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#040「ルビーとガーネット」

「到着日が、ちょうど葉山さんの誕生日やとはねぇ」

「お待たせして、すみませんでした」

「待つだけの甲斐があるモンが届いたから、一向に構へんよ。――綺麗な赤色やわぁ」

「ルビーには、その燃えるような赤い輝きから、情熱、仁愛、威厳といった宝石言葉があります」

「光に透かすと、炎みたいやもんねぇ」

「指輪をすると、より美しく見えますね、茜さん」

「嫌やわぁ、葉山さん。どっかの国民的猫型ロボットみたいな、肉厚で太くて、おまけに右の中指にはペン胼胝かてある手ぇやのに」

「丸くて愛らしい、赤ちゃんのような手ですよ」

「もぅ。照れるから、それ以上は言わんといて。背中を叩かれて噎せたいんやったら、ナンボでも言うてえぇけど」

「思い出しただけでも気管支がイガイガしそうですから、この辺で留めておきますね」

「せやろ? それに、どっちかと言うたら、葉山さんのほうが綺麗な手ぇしてると思うわ」

「えっ、そうですか? 静脈が透けて骨張った、死神のような手ですけど」

「縁起でもないこと言いなや。白くてホッソリとした、しなやかな手やないの。羨ましいわぁ。――あっ、中指と薬指だけ反ってるんやねぇ。生まれつきなん?」

「えぇ。お婆さまからの隔世遺伝です」

「フゥン。――こうやって見比べてみると、ガーネットのほうが、一段濃い赤色なんやね。深みのある輝きやわ」

「そうでしょう? ちなみにですが、宝石言葉は、貞操、真実、友愛、忠実です」

「でも、明るいトコで見な、見間違えそうやわ。サイズも近いし」

「リングの裏に誕生日と名前のイニシャルが彫ってありますが、ほとんど同じですからねぇ」

「葉山さんが一月十七日、うちが七月十一日。イニシャルは、どっちもエーやもんね」

「ただ、僕の薬指に茜さんの指輪は入りませんから、僕が取り違えることは無さそうです」

「うちさえ間違えんかったら、大丈夫そうやね」

「三ヶ月後の式でも、気を付けてくださいね。結婚指輪は、どちらもダイヤモンドですから」

「あいだを取って、復活祭の日にしたんよね。十六日やったっけ?」

「そうです」

「結婚式には月給三ヶ月のダイヤモンドをって、よぅブライダル業界で宣伝してるけど、そんな高い指輪や無くてえぇからね」

「そうですか? でも一生の記念になるものですから、良質なものを用意しますね」

「期待しとくわ。でも、無理せんでえぇからね。――ダイヤモンドの宝石言葉は何なん?」

「清浄無垢です。傷に強い硬さと、曇りの無い輝きから連想されたのでしょうね」

「色のカラー、研磨のカット、重さのカラット。あれ? あと一つは何やったかなぁ」

「透明度のクラリティーですよ」

「あぁ、せやせや。カから始まる言葉を探してたわ」

「シーから始まる単語は、カタカナで書くとカ行、サ行、タ行に亘りますからねぇ。――さて。そろそろ、パーティーの支度をしましょう。きっと芳郎さんは、ご馳走に期待してるでしょうから、帰ってくる前に準備を済ませないと」

「フフッ。葉山さんの誕生日やのに、おかしな話やね。普通は、もてなされる側なんと違う?」

「いいえ。僕の誕生日だからこそ、僕がオモテナシするんですよ」

「年越しとお正月が済んだトコやのに、忙しないなぁ」

「これから、もっと忙しくなりますよ。そしてきっと、もっと面白くもなります」


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