第2話:お色気女戦士と、新たな名前
いつもお読みいただきありがとうございます!
今回は、異世界転生したお話です。
どうぞお楽しみください!
「異世界『エルドラド』へ行きなさい。……せいぜい、私を退屈させないことね」
腹黒い女神が冷酷に指を鳴らすと、タカとサキの身体が眩い光に包まれ、神界から弾き出された。
次元の狭間を猛スピードで落下していく中、サキがタカの胸ぐらを掴んで叫ぶ。
「おい、そこの亡者! 異世界では地獄の鬼の姿のままだと余計な混乱を招きます。閻魔大王様から『人間界用の術』を授かっていますから、今から姿を変えますよ!」
「えっ、殺鬼さんが人間の姿に!?」
サキが呪文を唱えると、彼女の身体が怪しい光に覆われた。
前頭部にあった禍々しい二本のツノが、するすると頭の中に引っ込んでいく。190センチあった圧倒的な巨躯は、しなやかに縮んで170センチほどの、スタイル抜群なモデル体型へと変化した。
光が収まったとき、そこにいたのは――。
豊かな黒髪をなびかせ、切れ上がった瞳はそのままに、はち切れんばかりの大胆な胸元と、引き締まったウエストを露出した、お色気ムンムンの超美人女戦士だった。
「ど、どうですか……? 変ではないですか?」
慣れない人間の姿に、少し頬を赤らめて尋ねるサキ。
貴博は、そのあまりの美しさと破壊的なプロポーションに、鼻血が吹き出るのを必死で耐えた。
「最高です……! 地獄に戻る必要なんてない、ここが新しい俺の天国だ!!」
「相変わらず脳みそまで煩悩で満ちていますね、この変態は!」
サキの容赦ない拳骨がタカの脳天に落ちる。痛い、だがそれがいい!
「あ、それとサキさん。異世界に行くなら、ちょっと格好つかないんで、現世の本名で呼んでくれませんか? 垣内貴博。みんなからは『タカ』って呼ばれてました!」
「タカ……ですか。ふん、覚えました。ですが私は、あなたの監視役であることを忘れないでくださいね、タカ」
初めてサキに名前を呼ばれ、タカのテンションは最高潮に達した。
ドォォォォンッ!!!
二人は激しい衝撃音とともに、青空が広がる異世界『エルドラド』の草原へと着地した。
幸い、タカの頑丈すぎる肉体のおかげで無傷だった。
「チッ……。神界よりはマシですが、やはり不愉快な人間の世界の匂いがしますね」
サキは腰の剣(地獄の金棒が変化したもの)に手を当てながら、お色気たっぷりの身体をくねらせて周囲を警戒する。
その時、近くの街道から、ガシャンガシャンと派手な鎧の音を響かせ、数人の男たちが走ってきた。どうやら、新米の冒険者パーティーのようだ。
「おい、今のすげえ着地音は何だ!?」
「って、うわあああ! 何だあの超絶美人は!?」
「おいおい、胸が、太ももがヤバすぎるぞ……!」
男たちの目は、一瞬で人間に化けたサキへと釘付けになった。サキのあまりの美貌とお色気オーラに、男たちは完全に理性を失いかけている。
「おい、そこの女! こんな危険な草原に、そんな格好で突っ立ってると危ねえぞ。俺たちが護衛してやるから、夜の宿まで一緒に――」
下品な笑みを浮かべてサキの肩に手を伸ばそうとした男の前に、スッとタカが立ち塞がった。
タカの目は、静かに、しかし冷たく据わっている。
「おい、お前ら。俺のサキさんに気安く触ろうとしてんじゃねえよ」
「あぁ? なんだお前、ひょろっとした一般人のくせに、その美女のツレかよ? 調子に乗ってんじゃねーぞ!」
怒った冒険者のリーダー格が、腰の鋼鉄の剣を抜き、タカに向けて思い切り振り下ろした。
地獄の男鬼に比べれば、あまりにも遅く、あまりにも軽い、おもちゃのような一撃だった。
タカはため息をつきながら、スッと身体をかわした――。
「このっ、ちょこまかと……っ!」
リーダー格の冒険者が、顔を真っ赤にして何度も剣を振り回す。
ブンッ、ブンッ、と鋭い風切り音が響くものの、タカはその刃の軌道を完全に先読みし、上半身をわずかに 揺らすだけでヒョイヒョイと余裕でかわし続けていた。
「おい、お前ら何を見てやがる! このすばしっこい野郎を囲めっ!」
リーダーの怒号に合わせ、残りの4人の冒険者たちも一斉に武器を抜いてタカへ飛びかかった。
前後左右、逃げ場のない同時攻撃。普通の新兵なら一瞬で詰むシチュエーションだ。
しかし、地獄のトップ獄卒であるサキ(殺鬼)の、音速を超える全方位からのシバきを毎日生き延びてきたタカにとって、人間の攻撃など止まっているも同然だった。
「おっと」「そっちも遅い」「はい、かすりもしませーん」
タカはステップを踏むように軽やかに、流れるような動きで5人の刃の隙間をすり抜けていく。
彼らにとっては全力の猛攻。だがタカにとっては、ちょっとしたストレッチ程度の運動でしかなかった。
数分後――。
「はぁ、はぁ、な、何なんだよ、こいつ……っ!」
「バ、バケモノか……? 一発も、掠りもしねえ……」
「ま、もう無理……」
タカに触れることすらできず、ただ虚空を斬り続けた5人の冒険者たちは、限界を超えた疲労のあまり、その場にバタバタと崩れ落ち、大の字になって倒れ込んでしまった。
「ふぅ。まぁ、地獄の砂嵐の中でサキさんの千本ノック(金棒)を避けるのに比べたら、ただの朝のラジオ体操だよね」
タカが息一つ乱さずにケロッと言ってのけると、後ろで腕を組んで見ていたサキが、呆れたようにため息をついた。
「ふん、当然です。私の『躾』をあれだけ受けておいて、人間の有象無象ごときに触れられるなど万死に値しますから。……まぁ、最低限の合格点、といったところですかね」
口元をツンと引き締めながらも、サキの切れ上がった瞳には、自分の「作品」の圧倒的な強さを誇るような、微かな満足感が浮かんでいた。
その時、倒れ伏した冒険者の一人が、息も絶え絶えにサキのお色気ムンムンな太ももを見上げ、消え入るような声で呟いた。
「お、おい……あんなバケモノ男のツレだぞ……あの女も、絶対ただの美人じゃねえ……」
第2話を最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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