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#023「年がら年中」

「みんな、それぞれに秋を満喫してるようね、芳郎くん」

「そうだな、茉莉。茜は、芸術の秋」

「イラストレーターとして、美的感性を研ぎ澄ませることは重要よね。日頃から審美眼を養っておかなきゃ、依頼に応えられないもの」

「そうそう。それから葵は、読書の秋」

「半分は執筆のためでしょうけど。そういえば、普段は手を伸ばさない古典文学を読み返す良い機会だって言ってたわね」

「何でも新しい物だけじゃ駄目だもんな。温故知新って奴だ」

「芳郎くんも好きよね、古典落語」

「歴史の勉強にもなるからな。一石二鳥、一挙両得」

「それから。そうねぇ。蒼太くんは一応、行楽の秋になるのかしら?」

「撮影で、あちこちの観光スポットに出掛けてるもんな」

「インテリ二枚目路線で売ってる、事務所の方針のせいね。秋口から春先に仕事が集中するから、この時期は忙しくて堪らないらしいけど」

「不当に過重労働をさせてるって、カトクの立ち入り検査がされないかなぁ」

「さっきのワイド・ショーで、大手広告会社が取り上げられてたわね」

「宇宙に、人類の新たな共和国を建設してるって話題もあったな」

「エス・エフ映画の世界が、現実になりつつあるのよね」

「でもさ。共通言語が英語である限り、日本人には不利だと思わないか?」

「結局は、そこよねぇ。――まだ、おなかの中に空きはあるかしら?」

「この芋洗坂芳郎の胃袋には、まだ若干の余裕がございます」

「よく知ってるわね。その落語家、いまはレギュラーから外れてるのに。――はい、おかわり」

「わぁい。――日々、動画で勉強してるからな。当意即妙な受け答えが出来ないと、噺家失格だし」

「研究熱心ね。近頃は、携帯端末で遊ぶ子が多い御時勢なのに」

「流行の玩具は嫌いだよ。持ってない人間を仲間外れにするところが、オイラは気に入らない」

「今の発言を玩具メーカーやゲームの制作会社が聞いたら、どういう反応をするかしらねぇ。――冷めてない? 温め直したほうが良いかしら」

「アンダー・ザ・キャットには、ちょうど良い」

「猫のシタ、ね。さっきの話の続きで言えば、芳郎くんは食欲の秋ね」

「天高く、馬肥ゆる秋。昨日のカツトジしかり、今日のフレンチ・トーストしかり、茉莉の料理は絶品だからな」

「カツトジのカツは高野豆腐で、そのフレンチ・トーストは、焼き麩とプリンで作ったんだけど、違和感は無いかしら?」

「えっ。昨日のアレ、肉が入ってなかったのか?」

「気付かなかったのなら、問題無さそうね。――それにしても、良い食べっぷりね。作り甲斐があるわ」

「茉莉は、もう良いのか?」

「芳郎くんと違って、アタシの場合は食べた分がすぐ脂肪になるから」

「フゥン。肥満体には見えないけどなぁ。むしろ、痩せてるような」

「太らないように気を付けてるのよ。それで食べ過ぎたら、運動するようにしてるの」

「スポーツの秋か。いや、季節は関係無いな。ん?」

「どうしたのよ?」

「冷静に考えてみたら、オイラも含めて、みんないつも通りだなぁと思って」


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