第26話 少年の心は永遠と残り続けるのだ。
ターボン学園から南へ進んだ所に位置する村、キブカ村。
人口が多いという訳では無いが、そこに住む住人たちは皆がとても仲良く暮らしている。
助け合い、支え合い、そして、村を発展させていく。とても、良い村だ。
と、老人からの説明を聞いていた結衣は考えた。
こんな良い村に危害を与えるなんて、一体誰なのよ、と。
「なぁ、この村には週刊少年フライは売っているのか?」
真剣だった空気を真っ向からぶっ壊したのは、もちろん織田信長だ。
「いや信長、今週の買ってたじゃん。」
反応したのは、結衣だった。
「だって、持ってくるの忘れちゃったんだもん。暇なんだもん!」
「......。」
結衣の冷たい目線が信長へ向けられる。
「いや、我だってそろそろフライから卒業しないといけない時期だって自覚はしてるさ。それでも、辞められないんだよね。依存性が高いんだよね。我の心はまだまだ少年なんだよね!」
と、信長は言うと全力のドヤ顔をした。
「いや、そんなドヤ顔で言われても困るんだけど......。」
信長はソワソワしている。
結衣は緊張している。
イリスは何を考えているのか分からない。
ミラン先輩は何故かワクワクしている。
本当に、大丈夫なのだろうか。
「ここが荒らされてしまった畑です。」
村に到着するとすぐに村長が出迎えてくれた。信長たちは、その村長に村を案内してもらっていた。
「だいぶ荒らされていますね!」
と、ミラン先輩が言う。
ミラン先輩の言う通り、この村の畑は無造作に作物が抜き取られており、また、踏み荒らされた痕跡も残っている。
「一体、いつごろに被害を受けてるのか分かりますか?」
と、ミラン先輩が村長に聞いた。
「いつごろ、というのは分からないのですが、被害は日没後という事は分かっています。
村の者が全員家の中に入ってしまってからなので。」
「なるほどね。」
次に村長は村の広場へと案内した。
そこには、複数人の人が集まっていた。
「ここにいるのは、拐われてしまった人の家族です。」
そこにいたのは、兄弟を失った人。
親を失った人。
恋人を失った人。
その場にいた人たちの表情が、結衣たちのスイッチをオンにさせた。
この村に平和を取り戻そうとするやる気スイッチを。
村の案内を終えた村長は、最後に宿へと案内した。
「ここがミラン様たちに泊まってもらう場所でございます。」
「分かった! 早速、今日の夜から見張ってるから任せておいくれ!」
「ありがとうございます。」
ミラン先輩は村長に挨拶をすると、早速、作戦会議を始めた。
「さて、君たち。今回の任務は今まで以上にハードなものとなっている。覚悟は出来ているのかね?」
「もちろんです! 畑を荒らして、そして、人を拐うなんて、許せませんよ!」
「そうねェ。その意見には私も賛成かなァ。」
結衣とイリスはやる気十分と見える。
だが、信長はというと。
「我は、ここで皆の帰る場所を守っておこう。」
「それ、最初から戦う気がないでしょ。」
思わず結衣がツッコむ。
「当たり前だろ、だって怖いもん。」
「......。」
信長を無視して、作物会議が行われる。
「さて、今回は役割分担を行う。
まず、結衣くん。君は村の南側を見張っておいてくれ。
イリスくんは、村の北側を見張ってくれ。
ボクは、君たちのどちらかが仮に戦闘を始めた場合、村の人たちを避難させるための準備をしておくよ。
ただ、あくまでも目的は犯人の身柄を確保すること。戦って勝つことではないよ。だから、出来ることなら戦わずに話し合いだけで解決して欲しいんだ。」
「了解しました!」
「分かったわァ。」
「信長くんは、村の中を散歩していてくれて構わない。だが、何か異変があったらすぐに知らせてくれたまえ。」
「おう、フライを探して待ってるぞ!」
「「「.......。」」」
作戦会議終了。
信長は会議が終わるとすぐに宿へと行き、こっそりと持ち出していた酒を取り出した。
「さて、我は酒でも飲んで終わるのを待つとしよう。」
と、呟く。
気がつけば、外は暗くなり始めていた。
「もしや、もう作戦開始時刻なのか。」
と、信長は窓の外を眺めながら呟いた。
だが、何かが怪しい、そう感じた信長。
「我の腹時計は正確だ。だからこそ、違和感がある。まだ、暗くなる時間ではないと思うのだがな。」
夜の暗闇は、唐突に訪れた。
そして、その訪れはたとえ怪しいものだとしても、風紀委員の作戦の始まりの合図だ。
「この酒は、また今度に飲むとするか。」
信長はそう呟くと、床に置いておいた刀を左手で握り宿の外へ出た。
「よし、我の冒険の時間だ。待ってろよ! フライ!!」




