少女に
僕はよくわからなかった
痛いのか苦しいのか悲しいのかすらわからなかった、ただただ涙を流していた、夢の中のように意識がふわふわしていた
神さまなんていなかった、天使なんていなかった。
だけどもその状態は長くは続かなかった。
少し湿ったカビの臭い
少し肌寒い
目を開けると暗い古そうなアパートの部屋だった、隣では汚そうなオヤジがいびきをかきながら寝ている。
ここはどこだ、こいつは誰だ
月明かりに照らされた薄暗い部屋で立ち上がる、なんだか変な感覚。
この部屋は大きいのか、いや俺が小さいのか、少し湿った畳の感覚、パジャマの触感まで繊細に感じる。
だいたいこのパジャマの柄はなんだ、そしてこの胸は、肩を撫でる髪はなんなんだ、頭が目覚めるにつれ少しずつ気づき始めた。
どうなっているんだ。
台所へ行く、この狭いアパートでそれは目の前だった。
流しに置かれた安そうな鏡を見いる、くりっとした目がこちらを覗いた、
いやこちらが覗いているのだ。
少し距離をとる、映っているのは少しはだけたパジャマを着た、髪がボサボサの少女だった、どこかでみたことのある気がするが頭がぼんやりしてしまい思い出せない。
けれども可愛いかった。
もはや笑うしかない、本能がそう言っている。
どこからか寂しそうなギターが聞こえた。
犬が吠えている。