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アナーキアマガジン 〜無意味な全能証明〜  作者: 黒種恋作
Vol.1『ゲミニに灯るセントエルモ』
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第8話 『いざ、黎明の大海原へ!』

「いやあ~絶景ですなぁ~やっぱり大海原の冒険ってのは、こうでなくちゃね!」

「いや、アホか急すぎるわ! エマヌエルが海からにょきって出てきたらどーすんねん!」


 我々、色んなとこから寄せ集め女性率九割集団はエマヌエル討伐という大きな目標を掲げ、全てを受け入れる大いなる海原エクセア海へと足を踏み入れていた。

 船の甲板には、僕が持ってきたピンクヘアーによく似合うビキニを着たアスリがぎゃあぎゃあと手すりにしがみつきながら叫んでいた。僕はアスリの左隣にいるからよく声が響く。


「正直驚いた。まさかアウトサイダーが水着を持ってきていたなんて」


 隣から髪の色と同じくらい真っ白なレオタード水着を着たルケがひょっこり顔を出した。

「こんなこともあろうかと種類豊富にリュックに入れてたんだよ!」

「ちょうど人数分あったのには驚いたぜ! 一体どこで買ったんだよ?」


 お次に操縦室から青色のボトムを着たネレが声をかけてくる。


「恋人へのプレゼントですって、ごまかして買った! 『ブティックエロディテ』ってとこ!」

「えっ、エロディテって……最低でも一着数十万はくだらないあの超高級ブランドのですか⁉」


 最後は操縦席で船を自由自在に操るフードのついたワンピース水着を着たストラだ。

 ちなみに僕は真っ白な海パンを履き、テトラビブロスの制服の上着だけを羽織っている。


「さすがにミノリカワ乳業のお嬢様だっているわけだし、ショッピングモールのなかにある店の水着を着せるわけにはいかないよ。……あっ、それと今着てる水着は各自持ち帰ってよね? 素敵な出会いを祝して、みんなへのプレゼントってことで―――ハロッピー!」

「いや、それはさすがに……………」

「ね、ねえね。にいにが怖いよ! 金銭感覚バグってるって。あとハロッピーってなんだよ⁉」


 完全に委縮して、己の身体よりも水着の方を守りそうな勢いの時栖姉妹。


「ハローとハッピーでハロッピー。きみに出会えて幸福だよってこと。親友から貰った贈り物の挨拶さ! 他にも使い道があってひとつでふたつ、お得なんだ! いいでしょ~!」

「……かわいい、アウトサイダー」

「………初めて会うたときからずっと思っとったけど、ルケのアウトサイダーに対する謎好感度はなんなん? アンタらまだ出会ってまだ日ぃ浅いんちゃうんか……?」


 いや、アスリさん。それは僕が聞きたいくらいです。

 本当はそう言ってやりたいけど、なんかツッコんじゃいけない空気がいつもルケから醸し出されるのでやめてるんです。

 僕――死にたくないですしおすし。


「それにしても、肝心のエマヌエルちゃんが見当たらないな~。魚群の影もないからここらへんいることは間違いなさそうなんだけど……………うーん」


 目をつむり思案する。どうやらお魚の皆さん、怯えちゃって他の海域とかにお逃げになってるみたいです。まあ、あれだけ大きくて異物感満載の怪物がいたら、住めないよね。

 まさに生態系の破壊者ってやつだ。


「今のところ百害あって一利なしを地でいってるよね。こりゃどうしたもんか」

「――おい、にいに! まえ、まえ、まえ、まえ、まえだ、まえ!」

「どうしたのネレ? まえださんがどうしたって?」

「アホか! ボケとる場合ちゃうって⁉ 物思いにふけるひまあったら、前見ろやまえ!」

「――ん?」


 アスリにそう言われたので、前方に目を向ける。

 そこには透明な顔の巨大なクリオネが逆さまに空を浮かんでいた。


「おお……とりあえずハロッピぃ……」


 とりあえず片耳が隠れるように頭を掻き、気の抜けた声で挨拶しておく。

 はたから見れば間違いなく、滑稽な絵になっていただろう。

 さすがに予想できない唐突な敵役の登場。

 ルケと初めて顔を合わせたときと一緒だ。完全に気圧され――、


『―――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!』


 声ではない超音波といえる爆音が、両耳の鼓膜を揺さぶり、片耳の鼓膜を突き破った。


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