖さん達が現れた。鬼面さんは私を抱えて走り出す。


「黒布っ! てめぇを殺すっ!」


遠くから怒鳴り声が聞こえてきた。もしかして私を狙っていたのではなく、黒布さんに対する恨みなんじゃないかな。


「エレガント筋肉紳士……」


飛び交う怒号を聞きながら、私はポツリと呟く。初めて普通の優しい半妖さんに会えた気がする。先程までの殺されかけた恐怖だとかを、全て黒布さんに持っていかれてしまった。

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