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95.クロスとリールと話して肩車で会場を踊り回る

※キャラ簡易振り返り

・クロス…現在は各所から追われている最強の女性傭兵。価値観がまぁまぁ狂ってる。

・リール…金髪幼女。身体能力を除いた全能力が飛び抜けている。価値観が終わってる。

「よっ、リールちゃんも久しぶり~」


楓華は視線と共に片手を上げて、クロスに肩車されているリールに対して気軽な挨拶を口にする。

するとリールは彼女の挨拶方法に合わせようと、勢いよく両手を上げて小さな体をふらつかせた。


「フウカおっ久しぶり~!リールね、あれから身長が2ミリも伸びたよ~!」


「そっか~育ち盛りなんだね~!ちなみにミルちゃんも、みるみる成長しているよ!」


そう楓華が受け答えした直後、クロスは唐突に込み上げた笑いが抑えきれなかったようで気味が悪い呻き声を漏らす。

それから彼女は続けて咳き込むという情けない反応を晒すので、ミルの緊張感が自然と(やわ)らいだ。


「クロスさんってば、やっぱりお笑いには弱いままなんだ。しかも今のはギャグ目的でも無かったのに」


この言葉にリールが過敏に反応し、教えたがりの気質を存分に発揮しながら得意気に語り出した。


「お笑いはクロスにとって最大の弱点だよ!この前ね、リールと一緒に宇宙お笑い番組を見ているときにクロスが笑い死んだくらい!リールね、びっくりして宇宙創成しちゃった!」


「不死身なのに笑いで死ぬんだ?ミルの道場には取り入れないけど、それも究極の武になるかもね」


「え~?道場にお笑いを取り入れようよ!すっごく楽しいし、リールは修行の成果を見てみたいな~!」


「ミルにはよく分からないし、お笑いを教えられる人も居ないかな」


「みんなでコント鑑賞会すれば良いよ!それにリールね、お笑い芸人に詳しいから色々と教えられるかも!えっと例えば、ネタの解説……とか!」


ずいぶんと話題の方向性がチグハグした会話だ。

しかし、どちらも無邪気に話しているだけなので幼子らしい微笑ましさが生まれている。

その無邪気なやり取りに楓華は笑顔がこぼれ、感慨深そうに呟いた。


「小さい子同士の会話って永遠に聞いていられるよ。聴きながら爆睡したいくらい心地いい」


この発言を聞いたのはクロス1人だけで、彼女は戸惑いながら応えてくれる。


「フウカ様は特殊な感性をお持ちなのですね」


「あっははは、そうだろ?アタイはどんな事にも楽しみを見出すタイプだから。ところで……リールちゃんを肩車までしちゃって、前より距離感が近くなったね」


「これは、しつこく強請(ねだ)られてしまっただけですよ。前にフウカ様がリールを肩車した際、大変気に入ったらしいです」


「わぁお。リールちゃんは宇宙創成より肩車の方が興味津々だったか~」


「ックス。宇宙創成は1人で出来ても、肩車は仲良し2人組でなければ出来ませんからね。ですから新感覚の体験ということも相まって、新鮮で楽しい行為だと認識したのでしょう」


「あっははは、なにそれ。そんな理屈っぽく解析しようとしなくてもいいのに。というかさ、多分リールちゃんはクロスとコミュニケーションを取りたいだけだよ。肩車ならクロスでもやってくれるもんな~」


楓華はお気楽に言いながらリールの方へ手の平を向ける。

それに気が付いたリールはすかさずハイタッチで返し、楽しそうな笑い声をあげた。


「んぇへへへ~!タッチタッチ!クロスもタッチ~!」


まだ今は肩車をしているため、ぎこちないタッチがリールとクロスの間で行われる。

これにクロスは思うところがあり、納得したように目を優しく伏せた。


「ックフ、なるほど。フウカ様はコミュニケーションの達人ですね。私はコミュニケーションには(うと)いものですから、いつも勉強になります」


「またまた仰々(ぎょうぎょう)しいな~」


「相手の長所を高く評価することは至って普通のことですよ。そういえばコンテストについてですが、当然ながら私も出場します。ただしリールは今回、私の旦那様として観客席から応援するそうです」


そのようにクロスが説明すると、リールは格好つけて片腕をビシッと上げた。


「はい!ご紹介に(あずか)りました!今日のリールは頼りがいのある旦那です!リールの新妻をどうかよろしくお願い()たしますぅ!」


相変わらず仲は良いみたいだが、2人の関係性も相変わらず他者からすれば不明瞭だ。

どちらも好意的に想い合っていることは間違い無いが、どこまで信頼しているのか掴みきれない。

それほど複雑な関係のはずでは無いのに、あまりにも独特な距離感で言語化が異様に難しい。

ただ楓華が気にかけたのは彼女らの関係性より、クロスの真意だ。


「しっかし、クロスはアタイに不満とか無いワケ?」


「不満……ですか?何故です?」


「なぜって、クロスが求めていたのは武力による真剣勝負だったはずでしょ。それなのにお嫁さんコンテストとなれば、クロスが望んでいたシチュエーションとは大きく掛け離れているって事がアタイでも想像つくよ」


その言葉にクロスは一瞬きょとん(・・・・)とする。

楓華は勘違いしているが、彼女は過激な行為に抵抗感が薄いだけで生粋の戦闘狂では無い。

更に、クロスにとって一番得意なコミュニケーション方法が戦闘なだけであり、そっち方面の経験が豊富だから無意識に話を手合わせする方向へ進めてしまうだけだ。

つまり戦闘行為に執着するほど強い(こだわ)りを持っているのかと言えば、そういうわけでは無かった。


「たしかに私が安直に思いつく競争手段となれば、武力衝突ですね。そのつもりで大会関係のチラシを渡したのも事実です。しかし大前提として、フウカ様との勝負が一度っきりという訳では無いでしょう」


「あー、それは……そうだな?」


「はい。ですから、フウカ様が忘れず誘ってくれただけでも、私からは文句の付けようがありません。むしろ感謝させて下さい。1人の友として、お誘い頂きありがとうございます」


クロスはリールを肩車しているのにも関わらず、深々とお辞儀する。

そして焦るリールが倒れるかどうかの瀬戸際へ追い込まれた直後、クロスは凛々しい表情で頭を上げた。


「また勝負内容に関わらず、私が全力を尽くすことに変わりありません。そしてフウカ様に利がある状況で私が勝利を収めたとき、かつてない達成感を得られるでしょうね」


「あっははは、そこまで言ってくれるならアタイも本気で挑まないとな!どういう勝負になるか分からないけど、お互い頑張ろうぜ!」


「はい、頑張らせて頂きます」


お互いに競い合う相手だと認識しているが、友好関係が構築されている影響で差し障りない返事になっていた。

そんな快活とした掛け合いがリール的には面白味が欠けていると感じてしまい、思いつきでクロスの頭をバシバシ叩いた。


「ダメだよクロス!ここはライバルっぽく挑発しないと!宇宙ドラマや宇宙アニメでは大抵ズバッと大胆な宣言して、闘志をメラメラ燃やしていたよ!」


「リール、私の気性に合わないことを求めないで下さい。下手に気取るのは得意ではありません」


「じゃあリールに任せて!クロスの代わりに宣言しておく!今回クロスが勝ったら、ミルをリール達の養子として貰い受けるから!卑怯な真似はせず、正々堂々と覚悟しろフウカ~!」


「この子は……。すみません、フウカ様。一応そういうつもりらしいです。さぁリール。屋台の餡蜜(あんみつ)チョコバナナを買ってあげますよ。行きましょうね」


「えっ?あんみちんこばなな?」


「はいはい、あんみちんこばななを買いますよ。とてもおいしい食べ物です。それではフウカ様とミル様、コンテストでお会いしましょうね」


クロスはリールのワガママが長々と続くことを予見し、雑な説得と挨拶を投げかけながら踵を返した。

だが、リールは食べ物の話に一瞬だけ流されかけたものの、まだ挑発行為をやりたかったらしい。

そのせいで彼女を歩かせまいと、(みずか)ら振り落とされようとすることで抵抗した。


「クロス!クロスクロス~!もう行っちゃうの~!?もっとお話をしたかったのに~!」


「リール、下手に暴れないで下さい。こうして肩車してあげていますけど、いつお漏らしされるのか不安なんですから」


クロスは自慢の腕力で肩車状態を強引に維持し、捕縛同然の有り様で金髪幼女を連行して去った。

そんな賑やかしい2人の後ろ姿を見届けた後、ミルは少し羨ましそうに呟いた。


「いいな~。ミルも肩車されたいかも」


「してあげようか?どこも人混みだらけで、肩車すれば会場の見通しが良くなるしね」


「で、でも……ミルは子ども扱いされるのが苦手」


「そっかー。ちなみにアタイに肩車されるのと、子ども扱いされる事を天秤(てんびん)にかけたら、どっちの方が重要になる?」


「断然に肩車が重要!今すぐ肩車されたい!どうかミルを肩車してください!」


「よぉーし、素直でよろしい!じゃあ行くぞミルちゃん!これが時雨流最終奥義の楓華巡回車(じゅんかいしゃ)だぁ!」


楓華は演技かかった口調で声を張り上げながら、ミルを素早く(かた)に乗せて持ち上げる。

ただし、わざわざ双肩(そうけん)では無く右肩のみで少女を(かつ)いで支えているため、それは肩車というより上腕乗せと呼べた。

更に楓華はフィギアスケートのように足を鮮やかに滑らせ、ミルとのペアダンスを披露しながら会場内を巡り始める。

しかも自分達は夫婦だとアピールしながらだ。


この奇怪な行動により、会場に居た参加者達などからは「夫婦で息ピッタリの優勝候補がいる」という謎の評判が立つのだった。

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