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蒼太の箱根駅伝  作者: 先出しバウアー
19/32

第十八話 誤算

クリスマス当日。


箱根駅伝に挑む城西拓翼大学駅伝部に

もっとも恐れていたアクシデントが訪れた。


今冬になって流行り始めた風邪による

集団感染である。


症状は高熱と激しい腹痛。

すぐに大学の附属病院で全員が検査を受けた。


エントリーメンバー十四名のうち、

10名が脱水症状を引き起こしており、

出場自体も危ぶまれたが、


医師による懸命の処置で、

何とかそれはギリギリで

回避できた。


ただ、全員が無事だったわけではない。


四年生・副キャプテンの山之内、

三年生の補欠メンバー、

そして、二年生の矢車拓也の

三名の症状は重く、

正月が明けるまで入院せざるをえなくなった。


人一倍責任感の強い山之内は、

隔離された病院の個室で高熱にうなされながら、

「すみません、すみません…。」と一人謝り続けていた。



第十八話 誤算



山之内の戦線離脱は、部内に衝撃を与えた。


予選会で集団走のペースメーカーの

役割を果たした山之内は、言うまでなく、

予選会突破における影の立役者である。


彼は、駅伝部の推薦組ではない。


蒼太も所属する教育学部を

一般入試で入学した、いわゆる叩き上げ組である。


それでも、チームの主力として台頭し、

レギュラーを勝ち取ったことや、

勉強が苦手な部員に

それをわかりやすく教えてくれることから、

他の部員は、尊敬の念を込めて

彼のことを「山先生」と呼んでいる。


また、先生と呼ばれるだけあって、

山之内は、他の部員の模範でもあった。

特に、日常生活は誰よりも

気をつけていたはずだった。


よりにもよってなんで「山先生」が…。


部員全員が言葉を失う。


沖縄県出身で、人一倍感受性の高い一年生の荻久保圭佑は、

堪えきれずに泣いている。


軽症で済んだ補欠の一年生・石川涼介も、

八区を走る予定だった山之内の穴を埋めようと

頑張るが、本調子とは程遠い状態である。


(もはや、十四番手の蒼太と心中するつもりで

八区を託すしかないのか。)


駅伝部全員が悲観的になっていた。


テレビから流れるクリスマスソングの

優しいメロディーですら、


悲しい曲に聞こえてしょうがなかった。



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