欲望の五片 「海をならせば、底も見える」
「四葉乃さん、今回は協力してくれてありがとう」
「先日助けていただいたお礼なので、気にしないでください」
私はこの前、病院まで付き添ってくださった藤野華音先輩に連れられ、
公民館の一室の飾りつけを手伝っていた。
ちなみに、今日の集合時間に名前をようやく聞くことができました。
ちょっと遅かったかもしれないけど…
「この部屋では何をするんですか?」
「あれ、知らない?毎年、何度か、この公民館で子供会が開かれているのだけど。」
「…そうなんですか。私、ここに住み始めたのは高校に入ってからなので、知りませんでした。」
おじいちゃんに会いに来るときに何度もこの町に訪れていたけど、
あんまり地元のお祭りとか…知れてないのかも。
「そうなんだ。なら…今日の子供会、参加してみる?」
「いいん…ですか?私、海ならし部に入ってるわけではないですけど」
「ボランティア活動は人手が必要なことが多いし、今日は私と四葉乃さんだけだから、参加ついでに手伝ってくれると…助かるかな」
海ならし部は、私が通っていた中学でいう地域活性化部みたいな部活らしく、地域のボランティアを主軸に活動をしているそうだ。
「…ぜひ、参加します。」
「ありがとう。…今日はよろしくね。」
私たちは、それからしばらく飾りつけを黙々と続けていった。作業が終わったのは、日傘の作る影が真ん丸になるくらい太陽が昇った後だった。
「暑い、ですね」
「…そうですね」
これで、まだ…梅雨にも入ってないなんて、地球がいつの間にか別の星にすり替えられていたという説すら信じざるを得なくなる可能性すら生じてきた。いや、すでにすり替えられてしまっているのか?
「四葉乃さん。もしよかったらなんだけど、海ならし部…入部しない?」
「いいんですか…入部しても」
私、藤野先輩の家に穴をあけてしまったし、協力したいってこの前いったからな…
先輩の助けになるなら……
いや、それだけじゃなくて…
「さっきもいったけど、人手はいつでも増えてくれると嬉しい。海ならし部は、いつでも来て大丈夫だし、気が向いた時にでも顔を出してくれたらいいから」
「…入部します。私、もっとこの町のことも知りたいので」
おじいちゃんがなぜクローバーをずっとやっていたのか、わかるためにはこの町を知った方がいい気がする。なぜかはわからないけど…なんか、不思議な縁を感じる。海をならした先に何があるのか、ちょっと気になった私はまた新しい選択をすることにした。




