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私が勇者だったって絶対バレちゃいけないんですけど  作者: zingibercolor
2章

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33/33

こういう時は殺意を込めてぶっ刺す!

 クラレンドを先生にして、皆で礼儀作法の研修を受け、オーダーメイドのドレスに身を包み、いざ王宮の晩餐会へ。私は現在ヅラなので髪をまとめられないのだが、何とか工夫してハーフアップにし、いつものかんざしをつけた。ヅラの髪をまとめるのには役立たないけど、いつもつけてるから、ないと落ち着かなくてね。

 国王夫妻は、意外と優しく私たちを歓待してくれた。


「よく来てくれた。出自など気にしなくてよい、ゆっくり話そう」


 王妃が言った。


「食事をいただきながら話したいことがあります」


 これ、なんか重い話じゃないか? せっかく豪華な料理が運ばれてきたのに、あんまり味わえなさそう……。

 クラレンドは察したらしくて背筋を正したが、サーボはピンときていなさそうだ。フィーユとティースタも、半分くらいしか察してなさそう。やっぱり王の直轄領が呪われてるのかな?

 あんまり味わえないまま晩餐会は続いた。きれいな紋章が縁取られた皿に、豪華な料理が少量ずつ、しかし何皿も運ばれてくる。王国式のフルコースと言って差し支えないが、フォークやナイフは銀製ではなくてアルミ製だ。銀食器を使う風習はあまりない。

 晩餐会も半ばになって、国王が人払いをして言った。


「招いた理由を話そう。実は困った場所が呪われている」


 クラレンドが再び背筋を正した。


「伺いましょう」

「王宮は何重にも守っていたのだが……こここそが呪われている。このことが露見しないうちに、早急に解呪を頼みたい」


 うわー! 直轄領どころじゃなかった! 王宮って人も術式も総動員して守ってるのに!ここなら神聖不可侵、それが王宮の威厳を保ってるのに!

 クラレンドたちはさっと顔色を変えた。こういう場に慣れていないサーボが慌てる。


「そ、そんな、王宮に!?」


 クラレンドがサーボを睨んだ。


「サーボ、国王様の話を疑ってはならない」

「は、はい……」

「国王様、王宮のどこが呪われているかご存知ですか?」

「玉座のある部屋、その真後ろの土地が呪われている」


 うっわ、背中取られてる。その気になればいつでも国王本人に害及ぼせるんじゃ。

 その時、締め切っているのに強い風が吹いた。

 何事かと顔を上げると、紫の瘴気が立ち込めている。瘴気は、呪いに関わる魔力だ。

 瘴気は濃く凝り、そして中心に男の顔が現れた。ぎょろりとした目、太い眉、それはまさにムルーターの顔。


[予想通り来たな、お前たち!今度こそ息の根を止めてやる!!]


 うわ、おびき出されたのは私たち!? 一番この国の威厳を壊せるところで、私たちを殺そうとしている!?


[まず貴様だ!]


 ムルーターはクラレンドに迫った。私はクラレンドの隣にいたので、身体が反射的にクラレンドを庇った。


[……!?]


 すると、ムルーターはぎょっとして少し身を引いた。何!? 私の正体バレた!?


[余計なことをするな、女!!]


 あ、バレてない。

 しかし、ムルーターがまた迫ってくるまでに一瞬間が空いた。何か私たちに近寄りにくい理由がある? 何それ?

 ふと思い出した。銀は魔よけの効果があると言われていること。私のかんざしはまさに銀で出来ていること。

 クラレンドが私を押しやろうとした。


「千春氏、あなたのほうが大事だ! ティースタと逃げて攻撃手段を確保して……」

[小癪な!]


 ムルーターがまた迫ってきた。ええい、イチかバチか!

 私はとっさにかんざしを抜いて、思いっきりムルーターの目にぶっ刺した。


[ぎゃああああ!!]


 のけぞるムルーターの頭を掴み、さらに刺してかんざしをぐりぐり回す。死人に脳破壊がどれだけ効果があるか知らんが、やれるだけのことはやるぞ!

 ムルーターは悲鳴とともに瘴気を残して消えた。いや、今のだけで消えるとは思えないな、退散しただけか。

 国王夫妻は腰を抜かしている。私は立ち上がって言った。


「今のムルーターは一時退却しただけだと思います。戻ってくる前に呪いを解かないと」


 国王はやや震えながらも「そうだな」とうなずいた。サーボ以下皆はとっさのことで皆動けなかったようだ。ていうか、強風が吹き荒れたので、皆料理とともに吹き飛ばされていた。

 クラレンドが驚いた顔で言った。


「今のは!? そのかんざしに何か術式があるのか!?」

「ないと思いますが……私に一瞬怯んだみたいだったので、そう言えば銀って魔除けの効果があったって思い出して。このかんざし、銀製なんですよね」

「な、なるほど……」


 サーボが落ち込んだ。


「俺が守るべきだった、千春さんごめん」

「別に大丈夫ですよ」


 人が呼ばれ、すぐに部屋は原状復帰されたが、その場にいたものには速やかに口止めされた。ムルーターが戻ってこないうちに、王宮の呪い解かなきゃな。

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