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芯界  作者: カレーアイス
第三章 鉄の意思と魂の魔王
22/72

オシャレと宝石 あとホラー

 シュヴァリィの強情な意見によって、家が同じなのに、目的地集合になった。

 黒の下地に、カラフルに光る模様がある、それなりにオシャレな服を着て、商店街の時計の下で二人を待つ。

 先に来たのは、シュヴァリィの方だった。


 イメージカラーの濃いめの赤を、さらに濃くした深紅のワンピース。

 金色のネックレスと腕輪から、傲慢に着飾った印象を受けるが、本人の雰囲気も相まって、綺麗にまとまっているように見える。


「金好きなの?」

「ドラゴンだからね。それより、先に言うことはなあい?」

「……美しいですよ、お姫様」

「よろしい」


 流石のシュヴァリィでも、少し恥ずかしかったらしく、目線を下に落として逸らした。


「そういうアナタは――まあまあね」

「え、良くない?」

「……今日は服から買いに行きましょうか」

「おーい」


 話している内に、イースが手を振りながら、集合場所にやって来た。

 ケープの余裕がある薄めの黄色のアウターに、青のスタンダードジーンズという、地味ながらもまとまった服装。

 いつものチョーカーに、リボンが付いているところに、彼女なりのオシャレを感じた。


「ボクが最後か。ごめんね、待った?」

「いや、丁度今来た所」

「そっか。ならよかった」


 俺とイースが話している間、シュヴァリィはジロジロとイースの服を見ていた。


「シュヴァリィ?」

「……悪くないけど、地味ね」

「そう?」

「やっぱり、服屋から行こうかしら」


 そう言うと、シュヴァリィは俺達の意見を一切聞かず、ズンズンと商店街の中へ、進んで行ってしまった。

 慌てて俺とイースは彼女の後を追う。

 服屋が固まっているスペースに入り、中でも派手な店にシュヴァリィは入っていった。

 そのまま、ノンストップで服を漁る。


「とりあえず、ラギナ君はコレとコレ、イース君はこの三着を試着しなさい」

「う、うん。分かったよ」

「俺スカートNGなんだけど」


 俺達に服を渡した後も、いい服を探し続けていた、シュヴァリィの動きがピタリと止まった。


「……アナタ、これから社交界でドレスを着ることもあるのよ? それがスカートNG?」

「タキシードとかでどうにかならない?」

「そんなのを着てる人は、一人もいないわ」

「じゃあ俺が先駆者になる!」

「……まあ、考えておいてあげるわ。じゃあ、とりあえず今日はこれを着てみなさい」


 スカートの代わりに、ワイドパンツを渡された。

 少しずつスカートらしき物に、慣らしていく目論見が丸見えなのだが、渋々受け取って試着室に入る。


「……色合い的に、ギリ男物に見えなくもないな」


 あいつ、俺が着れるギリギリのラインを探っているのでは?

 邪推しながらも、着ている服を脱ぎ、渡された服を着ていく。

 ベージュのワイドパンツに、ギンガム柄のシャツ。


「ちょっと可愛いけど、似合うんだよなぁ」


 シュヴァリィのヤツ、服のセンスもいいのか。

 ……アイツ、何か弱点あったっけ。今度、探してみよう。

 考えながら、試着室のカーテンを開けた。


「どう?」

「やっぱり、合うわね」

「可愛いよ、ラギナ」

「可愛いはやめて! 嬉しいけど、尊厳を破壊されてる気がする!」


 イースも着替えており、地味な組み合わせから一変して、光り輝く灰色のカソック(ロングワンピース)を着ていた。


「イースのは……合ってるとは思うけど、派手過ぎない?」

「大丈夫よ、後から髪留めとイヤリングも、買うつもりだから」

「質素な感じで行こうぜ。イースにはそっちの方が合ってるよ」

「一つくらい、派手な服を持ってた方が、何かと便利よ」

「そうかな?」

「大丈夫、お金は私が全部出すわ」

「……お前、民衆から税を搾り取る、邪知暴虐の王になったりしないよね?」


 ここまで不穏な言動しかしていなかったので、一応聞いてみたのだが、彼女は明確に不快感を露わにした。


「そんなアホなこと、絶対しないわ。このお金は、私が地下闘技場で稼いだ分だから、大丈夫よ」

「そうか、なら安心――待って、地下闘技場って何!?」

「二人とも、顔の辺りの装飾が足りないし、先に宝石の髪留めから買いに行きましょうか」

「そ、そこまで買ってもらうのは悪いよ」



 こうして、俺とイースはシュヴァリィに引っ張られて、商店街を回り――完成したのが、こちら。


 俺は、最終的に光る黒のジャケットスーツに、右手の全ての指に指輪と、成金のホストのような恰好になっていた。

 前髪を整えるルビーの髪留めに、イヤリングと、小物にも余念なく、正直言って落ち着かない。


 そして、イースは先ほどの輝く灰色のカソックに、左に二、右に一の、三つの髪留め。

 そして、胸の前にはルビーのネックレスが光っていた。

 彼女も、落ち着かないのかソワソワとしている。


「なあ、やっぱり、これは何か違わないか?」

「あってるわ」

「でも、凄く視線を集めてる気がするよ?」

「……あってるわ」

「いや、こっちを向いて言ってくれよ」


 全ての指に指輪がついた手を、シュヴァリィの肩に置き、振り返らせてみると……彼女は、涙目になっていた。


「おかしいわ。あってるハズよ」

「……」


 いつの間にか、彼女の肩は震えていた。

 気丈に、いつも通りに振る舞っていたが――シュヴァリィはシュヴァリィで、不安だったのだ。

 

「ごめんな、さいね。今まで、貴族の子としか付き合ったことが無かったから、よく、分からなかったの」

「……俺も一応貴族なんだけどね」


 だから、今回前に出るのは、俺では無い。


「大丈夫だよ」


 イースが俺の前に出て、シュヴァリィと向き合った。


「ちょっとおかしかったけど、それはそれで楽しかったから」

「イース君……」

「それに、このルビー。みんなお揃いなんでしょ?」


 シュヴァリィは、いつもルビーの指輪をしていて、俺はルビーの髪留め、イースはネックレスと、目立つ部分に赤いルビーが輝いていた。

 あった人にアメを上げる俺のように、シュヴァリィにはルビーをあげる習性があるのかもしれない。

 ネックレスを握り、イースは言った。


「嬉しい。二人と友達になれたみたいで、二人と繋がっているみたいで」

「……ありがとう」


 シュヴァリィは目を擦り、少し赤くして笑った。

 少女二人の美しい空間に、思わず笑みをこぼしながら、入る。


「……アメいる?」

「飛び切り甘いのを」

「ボクも、同じのを食べようかな」

「いいね。じゃあ俺も」


 三人で、アメを咥えて、ひとしきり笑った。

 ――弱点なんて、探す必要なさそうだな。



「じゃあ、この服は持ち帰るとして、元の服に戻っていい?」

「イース君はいいわ。けど、ラギナ君はそのままで」

「はえ、どうして?」

「これから、やってもらうことがあるからよ」


 シュヴァリィに連れられて、訪れた建物は――Dance School。


「は?」

「あなた、社交ダンスなんて知らないでしょう? ここで習って行きなさい」

「いや、まあできないけど」

「ここには、私のダンスの講師がいるわ。彼女に習いなさい」


 色々言いたいことはあるが、とりあえず三人で建物の中に入った。

 中には、整った木の床に、壁の一面に鏡を張った、ダンスホールのような部屋が広がっていた。

 そして、その中央には、ドレスを着た女性が。


「お久しぶりです、シュヴァリィ王女」

「こんにちは先生。今日は、この子を入学させに来たの」

「……電話で聞いた通りですね。お任せ下さい」


 二人だけで話が進み、俺の了承を得ずに、入学させられていた。


「ねえ、俺がダンスできなくても、シュヴァリィがリードしてくれれば良くない?」

「――!」


 二人が、有り得ないものを見る目で、俺を見た。


「え――そんな変なこと言った?」

「……では、一度二人で踊ってみなさい」

「はあ」


 まあ、基礎の基礎のそのまた基礎くらいは、習ったことがある。

 あとは、音楽に乗ればいけるだろ。

 十年ほど前の記憶を思い返しながら、シュヴァリィの手を取り――


「フッ!」

「グアッ!?」


 何故か、背負い投げされた。

 背中を強く打ち付けて、思い切り(むせ)る。


「……何で背負い投げした?」

「ちょっと手が滑って」


 嫌な予感がしてきた。

 もう一度手を取り、また背負い投げされそうになるが、男の筋力で抵抗し――引力。


「フッ!」

「フッじゃねえ! グエッ!」

「ラギナ!」


 首にラリアットを食らい、頭を床に打ち付けそうになったが、ギリギリでイースが受け止めてくれた。


「危ねぇ。ありがとう、イース」

「う、うん」

「……おい、プロレスやってんじゃねえんだぞ、シュヴァリィ」

「これしかできないのよ」

「は?」

「私が説明しましょう」


 先生が前に出て、シュヴァリィの欠陥を説明してくれた。

 彼女曰く、シュヴァリィは音楽に乗るのがドヘタで、ダンスになると、どうしても力んでしまうらしい。

 それと、戦闘訓練が合わさった結果、ダンスがプロレスになってしまったのだと。


「ってことで、アナタには私が力を一切入れない、お人形状態でも、立派にダンスしているように見えるまで、ダンスを習ってもらうわ」

「えぇ……」

「……お願い」


 正直、かなり乗り気では無かったが、シュヴァリィの上目遣いに、気圧され――俺に一つ習い事ができた。

 ……こんな弱点、知りたくなかった。



◎◎◎



 ダンススクールにラギナを置いて、ボクとシュヴァリィは、寮に帰った。

 今日は、楽しかった。

 本当に楽しんだ。……やるべき事を忘れて。


 今日遊んでしまった分、勉強しないと。


「集中、集中」


集中集中集中










集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中喪中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中喪中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中


 この話長かったから、明日は一話にさせて


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