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第123話 放課後はまた今度

卒業式を終えて教室へ戻ると、黒板には大きな文字で「卒業おめでとう」と書かれていた。


式へ向かう前には何もなかったはずの黒板を見て、あちこちから歓声が上がる。窓際には色とりどりの紙飾りが揺れ、担任が教卓の上へ置いた花束の包装が、春の光を受けてかすかに光っていた。


「ねえ、これ、鞄に入らないんだけど」


みつみは卒業証書の筒を横向きにして、開いた鞄へ押し込もうとしていた。筒の端がファスナーに引っかかり、角度を変えると今度は中のポーチにぶつかる。


「そりゃそうでしょ。縦にしても出てるじゃん」


佳奈子が覗き込むと、みつみは筒をいったん引き抜いた。


「じゃあ持って帰るしかないか。途中で忘れそうなんだけど」


「今日だけは忘れないでよ。さすがに取りに戻るの面倒だから」


佳奈子は笑って、自分の証書を机の上に置いた。すでにクラスの何人かはスマートフォンを持って席を離れ、友達同士で写真を撮り始めている。


最後のホームルームが終わり、担任が「気をつけて帰れよ」と声を掛けても、すぐに教室を出る生徒は少なかった。離れた席から名前を呼び合う声とシャッター音が重なり、教卓の前には先生と写真を撮りたい生徒が集まっていた。


「ねえ、四人でも撮ろうよ。せっかく制服そろってるんだし」


佳奈子がスマートフォンを持ち上げると、千尋は机の横へ置いていた鞄を持った。


「いいね。どこで撮る? 黒板、今ならまだ人いないよ」


「じゃあそっち。あ、みつみ、その筒も持ってて。卒業式って分かるし」


「えー、これ? じゃあみんなも持ってよ。私だけ卒業した人みたいじゃん」


みつみの言い分がもっともだったので、四人とも証書を手にした。志帆はリボンのついた花飾りが写真に入る位置を確かめ、少しだけ横へずれる。


「こちらの方が、黒板の文字も入ると思うわ。……ただ、誰かに撮ってもらわないと四人そろわないわね」


「そこはお願いしよ。あ、ちょうどいいところに」


千尋が近くにいたクラスメイトへ声を掛けると、快く引き受けてくれた。四人が並び直す間にも、別の生徒から「あとで私たちとも撮ろう」と声が飛んでくる。


「はーい。こっち向いて!」


カメラを構えたクラスメイトの声に、みつみが筒を持ち直した。卒業証書が千尋の肩へ軽く当たり、二人が顔を見合わせて笑う。そのままシャッター音が続いた。


「今の、絶対変な顔してたよね」


みつみが写真を見に行くと、千尋も隣から画面を覗いた。


「大丈夫、私も笑ってるから。むしろこっちの方が普段っぽいじゃん」


「そう? ……あ、本当だ。いいね、これ!」


佳奈子は送ってもらった写真をさっそく保存した。志帆も自分の画面で確かめ、黒板の文字が見切れていないことに小さく頷く。


「ちゃんと撮れているわね。……あら、後ろの花飾りもきれいに入っているわ」


「ほんとだ。じゃあ、これも四人のチャットに送っとくね」


佳奈子が画面を操作していると、みつみは教卓の花束に目を留めた。


「ねえ、さっき式のときにさ、舞台の端の花、下に小さい車輪ついてたの気づいた? 私、途中で見つけてから、あれごと動かすのかなってずっと気になってた」


「みつみ、卒業式で何見てたの?」


佳奈子が笑うと、みつみは不思議そうに首を傾げた。


「え、でも気にならない? あんなに大きいの、持ち上げるの大変そうじゃん」


「確かに、動かすなら車輪があった方がいいでしょうね。あの大きさだと、飾りつけをするだけでも結構な手間でしょうし」


志帆が普通に頷いたため、今度は佳奈子が二人を見比べて吹き出した。


「卒業式の感想が、花の運び方なの?」


「ほかにもあるよ! あ、そうだ。校長先生の話、途中でマイクの音ちょっと変わったよね。あれって――」


「みつみ、そこも気づいてたんだ」


千尋が笑うと、みつみは得意そうに頷いた。そのまま式場の設備について話し始めたが、途中で近くのクラスメイトから写真に誘われ、今度はそちらへ駆けていった。


しばらくして、みつみが戻ってきた頃には、教室に残っている生徒も少し減っていた。


机の中に忘れ物がないか確かめ、鞄を閉じたところで、みつみのスマートフォンが震えた。画面には絵美里からのメッセージが表示されている。


『先輩たち、まだ学校にいますか? 校庭の方にいるので、よかったら来てください!』


「あっ、エミリンたちだ。行こう!」


みつみが鞄を肩へ掛け直す。四人は残っていたクラスメイトに手を振り、廊下へ出ようとした。


その直前、みつみは自分の席へ目を向けた。


机の中は空っぽで、椅子もきちんと収まっている。もうあの席に座って授業を受けることはないのだと思うと、少し不思議だった。


「みつみ、行くよー」


廊下から千尋の声がした。


「あ、うん!」


みつみは顔を上げ、三人の後を追った。


けれど、廊下の向こうから「写真撮ろう!」と呼ぶ声がすると、結局また足を止めることになった。四人はもう一枚だけ写真を撮ってから、ようやく階段を下りた。


◇


校庭の隅では、絵美里と紗希が何かを話しながら立っていた。少し離れた場所で瑞穂と蘭々がスマートフォンを覗き込み、二人で画面を拡大している。


「先輩たち! 卒業おめでとうございます!」


絵美里が四人に気づいて手を振った。三月の風に短いダークブロンドの髪が揺れ、隣の紗希も背筋を伸ばす。


「ご卒業、おめでとうございます。今日は写真、一緒にお願いしてもいいですか?」


「もちろん! 私たちも撮りたかったんだよ」


みつみが歩み寄ると、蘭々は嬉しそうにスマートフォンをしまった。


「よかった! 先輩たち、教室で忙しいかもって話してたんです。あ、私たち、さっきまで次のダンジョンの相談してたんですよ!」


「へえ、もう決まったの?」


千尋が聞くと、瑞穂は少し首を傾げた。


「まだ候補がいくつかあって、迷ってます。でも、前に行ったところの別のルートも見てみたいなって話してたんです」


「私、まだ見てない景色があるなら、そっちも行きたいんですよね!」


蘭々が楽しそうに付け加えると、紗希も笑った。


「ま、どこに行くかはこれからですけど。あたしもバンドの予定あるんで、うまく合う日を探してるとこです」


「いいじゃん。決まったら写真送ってよ。どんなところ行ったか見たいし」


佳奈子がそう言うと、蘭々は嬉しそうに頷いた。


「もちろんです! 先輩たちも、またダンジョンに行ったら写真見せてくださいね!」


その横で、絵美里がみつみたちへ顔を向けた。


「そういえば、盾山で撮った写真、紗希たちにも見せたんですよ。お城の上から撮ったの、すごく評判よかったです」


「あれ、ほんとによかったもんね! 私、帰ってから何回も見ちゃった」


みつみが答えると、絵美里は笑った。


「私もです。またああいうところへ行きたいですね。今度は皆さんとも予定が合えば嬉しいです」


「うん、また行こう!」


千尋も頷く。佳奈子は絵美里のスマートフォンに表示された城の写真を見ながら、「そういえばあそこ、風すごかったよね」と笑った。


話題はしばらく盾山の思い出へ移ったが、蘭々が卒業証書の筒に気づくと、すぐに記念撮影の話へ戻った。


「そうだ、写真撮るんでしたよね!」


佳奈子は校庭を見回し、校舎を背景にした方が光の具合がよさそうだと判断した。


「ここなら八人そろって入れるかな。あ、誰かに撮ってもらおうよ」


「私、お願いしてきます!」


瑞穂が近くにいた生徒へ声を掛ける。写真を頼まれた生徒の前に八人が並んだが、横に広がりすぎて全員が入りきらない。


「紗希、もうちょいこっち」


「え、絵美里の盾ないのに、今日は並ぶ位置まで指定すんの?」


「だって、そっちだと端が切れそうなんだもん!」


二人のやり取りに佳奈子が笑いながら場所を譲り、蘭々と瑞穂も少し前へ出た。みつみは証書の筒を掲げかけたが、画面を確認していた千尋に「あ、それだと蘭々の顔が隠れる」と教えられて持ち直す。


ようやく全員が収まると、カメラの向こうから声が掛かった。


「撮るよー!」


八人が顔を上げる。ちょうど風が吹き、誰かの髪が顔へ掛かったが、そのままシャッター音が響いた。


画面を見た蘭々は、笑いながら自分の前髪を押さえる。


「うわ、私、髪がすごいことになってる! でも、これ好きです!」


「じゃ、これでいいじゃん。みんなちゃんと写ってるし」


佳奈子も覗き込み、写真を送ってもらうようお願いした。


そのあとも何枚か写真を撮り、卒業証書を持ってポーズを取ったり、後輩だけで並んだりしているうちに、いつの間にか結構な時間が過ぎていた。


「そろそろ出よっか。駅の方、寄りたいところもあるし」


時計を見た佳奈子が声を掛けると、みつみも頷いた。


「あ、そうだった。私も行きたい!」


絵美里は少し残念そうにしながらも、笑顔で四人を見た。


「じゃあ、今日はここで。先輩たち、また連絡しますね。次の探索も、都合が合えば一緒に行きたいです」


「うん、連絡して。私たちも行ける日があれば行きたいし」


千尋が答えると、紗希は四人へ改めて頭を下げた。


「先輩方、卒業おめでとうございます。あたしらも、こっちで楽しんでおきますんで。写真、また送りますね」


「楽しみにしてる。あ、紗希ちゃん、バンドの方も頑張ってね」


佳奈子がそう返すと、紗希は照れくさそうに笑って「ありがとうございます」と答えた。


瑞穂と蘭々も手を振る。絵美里は最後に四人を見送るように少し歩き、校門の手前で足を止めた。


「先輩たち、気をつけて帰ってください!」


「エミリンたちもね!」


みつみが大きく手を振り返す。四人が門を抜ける頃には、後ろから「この写真、もう送っていい?」という蘭々の声が聞こえていた。


◇


校門を出て少し歩いたところで、千尋が振り返った。


「なんかさ、あの四人、もう普通に自分たちで楽しんでるね」


「そうだね。私たちが部室に行かなくなってからも、写真いっぱい増えてたし。今度見に行ったら、また知らない場所ばっかりになってそう」


佳奈子はスマートフォンに届いた八人の写真を開き、保存した。隣からみつみも画面を覗き込み、自分のスマートフォンを確かめる。


「あ、私にも届いてた! エミリン、もう送ってくれたんだね」


「早いね。私もあとで保存しよっと」


千尋は鞄の肩紐を直し、歩く速度を少し緩めた。


前を歩く生徒たちの会話が風に乗って届く。卒業記念に何を食べるか、春休みに誰と会うか。知らない名前が混じっていても、笑い声の調子だけはいつもの放課後と変わらなかった。


みつみは手にした卒業証書の筒を持ち替え、自分の制服へ目を落とした。


「ねえ、今日でこの制服着て学校に来るの、最後なんだね」


千尋も自分の袖を見た。


「そうだね。教室にいる間はあんまり変わらなかったけど、こうして外に出ると、ちょっと変な感じする」


「分かる。制服って、朝何着るか考えなくていいから楽だったんだけどなあ。大学始まったら、毎日服考えなきゃいけないじゃん」


佳奈子がそう言って笑うと、みつみも顔を上げた。


「あ、それ! 私もどうしようって思ってた! 実習のときは決まった服があるけど、普通の日は私服だもんね」


「そうよね。私も入学式の服は決めたけれど、普段着るものまで考えていなかったわ」


志帆は少し考えながら、自分のコートの袖を見た。


「まあ、今持っている服で十分だと思うのだけれど。大学って、高校みたいに毎日同じ教室へ集まるわけでもないでしょうし」


「志帆、そういうところはあんまり気にしないんだね。私、新しい友達もできるだろうし、せっかくだから春物ちょっと買い足したいんだよね」


佳奈子が話していると、千尋が思い出したように自分の靴へ目を落とした。


「私も新しいの欲しいな。普段履くやつじゃなくて、走るときの。今のもまだ使えるんだけど、大学入ったらいろいろ試してみたいんだよね」


「千尋、それ前から言ってたよね。もう候補決めたの?」


「いや、そこがさ。調べてたらまた別のが気になっちゃって。実際に履いてみないと分かんないし、一回お店行こうかなって」


千尋は楽しそうに話しながら、歩道の先へ目を向けた。


みつみは二人の話を聞いていたが、志帆が何気なく見せたスマートフォンの画面に気づいて、今度はそちらへ顔を寄せた。


「志帆、それ何見てるの?」


「大学の近くの地図よ。駅からの道を確かめていたのだけれど、少し離れたところに大きな公園があるみたいなの。時間が空いたときに散歩してみようかと思って」


「へえ! 大学の近くって、まだ知らないところいっぱいあるもんね。私も専門学校の周り、今度もうちょっと歩いてみたいな」


「そうね。授業だけじゃなくて、周りにどんな場所があるのかも楽しみだわ」


志帆が地図を拡大すると、みつみはそこに表示された小さな池を見つけ、さらに興味を示した。二人が地図を覗き込んでいる間にも、千尋と佳奈子は靴の話を続けていた。


やがて道の先にある信号が赤へ変わり、四人は歩道の端で足を止めた。


向かい側では、同じ制服を着た生徒が何人か集まって写真を撮っている。みつみはその様子を眺め、もう一度だけ自分の制服へ目を落とした。


三月の空は明るく、風も朝ほど冷たくなかった。


信号が青になるまで、四人はそれぞれの方を向いて待っていた。みつみは卒業証書の筒を握り直し、千尋は向かい側の歩道へ視線を戻す。


「ほら、行こっか」


千尋が声を掛けると、みつみは「うん!」と頷いた。四人は横断歩道を渡り、駅へ向かって歩き出した。


しばらくすると、佳奈子がスマートフォンのカレンダーを開いた。


「そういえばさ、春からみんな予定変わるでしょ。最初は忙しいと思うから、学校が落ち着いたらまた連絡し合わない? ダンジョンも行きたいし、普通にご飯だけでもいいし」


「いいね。私も新しい学校の様子が分かってからの方がいいかも」


千尋は予定表を開きかけたが、まだ何も決まっていない欄を見て、そのまま画面を閉じた。


「大学の授業が始まったら、どんな感じになるかまだ分かんないし。でも、私もちょっと行ってみたいところあるんだよね」


「ダンジョン?」


佳奈子が顔を向ける。


「うん。前に写真見かけたところなんだけど、結構面白そうでさ。まだ詳しく調べてないから、あとで送るね」


「いいじゃん。私も見たい」


その会話を聞いていたみつみが、志帆のスマートフォンから顔を上げた。


「えっ、何の話? ダンジョン?」


「そう。千尋が気になってるところがあるんだって」


「私も見たい! あ、でも、次はみんなの予定が合ってからだよね。私も専門学校始まったら、どんな感じになるか分かんないし」


「そうだね。今から無理に決めなくても、行きたいところは逃げないでしょ」


千尋がそう答えると、みつみは素直に頷いた。


「じゃあ、落ち着いたらまた連絡しよ!」


「ええ。私もその頃には、新しい場所を見つけているかもしれないわね」


志帆はスマートフォンをしまい、楽しそうに笑った。


そのまま話題は、大学の近くで見つけた店や、通学途中に寄れそうな場所へと移っていった。


みつみが専門学校の見学で食べたものの話を始めると、佳奈子は以前、虎ヶ崎ダンジョンで食べたマフィンを思い出した。


「そうだ、みつみ。あのときのマフィン、また作ってよ。私、結構好きだったんだよね」


「もちろん! でも、その頃にはもっといろいろ作れるようになってるかも。何がいい? 甘いの? しょっぱいの?」


「それは新しい学校で何作るか決まってからでいいよ。あ、でも、お菓子の方も楽しみにしてるからね」


「任せて! おいしいの作れるようになったら、写真も送る!」


みつみは嬉しそうに頷き、さっそく作ってみたいものを考え始めた。


千尋はその横でスマートフォンを操作していたが、ふと思い出したように顔を上げた。


「そういえば、佳奈子って大学でサークル入るの?」


「まだ決めてない。いろいろ見てからかな。千尋は?」


「私も同じ。面白そうなのあったらやってみたいし、別に急いで決めなくてもいいかなって」


「だよね。最初から予定詰めすぎても疲れそうだし。私、大学始まったら、友達と遊ぶ時間も欲しいんだよね」


佳奈子はそう言いながら、今日撮った写真をもう一度開いた。


画面には、黒板の前で笑う四人が並んでいた。


「……これ、ほんといい写真だね」


千尋が覗き込むと、みつみも横から顔を寄せた。


「あっ、それ! 私、千尋の肩に筒ぶつけちゃったやつだ!」


「そうそう。あれ、ちょうど撮られてたんだよね」


千尋が笑う。


志帆も近づいて画面を眺めたが、しばらくすると別の写真が気になったらしく、自分のスマートフォンを取り出した。


「そういえば、八人で撮った方も届いているのよね。……あら、こちらもいい写真だわ」


「どれどれ?」


佳奈子が画面を覗き込み、蘭々の髪が風で乱れているのを見つけて笑った。


「あー、これ。蘭々ちゃんが気に入ってたやつだ。私もこういう自然なの、結構好き」


「エミリンも笑ってるね。あ、紗希ちゃん、ちょっと目つぶってない?」


みつみが指すと、千尋は画面を拡大した。


「ほんとだ。でも、これもこれでいいんじゃない?」


写真を見ながら笑っているうちに、駅へ続く道が見えてきた。


道端の店先には春物の服が並び、ガラスに映った四人の姿が、歩くたびに少しずつ移っていく。


佳奈子がふと顔を上げ、通りの向こうを指した。


「あ、あそこ! さっき言ってたお店。今日ちょっと寄ってみたかったんだよね」


みつみが顔を向けると、そこには新しくできたばかりらしい店があった。入口の前にはメニューの写真が並び、通りかかった人たちが足を止めて眺めている。


「ここ? あっ、なんかおいしそう!」


「でしょ? 昨日見つけてさ。卒業式の帰りに寄れたらいいなと思ってたんだ」


佳奈子は楽しそうに店の前へ向かった。


千尋もメニューを覗き込み、すぐに一つの写真へ目を留めた。


「あ、これいいじゃん。私、これ食べたい。……でも、こっちも気になるな」


「千尋、珍しく迷ってるね」


「だって、おいしそうなの二つあるんだもん。どっちにするか悩むでしょ」


佳奈子が笑うと、志帆も二人の隣に立った。


「それなら、別々のものを頼んで少し分け合うのはどうかしら。私も、こちらの方が気になっているの」


「あ、それいいね! 私もいろいろ食べてみたい!」


みつみがさっそく賛成する。


「じゃあ、四人で違うものを頼んで、ちょっとずつ分けない?」


佳奈子の提案に、千尋はメニューの写真を指した。


「それいいね。私はこれにする。さっきから気になってたんだよね」


「じゃあ、私は季節限定の方にするわ。こちらもおいしそうだもの」


志帆も一つ決めたところで、みつみは写真の間を何度も見比べていた。


「うーん、悩むなあ。これもおいしそうだし、こっちも気になるし……。せっかくだから、普段あんまり食べないものにしてみようかな」


佳奈子はみつみの横で笑い、入口へ顔を向けた。


「それなら中でゆっくり決めようよ。ここにずっといたら、ほかのお客さんも入りづらいし」


「あ、そうだね!」


みつみが顔を上げると、千尋が先に扉を開けた。志帆もその後へ続き、佳奈子はまだメニューを眺めているみつみを振り返る。


「みつみ、行くよー」


「うん!」


みつみは笑顔で頷き、佳奈子の隣へ追いついた。


「ねえ、さっきの限定のやつも気になるんだけど、ちょっとだけ分けてもらってもいい? 私、自分のも頼みたいし」


「もちろんよ。私も、みつみが何を選ぶのか気になるわ」


志帆が振り返って答えると、みつみは嬉しそうに笑った。


先に店内へ入った千尋が、窓際の空いた席を見つけて手を振る。


「こっち、四人で座れそうだよ!」


「いいね、窓際!」


佳奈子がそちらへ向かうと、みつみも足を速めた。志帆は店内のメニューに目を留め、さっそく新しい写真を見つけている。


「あら、飲み物もいろいろあるのね。これは少し迷いそうだわ」


「えっ、どれどれ?」


みつみが志帆の隣へ顔を寄せた。




     ――完――

これにて『現代JKダン活部!』完結です。


高校生活は終わりましたが、みつみたちのダンジョンライフは、きっとこれからも続いていくことでしょう。


全123話、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


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