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96.ついにコンテスト開始するも行き先が不安になる説明と運営トラブル

到着からしばらくして、惑星全体に会場アナウンスが入る。

その放送内容は運営からの案内であり、「参加者は第一エリアの宇宙ドームホールへ集合するように」というもの。

それによって大勢の参加者が大型ドームへ集結し、観客席や関係者席は4万席以上あるのに開会式の時点でキャパシティオーバーを引き起こしていた。

更に惑星中にも映像パネルが設置されて中継されていることを思えば、いくら宇宙規模でも異常な注目度と集客力だ。


そんな下手すれば再合流が難しい状況下であるため、楓華は3姉妹やモモと離れないよう、アリーナで注意を払って固まっている。

同時に彼女は現状に驚き、感心した口ぶりで次女ヒバナに問いかけた。


「なんだこりゃ!?人数すっご!お嫁さんコンテストというニッチな名目なのに、やたらと多くない?宇宙規模となれば、これが当たり前ってワケ?」


「某達も初めての経験ですけど、これが平均的では無いと思いますよ。それに今回が初開催のはずです。おそらく銀河レベルで有名な方が大勢いるのか、はたまた宇宙クラスに影響力ある方が混じっているのか……」


「あるいはどっちも、ってやつだね」


「か、かもしれませんね。うぅ~……。人がいっぱいだなぁとは思っていましたが、これほど影響力あるイベントだとは予測できませんでした。緊張しますよ~」


「安心しな。参加者も多いから、それだけ注目が分散されるよ。それより張り合いある状況を喜ばないとな!」


「大きな舞台ほど燃え上がるフウカ氏の闘争心が羨ましいですよ。と思ったら、ミルとモモ氏の方が闘志が凄まじい……」


ヒバナは緊張のあまり周りを見る余裕を失っていたが、それでも察知してしまうくらいに小さな2人のやる気は十分だった。

勇ましい顔つき、怯む気配が感じられない姿勢、勝利のみを見据えていると分かる態度、欲望だだ()れの独り言。

まさしくトップクラスの意気込みが満ち溢れており、現時点で近くの参加者を気迫で圧倒してしまっていた。

そのおかげで周囲の参加者が彼女達5人と距離を空け始めた矢先、ドーム内に設置されている大液晶パネルに若い女性が映し出された。

端麗な顔しか映り込んでいないが、赤色と金色のツートンカラーの髪色が特徴的の女性だ。


「はいはーい!およそ1万人の参加者さん、どうもこんにちは~!これから司会代理の我……私が説明を始めるけど、適当に聞き流しても問題無いよ~!なにせ競技中は平等公平を()すため、こっちで勝手にあらゆるサポートを施しますので!」


どこか無理してキャラ作りしている雰囲気を感じられるが、お祭りの進行役に相応しい振る舞いで女性は語っていた。

しかし楓華はその演じた様子より、どこかで見かけたことある顔に違和感を覚えていた。


「なんだろ。アタイが住む村……かな。見たような、見なかったような?」


イマイチ思い出せない。

何であれ重要な事では無いので、今は大人しく司会の話に耳を傾けた。


「そして今回の第一回お嫁さんコンテスト!ずばり、ポイントを一番多く獲得した人が優勝!この惑星には様々なエリアに試練が用意されているから、それを見事クリアすればポイントを大量ゲットってこと!これは単純明快な形式だね!」


試練に挑戦してポイントを稼ぐ。

分かりやすいが、この場で競い合う訳では無い事態にヒバナとヴィムは眉を潜めた。

なぜなら2人は体力に自信が無いから、探索じみたエリア移動はかなり不利だ。

しかも惑星1つと範囲が広大である以上、このままではお嫁より冒険者の適正が求められる。

だが、その点は考慮されており、司会はすぐに補足を加えた。


「さてさて、ここで肉体的な実力を求められると思った人が多いね。でも大丈夫!目的のために山を越える力も最高のお嫁さんっぽくて良いけど、文明の利器や社会ルールに対応できるのも立派なお嫁さん!」


そこで女性は指をパチンと鳴らし、スクリーン前に制服姿のスタッフ達をホログラム投影してみせた。


「この惑星には優秀なスタッフさん達が配備されているので、素直に助けを求めて下さい!ポイントに影響は出ますが、何も得られないで終わるより100倍マシでしょう!また、移動時にはワープ装置や乗り物の使用を推奨します!」


完全に自力で挑戦する必要は無い事を初めて知り、楓華は相槌を打った。


「へぇ、いいね。誰でもクリアできる準備はされているって事かな」


「で、あとは~……以上です!」


「はぁっ?」


「プレイヤー同士でポイントの取引など許されていますが、節度を守ってポイントを稼いでください!全て、こちらが監視していますので!あとの禁止行為は事前に警告を通知しますから、とにかく試練クリアに専念して下さいね!それではスタート!」


急に司会者の説明が投げやりになってしまい、どよめきが上がる。

そもそも自己紹介も無いままだったので、最初の盛り上げようとする振る舞い以外は全て大雑把で丁寧とは言えない。

だから理知的な種族は怪訝な態度になるのだが、最後に司会者は映像が切れていると思って本音を漏らした。

しかも運営陣同士の会話も筒抜けだ。


「あぁー……不慣れなことをしたぞ。まさか司会担当のダイコクちゃんがデートで遅れて、急遽この我が代理で説明とは……」


「ごっめぇーん☆遅れちゃった~♪って言うか、まだ映像が繋がっているよキンウちゃん~♡」


「はぁ!?いや、ちょっと……これはどのようにして止めるのだ?スタッフ~!優秀なスタッフさん達よ~!」


「ちしぃ~♪キンウちゃんはオモシロいね~!それよりも、さぁ参加者のみんな~☆私たち高位委員会からサプライズがあって、優勝者にはオマケをプレゼントするよ!いざ宇宙最高のお嫁さんを目指して、レッツゴーだよぉ~ん♪」


「オマケ?そんな予定は……いや、あのウサギの思いつきか。チッ」


途中から声が入った女性の顔は映らなかったが、最後の最後に司会代理の不機嫌そうな表情の舌打ちが入って映像は途切れる。

華やかなコンテストであるはずなのに、出鼻を挫かれるスタート合図だ。

だが、肝心なのは優勝すること。

それにユリユリ合衆国の魔王を思えば、運営陣に妙な癖があっても気にする要素ですら無いだろう。

そう思うことで楓華は気合いを入れ直し、グッと拳に力を入れて声をあげた。


「よし、みんな!とにかくポイントをゲットだ!優勝はアタイ達が獲って行くぞ~!」

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