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馬車に揺られ王都に着いたシュナイアはそのまま賑やかそうな街の中を通り過ぎ王宮へと連れられた。
本人としては王宮で王子様に会うよりも街の中を見周りたいというのが本音だがそんな事を口にしたら不敬になりかねないのでなんとかその言葉を飲み込んだ。
王宮は白を基調とした作りで赤いカーペットの上を父親であるアレステル公爵に連れられひたすら歩いた。
そう、10歳には広過ぎる作りで歩くのが大変なのだ。そして父親を待たせまいとシュナイアは小走りになりながらも必死に進んだ。
父親も、そしてシュナイア達を案内する王宮の兵士もそんな必死な姿のシュナイアが可愛らしく思えたのかニコニコと微笑んでいるのだがシュナイアには余裕が無く全く気付きもせず、黙々と歩いた。
(無駄に広いのよね…ゲームではわからなかったわ…でもとっても綺麗なお城)
イライラはせず城の美しさに圧倒されながら、そしてその空気の重さに自然と肩に力が入った。
そうして案内されたのは室内ではなく、見事な程に深紅の薔薇が咲き誇る庭園。ゲームのスチルで王子とヒロインのツーショットで背景が薔薇園みたいな場所があったが、もしかしたらこの庭園を描いていたのかもしれない、とシュナイアは薔薇に見惚れながら前世の記憶を蘇らせる。
そしてその場にはまだ王子の姿は無く、気が緩んだシュナイアは思わず
「お父様見て!なんて素晴らしい庭園なの!」
「ここは王妃様の薔薇園…まさかこんな所に案内されるとは…」
中身の年甲斐も無くはしゃぐシュナイア、そして驚き戸惑うその父アレステル公爵。
二人が立ち尽くしていると複数の兵士を連れた金髪蒼眼の少年が姿を現した。
少しツンツンとした金髪は陽の光を浴びキラキラと輝いていて、その蒼瞳はまるで海の底を移す様な美しさを現している。
その姿を確認した父親は少年に向かい頭を下げ、それに習いシュナイアも淑女の礼を取る。
すると少年はまだ声変わりのしない声で
「畏まらずともよい、頭を上げよ」
確かこの金髪蒼眼の少年、クリスティアン・レシュガルドはシュナイアと同じ歳だったはず。
すでに偉そうだなと、そんな感想を思い浮かべるシュナイア。
(うん、確かに美形だけれど前世の年齢が年齢だけにさすがに10歳の少年に一目惚れはしないわね…)
安心し、笑顔を浮かべるのであった。
「殿下この度は謁見の許可を下さり誠にありがとうございます。」
「かまわん、そなたのアレステル公爵家には代々公爵家としても宰相としても救われていると父上…国王が申していたからな。それで本日の要件は?」
「先ずは勇者の力への覚醒、おめでとうございます。そのお祝いを納めに参ったのと私の娘をご紹介したく…シュナイア、殿下にご挨拶を」
その時だった。一気にクリスティアンの纏う空気が重くなったのは。
それを見逃さなかったのはきっとシュナイアだけであっただろう。
(殿下…既に沢山の貴族から自分の娘との婚約を〜とか迫られてるのね…確かゲーム内の回想であったわ。それにも臆さず悪役令嬢のシュナイアは自分を婚約者に、と父親の権力を使ってその座に着いたのよね…そうはなるまい)
「お初にお目にかかります殿下、アレステル公爵家長女のシュナイア・アレステルにございます。この度は勇者への覚醒おめでとうございます。」
「…ああ、アレステル公爵家のシュナイア嬢、貴女のお噂は聞いている。とてつもなく高い魔力量だとか。」
「そこまで大した物でもございません。突飛しているとは言われておりますがきっと子供の内だけですわ。大人になれば他の方と並ぶぐらいになるとわたくしは予想しておりますの」
「伸びるか伸びないかは貴女の努力次第だろう、励むといい。そして国に何かあった時はその力を貸してもらえると有難いのだがな」
そう言って子供らしからぬ笑みを浮かべるクリスティアン。
(きっと魔王の話を聞いているのね。そして今はまだそこまで俺様ではない…猫被ってるだけかもしれないのだけれど。まあいいわ、挨拶はしたしさっさと帰ってマティルド先生と魔法学を進めたいわ)
「その時が来ましたらなんなりと…さぁお父様、殿下への挨拶も済みましたしそろそろ席を外しませんとお忙しい殿下にご迷惑をかけてしまいますわ」
早く帰りたいが為にシュナイアがそんな提案をアレステル公爵にすると、クリスティアンは驚いた様な目を彼女に向けた。
「そ、そうかな?まぁシュナがそういうのであれば…殿下、貴重なお時間を私どもにくださりありがとうございました。それではこれで失礼いたします」
「あ、ああ…」
「殿下失礼いたします」
そう頭を下げ、シュナイアはアレステル公爵とその場から去った。
その後ろ姿をクリスティアンは呆然と見送るのであった。
「シュナ〜何でもっと殿下とお話ししなかったんだい?殿下かっこよかっただろう?」
「確かに殿下はかっこいいとは思いますけれどわたくし的にはマティルド先生の方が好みですわね」
「えええ、マティルドはシュナよりも16歳も年上じゃないか」
「だからですわ!わたくし大人の方が好みなんですの、オホホホホ」
「ならばそこはお父様の方が〜とか言って欲しかったなぁ…」
(精神年齢前世と合わせてもう三十路なのだからこればかりはしかたがないのよお父様…)




