二人は竜使い
「Firester Dragavolc」
一面に火山の世界が広がる。
しかし、前とは少し様子が違う。
焼野原ではなく、火山の麓には草花が生えており、豊かな緑が感じられる。
ドラゴンもどこか生き生きとしており、前より強くなっているように見えた。
「……結構変わったな」
「思想が百八十度変わったからね」
とはいえ、強くなったとは言い切れない。
ドラゴンが復活できなくなってしまい、捨て身の戦法が使いにくくなった。
これは、今までの戦い方が、ほぼ出来なくなるくらいの変化だ。
「ということで、アナタが私の芯界に慣れるのも兼ねて、練習台に――練習相手になってもらうわ」
「今練習台って言わなかった?」
「言ってないわ」
「ハァ……」
溜息をついて、胸に手を当て、芯界の現状を把握する。
今は、普通にアメの世界だ。
そこから、シュヴァリィのことを考え、シュヴァリィにことを思い、どこかに保管されている赤いインクで、アメを火山に塗り替えた。
インクは……あと一回か二回分。
安定を取るなら、二回ごとにキスすることになるのか……。
「まだ?」
「今用意できた所だ。Firester Dragavolc!」
掛け声と同時に火山が広がっていき、鏡映しのような世界が広がった。
火山の至る所から、俺に従うドラゴンが飛び出す。
ただ、俺の方が緑が多かったりと、少し差異はあり、何より二本尾のドラゴンがいない。
「あの、駒に差があるんですけど」
「まず陣形を組みなさい」
「無視かよ」
見よう見まねで、シュヴァリィと同じように陣を組む。
よく観察すると……その陣は、一匹のドラゴンの形になっていた。
(えっと、胴体を作って、頭を作って、自分は普通に騎乗するくらいの背中に置いて)
ドラゴンというよりは、翼付きのワニの方が近い。
「こんなものかな?」
「……じゃあ、一回やってみましょうか」
二人のドラゴンが身構える。
うちのドラゴンが、一匹飛び出したのを皮切りに、戦争が始まり――三秒で終わった。
開始と同時に、シュヴァリィの前衛ドラゴンが突っ込んできたかと思うと、あっという間にこっちのドラゴンを蹴散らし、接近して丸焦げにされた。
この服割と気に入ってたのに……。
「なんかスペックに差がありません?」
「陣形が悪いのよ。一匹一匹のドラゴンをしっかり見なさい」
「はーい」
ドラゴンをよく観察。
すると、ドラゴンの特徴が見えてきた。
腕が大きいヤツ、尾が長いヤツ、牙が鋭いヤツ。
一匹一匹に個性があった。
「……まさか」
「ドラゴンごとに個性があって、前衛向けと後衛向き、噴火工作向きとかがいるのよ。さっきのあなたは、それがグッチャグチャだったから、一瞬で瓦解したの」
「えぇ……」
「三秒で最適な編成を組めるようになりなさい」
「三秒は無理じゃない?」
「大丈夫よ。組みやすい配置で、出て来るようにしてるから」
確かに、境界側から順に、頭、胴体、腕――と並んでいるので、最速で組むようにすれば、自動的に正解になるだろう。
「むしろ、私にはどうしてそんなにチグハグになるのかが、分からないのだけれど」
「なんかテンパって」
「そういう人は癖になるまで組むことね」
「……頑張りまーす」
それから数時間、ただ陣形を組んでは戻すという作業を繰り返した。
もちろん、完成に手こずったり、陣形が間違っていたりすると、容赦なくシュヴァリィが陣を壊滅させる。
気づくと、あと二回分あったシュヴァリィのインクが尽きかけていた。
「あのー、そろそろインクが尽きるんですけど?」
「インク?」
「他人の芯界を使うには、インクが必要なんだよ。……使ってると段々減っていって、キスすると補充されるの」
インクとは、「それっぽいな」と思った俺が適当に付けた名称だが、それなりに正しいと思っている。
俺の中のどこかに、キスした人の色のインクがあり、それを使うことで、芯界を変化させられる。
完全に塗り替える時に、かなりの量を使い、それ以外にも芯界を万全に使い続けるには、インクで綻びを修正し続けなくてはならない。
何の制約も無しに使えるのは、アメの芯界だけだ。
「つまり……キスしたいってことね」
「いや、今日はもう終わりにしないかというこt……ちょまって、何回やっても……最大量は変わんないから!」
「二人とも、ご飯できたよーって、どうしたの!?」
芯界に入って来たイースが、倒れた俺に駆け寄り、声を掛ける。
「だ、大丈夫……じゃなさそうだね」
「シュヴァリィが……シュヴァリィが……」
「何したのシュヴァリィ!?」
「ちょっと、サキュバス並みのキスをかましただけよ」
「何してるの!?」
シュヴァリィは、手で唇を弄り、乱れた口紅を整えた。
「そんなことより、ご飯よ。冷める前に頂きましょう」
「う、うん。今日はハンバーグだよ」
「そう、楽しみね」
火山の世界がバラバラに崩壊していき、元居たリビングの部屋に戻った。
部屋のテーブルでは、ハンバーグが湯気を上げている。
「……ごめんなさいね。最近は夕食を、アナタに任せきりにしてしまって」
「仕方ないよ、大会の準備中なんでしょ?」
「親睦会の意味も込めて、明日、三人でショッピングにでも行きましょうか。何か買ってあげるわ」
「本当? やった!」
こうして、ヌルっと女子二人とのショッピングが決まった。
芯界を絵画に例えて、インクを使って塗り替える。
イメージそんな感じ。




