#013「先輩二人と同期」
「茶屋町。ちょっと良いか?」
「はい。何ですか、阿蘇さん」
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――この人は、先輩の阿蘇茂雄さん。九州出身。高校時代は野球部のエースやったんやて。膝の故障で引退してからは、激しいスポーツが出来へんようになってしもうたそうな。以上、飲み会武勇伝より。
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「先方から電話があって、もっと商品のロゴがクッキリと見えるようにしてくれ、とのことだ。ロゴの色を変えたほうが見やすいと思うんだが、変更できるか?」
「はい。やってみます」
「頼んだよ」
「はい」
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――うわぁ。この段階でロゴを弄れっちゅうんか。もう仕上げに近いトコまで進んでるから、修正は最小限でって言うたのに。
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「はぁ」
「リテイクですか、茶屋町さん」
「そうなのよ、若松くん。背景が青空だから、御社のブルー系のロゴは溶け込んでしまいますけど、色を変えなくて良いですかって、事前に伝えてたのに。もぅ」
「心中、お察しします」
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――この人は、うちと同期の若松英二くん。東北出身。色白でヒョロッとしてるトコから分かるように、インドア派。ほんで、ちょっぴりオタク系。グッズを集めたり、イベントに行ったりはせぇへんけど、情報収集には余念がない様子。質問すると、聞いてもないことまで説明する節があるから、ときどき困るんやけどね。
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「そんな溜息ばかり吐いてたら幸せが逃げるわよ、茜ちゃん?」
「あぁ、繭美さん」
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――この人は、阿蘇さんと同期の荻窪繭美さん。東京生まれ東京育ち、チャキチャキの江戸っ子なんやって。竹を割ったようなカラッとした性格で、サクサク仕事をこなす、うちの憧れ。
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「気の抜けた返事ね。まぁ、良いわ。金曜日に飲み会するんだけど、来れそう?」
「予定は空いてますけど、他のメンバーは?」
「阿蘇くんと若松くん。場所は、いつもの居酒屋だけど、どう?」
「そのメンバーなら、そこまで気を遣わなくて良さそうですね。わたしも行きます」
「決まりね。あたしが予約しておくから、急な予定が入ったら知らせてちょうだい」
「了解です」
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――何で大阪弁とちゃうんかって? 方言で喋ると阿蘇さんがえぇ顔せぇへんからなんよ。仕事が終われば、いつも通りなんやけどね。




