#024「呑気な昼下がり」
「大阪のオバチャンに角を付けたら、雷様ね」
「パンチ・パーマに虎柄のスパッツで、イナヅマ級の声量だな。しかも、面の皮が厚い」
「まぁ、誇張もあるし、偏見も交じってるけど、お店の人間相手にトコトンまで勉強させたり、ゴリ押しでオマケを付けさせたりするんは、嘘やないもんなぁ」
「そういえば、少し前の話で滋賀が出て来なかったんだけど、関西の中では、どういうポジションなの?」
「いつの、何の話だ?」
「うちのお父ちゃんが来る、ちょっと前にしてた話で、府民性と県民性の話よ。――そうやねぇ。京都の植民地ってトコやろうか」
「岐阜と愛知の関係に似てるな」
「根を辿ると戦国時代、いや、もっと前まで遡りそうね」
「でも、まず思い浮かぶんは、琵琶湖と鮒寿司のイメージと違う?」
「有能な武将を輩出してるんだがなぁ。石田三成、明智光秀。あと、浅井長政も滋賀だな」
「蒼太くんも好きよね、歴史ドラマ」
「男のロマンなんと違う? うちのお父ちゃんも、野球と同じくらい時代小説が好きやし」
「一緒にするな。俺は、そんな爺臭い人間じゃねぇ」
「はいはい。話を戻すけど、鮒寿司のイメージは強烈よね」
「グルメとしては、近江牛とか伊吹蕎麦とか、他にも色々あるんやけどねぇ」
「好まれるかどうかは、さておき。実際に見たときのインパクトが違うからな」
「クサヤしかり、キビヤックしかり、シュールストレミングしかり、魚を醗酵させると、臭いが強烈になるものね」
「見たときの衝撃が違うて言うけど、ホンマに見たことあるん、蕨くん?」
「あぁ。彦根城に行ったときに、差し入れられたんだ。出来れば食べるように勧められて、一口、食べてみたんだが」
「口に合わなかったのね」
「それは、撮影の前の話なん?」
「いや、終わったあとだ。撮影前だったら、仕事を投げ出して米原に引き返したかもしれない」
「お茶漬けにすると、臭いがマシになるそうだけど」
「再チャレンジしてみる?」
「生涯に一度で充分。もう、懲り懲りだ。――葉山は、まだ執筆中なんだろうか? キリの良いところまで書いてしまいたいとは言ってたが」
「降りて来ないわね。茜ちゃん。悪いけど、ちょっと呼んで来てくれないかしら」
「うちが行くん?」
「文句があるのか?」
「そうやって、すぐ喧嘩腰にならないの、蒼太くん。――何か、気が進まない理由でもあるの?」
「うぅん、それがなぁ。何や知らんけど、ここんトコ、葉山さんの様子が変わったような気ぃするんよ」
「はぁあ。……この鈍感娘は救いようが無いな、藤沢」
「……逆に、今まで何とも思ってなかったのが不思議なくらいよ」
「ちょっと、ちょっと。何を二人でボショボショ言うてるんよ。うちは、結構マジメに悩んでるんよ?」
「一生、悩んでろ。この、お気楽人間が」
「しょうがないから、ここはアタシが様子を見てくるわ」
「二人とも、そんなヤレヤレって顔せんといてよ」




