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芯界  作者: カレーアイス
第四章 芯界強奪事件
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芯界生物

 全然描写がありませんでしたが、この世界、普通のファンタジーらしくスライムがいたり、ドラゴンが飛んでたりします。

 その理由は下で語られます。

 次の日の授業。

 いつもの席、左からラミリ、俺、シュヴァリィの順で座り、授業が始まるのを待つ。


「っべ、資料忘れてきTA()。ラギナ見せTE()

「またかよ。まあいいけど」


 資料の紙を二人の間に移動させ、ラミリに身体を近づける。

 彼女も身を寄せ、髪からさわやかないい匂いが――煙の匂いに変わった。

 振り向くと、シュヴァリィが何かの紙を燃やしていた。


「私も忘れてきたみたい。見せて頂戴」

「いや、二人は無理――というか、その灰何?」

「なんのこと?」


 芯界から首だけを出したドラゴンが、灰を食いつくした。

 某横スクロールゲームの、パック〇フラワーを想起させる、見事な食いっぷりだった。

 戦慄する俺に、シュヴァリィは迫る。


「見せて」

「だから無理だって。席移動して、ジュアール辺りに見せてもらえよ」

(あるじ)の命に逆らうの?」

「……もういいよ。俺のあげるから、二人で見とけ。俺はジュアールの方行くから」


 たまには違う席もいいかなと思いながら、荷物を持って移動しようとしたが、シュヴァリィに服の裾を引っ張られた。


「……何?」

「離れると護衛できないでしょう」

「ラミリがいるから大丈夫だって。もう始まるぞ」


 言っている間に、ヒルトレイヴ先生が壇上に上がった。

 マイクを手に取り、こちらを指さす。


『そこ、もう始まりますよ。座ってください』

「はーい」


 目を白くして、移動せずに席に座った。

 机上にあるのは、三人に対してたった一冊の資料。


「どうすんだよこれ」

「大丈夫。私、目が良いから。ドラゴン・アイだから」

「あー、空飛ぶ動物は、目が良いこと多いよね。じゃねえんだよ!」

「オレっちあんま良くないZE(ゼィ)

「それはサングラスを掛けてるからだろ!」

『そこ、静かに』


ヒュン!


 俊速で飛来するペンを、今度はキャッチした。


「フッ、何度も同じ手を食う俺じゃ――」


 キャッチしたペンの影から、二つめのペンが飛び出し、俺の鼻に当たった。


「グエ!」

『同じ手を使う人は、先生ではありません』

「何言ってんだ」


 意味不明なことを言う先生に、ペンを投げ返し、ついでにアメを付けてあげた。

 彼女はそれを上手にキャッチし、興味深げにアメを観察する。

 無表情な彼女が、どのように食事をしているのか、注目していると――彼女は、ひょっとこの面にアメを食わせた。


「えぇ……」

『始めますよ。今日は私が資料を忘れたので、ちょっと違う話をします』

「やったZE(ゼィ)!」


 バックに資料を仕舞い、ホワイトボードに何かを書き始めるヒルトレイヴ先生に注目する。

 書かれたのは――『芯界生物』。


『今日は、芯界生物についての話をします』


 ……今回の事件にも、繋がってきそうな話だ。

 集中して、聞く準備をする。


『まず、芯界の物は取り出すことができます。当然、生き物も取り出すこともできる。ラギナ君、前に出てきなさい』

「はーい」


 言われた通り前に出て、教壇の隣に立った。


『君、ドラゴン出せましたよね。出しなさい』

「へい」


 丁度芯界がシュヴァリィの火山になっていたので、軽くドラゴンを一匹取り出した。


「ヴヴ」

『はい、まあこんな感じですね。じゃあ、あと十匹くらい出して下さい』

「えぇ……」


 文句を言いながらも、2,3と出していき……自分の中の何かが、削れて行く。

 十匹出す頃には、ヘロヘロになっていた。


「ヴヴ」

「ハァ、十匹目です」

『こんな感じで、芯界から何かを取り出すと、人間の中の何か――存在基底と呼ばれている物が、消費されます。要は、何かのエネルギーを使って、物を具現化しているということです。もう戻していいですよ』

「扱い雑ぅ」


 十匹のドラゴンを芯界の中に戻していく。

 削れていた存在基底は戻り、体力が回復した。


『このように、エネルギーごと戻すこともできます。が、出しっぱなしにしていると、どうなるのか。誰か分かる人!』

「はい」

「では、シュヴァリィさん」


 パッと手を上げたシュヴァリィが、立ち上がって解説する。


「生物を出しっぱなしにしていると、主人との繋がりが次第に希薄になります。自我が強くなり、独立した生物に。個人差もありますが、一ヶ月ほどで完全に繋がりは消え、完全に野生の生物になります」

『完璧な解説をありがとうございます』


 お面を上機嫌な七福神にした先生が、黒板に、ドラゴンの絵を書いた。


『現在は、ドラゴンは普通に生息しています。が、こんな生物はありえません。体重に対して翼力が全く釣り合っていないし、解剖してもブレスを吹く器官が見当たりません。張りぼてのような生態です』

「ええ!?」


 教室の一部から、驚愕の声が上がった。

 俺からすれば普通のことだが、この世界の人にとっては、驚きのことだったらしい。


『何故こんな生物がいるのか。それは、昔にドラゴンを大量を逃がした、バカがいたからです。元は物語に登場する、架空の生き物だったのですよ』

「そんな……」

『生態系が根付くまで行くのは、結構難しいですけどね。けど、世界には架空出身の生物が結構いますよ。じゃあ、ラドゥアンヌさん、適当な生物を答えて下さい』

「じゃあ~、キメラ!」

『あんなの架空出身に決まってるでしょ。次、パロックさん』

「……犬、とか」

『それは現存生物ですね。ユエリさん』

「スライム!」

『架空です』


 生徒が次々と生物の名前を言っていくが、その半分は芯界生物だった。

 こんなので、よく生態系が崩れなかったな。

 壊れ過ぎて逆に整ったパターンか?


「でも、それと軍学に何の関係が? これ軍学の授業ですよ?」

『時々、変異個体が出ることがあるんですよ。二百年前のバハムート襲撃事件は知ってますか?』

「はい、王都が半壊したという――」

『アレは、色々なドラゴンが掛け合わさって出来た、一種のバグだと考えられています。ああいった、凶悪生物に対処するのも、軍の役目ですよ』


 そう言うと、ヒルトレイヴ先生は時間割をジッと見つめた。


『せっかくですし、次回は危険生物の群生地、炎上森に行きましょうか』

「……あそこかぁ」

『服装は燃えてもいい服、持ち物は覚悟と遺書です』


 遺書が必要な授業って、初めて聞いた。

 絶対にロクな事にならないのだけは分かる。


 ……次か、その次か、その次の話で派手に戦闘するから!

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