時代劇の時間です
「おいコラ、魔王コラァァァァ! 途中で止めてんじゃねぇぞコノヤロー!」
フレデリクが叫び声を上げ、魔王を追いかけて例の部屋──和室へと走って行く。
小鬼から時代劇が始まると聞かされた魔王は、途端に顔色を変えた。
「何と! 儂とした事が忘れておったわ!」
フレデリク達を放ったらかし、慌てて和室へと駆け込む。
追いかけたフレデリクが部屋に入ると、魔王は早くもちゃぶ台のむこうに座っていた。
傍らに置かれていた銀色で縦長の小さな板を手に取り、壁に付けられた黒い長方形の物体に向ける。
その物体は下部に一粒の赤い光が灯っていたのだが、縦長の板を向け色とりどりのスイッチを押すと瞬時に緑色に変わり、少し遅れて真ん中に絵が浮かび上がった。
驚いた事に絵は動いていた。音も聞こえる。
呆気にとられるフレデリクに、魔王は説明した。
「これはテレビだ。すまぬ、詳しい説明は後でよいだろうか?」
魔王は少しすまなさそうに続けた。
「ミト・コウモンの時間なのを忘れていたのだ。許せ!」
カルナードは相変わらず沈黙を貫いていた。
時折魔王に視線を向け、考え込む様な仕草をひたすら繰り返していたのを、タルケットはしっかり見ていた。
「おい、カルナード? お前さっきから何か変だぞ?」
「えっ? そ、そうですか?……うーん、でも、うーん?」
「何だよカルナード。言いたい事があるなら、はっきり言えよ!」
「それがですね……とても言い辛いんですけど……」
カルナードはもじもじしてから、眉を八の字にしてこう言った。
「……この回廊のブロック、魂じゃないと思うんです!」
「…………へっ…………?」
魔王に現場を放棄され、それを追いかけていった剣士を見送って、気の抜けた顔でへたり込んでいたサフィアが間の抜けた声を上げる。
タルケットが眉をしかめ、腰に手を当てた。
苛ついている時の癖だ。
「あ? どう言う事だよ。さっき魔王が言ってたじゃないか!」
「でも、人々の魂がまるで感じられないんですよ? 多分違うものだと思います」
タルケットとカルナードは顔を見合わせ、同時に駆け出した。