こういう時は殺意を込めてぶっ刺す!
クラレンドを先生にして、皆で礼儀作法の研修を受け、オーダーメイドのドレスに身を包み、いざ王宮の晩餐会へ。私は現在ヅラなので髪をまとめられないのだが、何とか工夫してハーフアップにし、いつものかんざしをつけた。ヅラの髪をまとめるのには役立たないけど、いつもつけてるから、ないと落ち着かなくてね。
国王夫妻は、意外と優しく私たちを歓待してくれた。
「よく来てくれた。出自など気にしなくてよい、ゆっくり話そう」
王妃が言った。
「食事をいただきながら話したいことがあります」
これ、なんか重い話じゃないか? せっかく豪華な料理が運ばれてきたのに、あんまり味わえなさそう……。
クラレンドは察したらしくて背筋を正したが、サーボはピンときていなさそうだ。フィーユとティースタも、半分くらいしか察してなさそう。やっぱり王の直轄領が呪われてるのかな?
あんまり味わえないまま晩餐会は続いた。きれいな紋章が縁取られた皿に、豪華な料理が少量ずつ、しかし何皿も運ばれてくる。王国式のフルコースと言って差し支えないが、フォークやナイフは銀製ではなくてアルミ製だ。銀食器を使う風習はあまりない。
晩餐会も半ばになって、国王が人払いをして言った。
「招いた理由を話そう。実は困った場所が呪われている」
クラレンドが再び背筋を正した。
「伺いましょう」
「王宮は何重にも守っていたのだが……こここそが呪われている。このことが露見しないうちに、早急に解呪を頼みたい」
うわー! 直轄領どころじゃなかった! 王宮って人も術式も総動員して守ってるのに!ここなら神聖不可侵、それが王宮の威厳を保ってるのに!
クラレンドたちはさっと顔色を変えた。こういう場に慣れていないサーボが慌てる。
「そ、そんな、王宮に!?」
クラレンドがサーボを睨んだ。
「サーボ、国王様の話を疑ってはならない」
「は、はい……」
「国王様、王宮のどこが呪われているかご存知ですか?」
「玉座のある部屋、その真後ろの土地が呪われている」
うっわ、背中取られてる。その気になればいつでも国王本人に害及ぼせるんじゃ。
その時、締め切っているのに強い風が吹いた。
何事かと顔を上げると、紫の瘴気が立ち込めている。瘴気は、呪いに関わる魔力だ。
瘴気は濃く凝り、そして中心に男の顔が現れた。ぎょろりとした目、太い眉、それはまさにムルーターの顔。
[予想通り来たな、お前たち!今度こそ息の根を止めてやる!!]
うわ、おびき出されたのは私たち!? 一番この国の威厳を壊せるところで、私たちを殺そうとしている!?
[まず貴様だ!]
ムルーターはクラレンドに迫った。私はクラレンドの隣にいたので、身体が反射的にクラレンドを庇った。
[……!?]
すると、ムルーターはぎょっとして少し身を引いた。何!? 私の正体バレた!?
[余計なことをするな、女!!]
あ、バレてない。
しかし、ムルーターがまた迫ってくるまでに一瞬間が空いた。何か私たちに近寄りにくい理由がある? 何それ?
ふと思い出した。銀は魔よけの効果があると言われていること。私のかんざしはまさに銀で出来ていること。
クラレンドが私を押しやろうとした。
「千春氏、あなたのほうが大事だ! ティースタと逃げて攻撃手段を確保して……」
[小癪な!]
ムルーターがまた迫ってきた。ええい、イチかバチか!
私はとっさにかんざしを抜いて、思いっきりムルーターの目にぶっ刺した。
[ぎゃああああ!!]
のけぞるムルーターの頭を掴み、さらに刺してかんざしをぐりぐり回す。死人に脳破壊がどれだけ効果があるか知らんが、やれるだけのことはやるぞ!
ムルーターは悲鳴とともに瘴気を残して消えた。いや、今のだけで消えるとは思えないな、退散しただけか。
国王夫妻は腰を抜かしている。私は立ち上がって言った。
「今のムルーターは一時退却しただけだと思います。戻ってくる前に呪いを解かないと」
国王はやや震えながらも「そうだな」とうなずいた。サーボ以下皆はとっさのことで皆動けなかったようだ。ていうか、強風が吹き荒れたので、皆料理とともに吹き飛ばされていた。
クラレンドが驚いた顔で言った。
「今のは!? そのかんざしに何か術式があるのか!?」
「ないと思いますが……私に一瞬怯んだみたいだったので、そう言えば銀って魔除けの効果があったって思い出して。このかんざし、銀製なんですよね」
「な、なるほど……」
サーボが落ち込んだ。
「俺が守るべきだった、千春さんごめん」
「別に大丈夫ですよ」
人が呼ばれ、すぐに部屋は原状復帰されたが、その場にいたものには速やかに口止めされた。ムルーターが戻ってこないうちに、王宮の呪い解かなきゃな。




