表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/14




王子であるクリスティアンとの謁見が終わった次の日、シュナイアは家庭教師であるマティルドの教えで魔法学を学んでいた。



シュナイアの両親であるアレステル公爵夫妻の頼みによってマティルド・レイネは公爵家に住み込みでシュナイアに魔法学を教える事になっていた。

記憶を取り戻す前からマティルドに魔法学を習っていたシュナイアだが彼が優秀なのかそれともシュナイアの覚えが早いのか、勉強はシュナイアと同じ年齢の子よりもかなり進んでいてこれといって焦る必要もないという状況なのだが、マティルドは公爵夫妻の不安を取り除く為にこうして住み込みでシュナイアの側に居てくれている。



「先生はここに住み込みで良かったのですか?」



マティルドにもやらなければならない事や一緒に居たい人だっているだろう、そう思ったシュナイアは勉強の休憩時間にマティルドに尋ねた。



「ええ、ここは王都からさほど離れていませんし。それに公爵領で採れる薬草にも興味がありますしね」

「先生は魔法使いかつ錬金術師でもあらせられますものね」


(わたくしも錬金術を使ってみたかったけどそっちの才能はからっきしでしたのよね…シュナイアの才能と言ったら魔力量と顔だけ…かもしれませんわね)


ゲームでもヒロインよりかなり美しく描かれていたシュナイア。まぁ、ヒロインが平凡(・・)というのが乙女ゲームあるあるなのだが。

とにかくその性格の悪さで周りからは疎まれていた。

自分の魔力量を誇っていてそれを自慢し、かつ自分より魔法の使えない令嬢などを見下していたのだ。

もちろんヒロインの事も。


シュナイアはそんな悪役令嬢にはなるまいと己の力を過信しないよう心がけた。



「そういえばシュナイア嬢は初めてクリスティアン様にお会いしたのでしたよね。どうでしたか?殿下はご令嬢に大変人気であらせられる、シュナイア嬢も殿下を気に入ったのでは?」

「そうですわね、まだお若いのに大変しっかりとした方でしたわ。きっと他のご令嬢は放ってはおきませんわね」

「シュナイア嬢はここ最近とても10歳とは思えない発言をしますね」



マティルドは苦笑し、先ほどシュナイア付きのメイドが淹れてくれた紅茶に口をつける。

魔王の漆黒の髪ほどではない黒色の肩までつくサラサラとした髪を耳にかけ、紅茶を飲む際に伏せられた目元では長い睫毛がとても色っぽい。



(攻略キャラではないのに何でこんなに美形なのやら)



そう、マティルド・レイネは攻略キャラではない。

では何故記憶を思い出した際にシュナイアがマティルドの名前に反応したのか。それは、マティルドは異世界からやってくる聖女となるヒロインの家庭教師となる存在だからだ。

ゲーム内で魔法の授業を選ぶと出てくるキャラクター。その画面でしか知らなかった人物だが、こうして授業をしつつ彼と話していると結構面白い人物だとシュナイアは感じた。



「10歳では普通経験しない事をした…からなのかもしれませんわね」



ふふふ、と笑って言うとマティルドは困った様に笑った。

そのマティルドの顔を見て、シュナイアは彼に一歩踏み込んでみようと決意する。



「先生。お願いがあるのですが…」

「お願いですか?私に叶えられる範囲であれば聞きましょう」



カップをソーサーの上に静かに起き、マティルドはシュナイアに顔を向ける。



「二人だけの時は素で接して頂ければと思いまして」

「…素ですか」



シュナイアだからこそ知っている彼の素。

ゲームのサブイベントで知ったからこその情報なのだが。



「何故バレたのでしょうね?一度もシュナイア嬢の前では出した覚えは無いのですが」

「勘…とだけ言っておきますわ」


ニコッと笑ってそう言うと、マティルドは先ほどの品のある笑い方とは違って口角を斜めに上げ



「面白いのは魔力量だけって訳じゃなさそうだ」

「そう思って頂けて光栄ですわ」



マティルド・レイネの素…それは結構ガラの悪いキャラだったのだ。

素を暴かれたマティルドは先程までの紳士の見本と言って良いほどの綺麗な姿勢を崩し、足を組む。このギャップもまたいい!とシュナイアは心の中で親指を立てる。



(ゲームをプレイしてその事実を知った時、わたくしの好感度はかなり上がったのを覚えている。意外とワイルドなキャラが好きだったのかもしれない。というか、接していて疲れなさそうなのよね)




「まぁ、嬢ちゃんの前だけでも素で居られるのは助かるな…結構疲れるんだぜ?」

「でしょうね、わたくしも疲れますもの」

「そう言うところが年甲斐もないって言ってんだよ。まぁ嬢ちゃんも俺に礼儀とかいらないから気安く接してくれ。勿論二人の時だけな?」



クツクツと笑うマティルドは先ほどの品のある色気よりも好ましいとシュナイアは楽しそうに笑った。

マティルド・レイネは信用出来る男だ。例え自身に破滅を導くヒロインの家庭教師となる男でも。

だから今の内から腹を割って接しておこうとシュナイアは思ったのだ。


(それに、そっちの方が楽しい…そんな考えもありますのよね。それにヒロインが来る頃には彼は32歳…前世のわたくし的にはストライクゾーンでしたのに…残念だわ)



こうしてシュナイアとマティルド・レイネは素を見せ合う師弟にまで進展したのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ