プロローグ~彼女がキメラになったわけ~
拙い文章ですが、優しい目で見てください。
ねえ、皆は自分が優れているって思うことはある?
成績優秀、文武両道、才色兼備、そんな言葉が全て当てはまるようなやつっていると思う?
私もさ、そんな奴いるわけないって思ってた。
でも、残念。いるんだなそんな奴。
「刃~!おーい!」
それが隣のクラスのイケメンくん、神咲 勇輝。
学校の女子のほとんどがこいつに惚れている。教員も含めて………。
惚れてないのは、彼氏大好き!な子、男は顔じゃない!っていう子、ちょっと特殊な性癖を持っている子。
私は、男は顔じゃない!っていう派閥かな?
「げ、はあ。早く出たのに見つかるなんて…。最悪だ!」
私の隣を歩いていたのは、幼馴染の紅 刃。
顔は結構イケメンなのに、いつも隣にあいつがいるからフツメンって思ってる。
あいつは刃のことを親友だと思っているようだけど、刃はあいつが嫌いみたい。
私も大っ嫌い!自分勝手で、鈍感で、刃が取り巻きの女子に何されているのかさえ知らないくせに。
いや、知ろうともしないくせに……。ほんっと、鳥肌が立つくらいに嫌い!
「凛華、先に行きな。ごめんな、久しぶりに二人での登校だったのに…。」
「ううん、別に気にしてないよ。それに悪いのはあいつでしょ?」
そして、私こと手鞠 凛華。
自分で言うのもなんだけど、成績優秀で、運動もできる、顔も綺麗だと思う。
「刃~!おはよう!て、手鞠さんもお、おはよう!」
「………(会いたくなかったけど)はよ。」
「おはようございます。神咲さん。」
「苗字じゃなくてさ、ゆ、勇輝って呼んでよ!」
現在、このクソ野郎に惚れられています。
嬉しいかって?嬉しいわきゃねーだろクソが!!!
おっと、口が悪くなっちった☆彡
…………キモイ?自分が一番分かってるっつの!
「おい、凛華。今日、なんか用事があったんじゃねーの?(こいつを抑えとくから、先に行け。)」
「あ、そうでした。すみません。お先に失礼します。(ありがとう。ごめんね。じゃあ、また学校で。)」
「あ、そうなんだ。じゃあ、またね。」
またなんて、会いたくねーよ。一生会いたくない。
これがいつも通りの日常。この日常が壊れるなんて思いもしなかった。
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
「んー、やっと帰れる!」
六限目が終わって、部活に入っていない私はソッコーで帰ろうと思っていた。
「おーい、手鞠ぃ。お前、この仕事してくんねぇか?」
うげ、先生ってばほんとやめてほしい。
タイミングが悪いんだから!!!
「分かりました。」
「頼んだぞ。俺は会議があるから、じゃあな。」
はあ。仕方ない、やるかぁ。
パチン、トントン、パチン、トントン、パチン、トントン、パチン、トントン
パチン、トントン、パチン、トントン、パチン、トントン、パチン、トントン、パチン、トントン
「えーっと、いちにーさんしーごー………………………………………………………さんじゅーろくっと、うし。全部出来た。」
さっさとかーえろ!
………あ、今なら刃に追いついて、一緒に帰れるかも。
そうと決まればダーッシュ!
急げ、急げ、急げ、急げ~!ふふふ、後ろからドーンってしたら刃、驚くかな。
あの影は………やっぱり!刃だ!
って、あれ?何だか様子、おかしくない?
「………なせ!………………………やが………俺は………。」
「………………んなこと………………………どいよ!…………友で………こう!」
刃たちが光ってる?……ううん、違う。下に光っているものがあるんだ!
じゃあ、下にあるのって何だろう?…って、うそ!?
あれって魔法陣!?アニメとか漫画とかによく出てくるやつにそっくりだし!
と、いうことは勇者召喚?
刃は巻き込まれってやつになるの?
そんなのヤだ!こうしちゃいられない!刃を助けなきゃ。
「刃ぁぁぁぁぁ!!!」
「っ!!!凛華?!何でここにいるんだよ!帰ったんじゃ!」
「助けに来たよ!先生につかまって仕事をやってたの!ほら、早く!私の手につかまって!これでも私、力持ちなんだから!」
あいつは顔まで、刃は胸までつかってる。
早くしなきゃ。刃が行っちゃう!
「バッカ!お前!早く逃げろ!お前まで巻き込んでたまるかよ!」
「嫌だ!刃がいなくなっちゃうなんて………そんなの……そんなの…!嫌だもん!」
早く、つかまってよ!もう、時間が…。
「チッッ!しゃあねぇ、俺だってこいつとなんかごめんだしな。」
パシッ ガシッ
よし!つかんでくれた!これで…!
「いっくよぉ!そーれ!」
ズズズッっと、引っ張り上げる。もう少し!
ーふん、小娘。勇者の力の生贄は、お前にしてやろう!光栄に思うがいい!ー
え?何、今の声。生贄って、私?小娘って言ってたし……。
さっきの声、刃にも聞こえたみたい。キョロキョロしてる。
「刃ぁ、今の声って……。」
「っ!凛華!後ろぉ!危ない!!!!!」
え?う、うそ。トラック………!?さっきまでいなかったのに!
こんなに近いんじゃ、逃げられない!
「は、はは。やっばー、万事休すかな。」
キキーッ ガシャーン!
そのまま、私はひかれた。
「う、あ…。」
刃を助けなくちゃいけないのに…。
身体が痛くて、動かない。動けない。
「………凛華!………んか!しっかり………!」
刃………ごめんね。助けられなくて……。
「や、い…ば……………ゴメッ……ごふっ!」
「もう、しゃ…………!…………い!…………か!」
どんどん声が遠く………。
「………………………!…………………!」
そこで私の意識が途切れた。
何もない空間。
『可哀想な魂……。でも、綺麗な魂…。私は………悪だけど…。貴女に祝福と………寵愛を…………。』
それは、暗い、暗い、闇一色の世界。
唯一の色あるものが生贄にされた綺麗な魂に祝福と寵愛を与えた。
ああ、そうだ。
唯一の色あるものについて、少し昔話をしようか。
唯一の色あるものは、『神』と呼ばれるものだった。
しかし、力がありすぎて妬んだ他の神に堕とされた。
そうして、『悪神』と呼ばれるようになった神は、自らを悪だと認めた。
闇を生み出す『悪神』も光がより一層輝く為に必要だと考えて…。
自らを悪とすることで、光の神が正義となるように………。
『丁度、……創りかけのキメラが……………余ってる……。そこに…………入れれば……いいか…………………。』
神は世界を覗き、目的のものが見つかったところで魂をオトした。
『じゃあ、……また…ね。ふふふ………私の……愛し子……。』
そう言って神は姿を消した。
また闇を、悪を、創り出す為に………。
心の優しい悪神。それは、誰も、だあれも、知らないこと。
皆、悪神は悪いものだと決めつける。
堕ちてなお、光の神のことを思いやる優しい神。
そんな存在だと知る者はいない。誰も知らない。
そう、悪神の愛し子さえ今はまだ、知らないこと。
パァァァァァァァ
「うわっ!」
「凛華!!!!」
「や、やったぁぁぁぁ!!!成功したぞ!」
「勇者様が降臨なされた!!!」
「勇者様が二人も!これで魔王軍に勝てるぞ!」
王国ルナソレットで、勇者召喚が成功した。
が、うち一人の心が復讐の炎に燃えていることを知る者など、この中にはいなかった。
「(凛華、お前の敵は俺が討つ!腹くくって待っていやがれ!神!)」
復讐に燃える少年と、キメラに生まれ変わった少女が出会うのは、少し先のお話。
これは、後に『戦神の愛し子』と呼ばれる少年と『美しき悪神の化身』と伝えられる少女の話。
どうでしたか?(ビクビク)楽しんでいただけたなら、良かったです。