隣の缶コーヒー
その日は、暑かった。
夕方なのに、まだ日差しが強い。
制服の背中に汗が張りついて、最悪だった。
部活もない日だったのに、補習が長引いた。
私は駅のホームで、ぼんやり電車を待っていた。
JRの普通電車。
都会の電車ほど混まない。
でも、本数も多くない。
ホームには、私以外に数人しかいなかった。
電車が来た。
銀色の車体が、熱を持った空気を押しながら入ってくる。
ドアが開く。
中は冷房が効いていた。
私はすぐに、4人がけのボックス席を見つけた。
向かい合わせの席。
窓際が空いていたから、そこに座った。
向かいも空いている。
隣も空いている。
通路側も空いている。
ほとんど貸し切りみたいな車内だった。
私はカバンを膝に置いて、スマホを出した。
⸻
【LINE】
16:48 早乙女
電車に乗ったよー
16:48 真帆
おつー
16:49 早乙女
補習だるすぎた
16:49 真帆
生きて帰れ
16:49 早乙女
もう半分死んでる
16:50 真帆
それ高校生の語彙力なの?
⸻
私は少し笑った。
窓の外では、駅のホームがゆっくり後ろへ流れていく。
電車は空いていた。
向こうの車両に、おばあさんが一人。
反対側のロングシートに、サラリーマンが一人。
この車両には、ほとんど誰もいない。
だから、次の駅でその男が乗ってきた時。
私はすぐに気づいた。
男は、古いスーツを着ていた。
紺色なのか黒なのか分からない、色の抜けたスーツ。
白いシャツは少し黄ばんでいる。
髪は濡れているように見えた。
雨なんて降っていないのに。
手には、缶コーヒーを持っていた。
茶色い缶。
見たことのないデザイン。
昔の自販機にありそうな、古いロゴ。
男は車内を見回した。
席はいくらでも空いている。
なのに、まっすぐ私の方へ来た。
嫌な予感がした。
人間の勘は、こういう時だけ有能ぶる。
普段のテスト前にも働いてほしい。
男は、私の横で止まった。
そして、何も言わずに。
私の隣へ座った。
ボックス席の、同じ並び。
私は窓際。
男は通路側。
逃げるには、男の前を通らないといけない。
向かいの席は空いているのに。
他の席も空いているのに。
わざわざ、隣。
私はスマホを見るふりをした。
男は、膝の上に缶コーヒーを置いていた。
プルタブは開いていない。
冷たいのか、缶の表面に水滴がついていた。
でも、変だった。
車内は冷房が効いているとはいえ、そこまで冷えていない。
なのに缶から、白い湯気みたいなものが出ている。
冷気だった。
⸻
【LINE】
16:57 早乙女
変な人隣座ってきた
16:57 真帆
席空いてないの?
16:58 早乙女
めちゃ空いてる
16:58 真帆
移動しな
16:58 早乙女
隣にいるから出にくいよ
16:59 真帆
やばいやつ?
16:59 早乙女
分からん
雰囲気が無理
⸻
男が、ふっと笑った。
私のスマホを見ていたわけではない。
視線は窓の外だった。
でも、タイミングが嫌だった。
「まだ、そういうのやってるんだ」
私は固まった。
男の声は低かった。
かすれていて、喉に水が溜まっているみたいな声だった。
私は返事をしなかった。
知らない人に話しかけられた時、無視するのが正解なのか、軽く返すのが正解なのか。
誰も学校で教えてくれない。
二次関数より先に教えてほしい。
男は、缶コーヒーを指でなぞった。
「友達に言うんだろ」
私はスマホを握りしめた。
「……何をですか」
自分でも驚くくらい、小さい声だった。
男は、こちらを見なかった。
「今日も、笑うんだろ」
「人違いです」
そう言うと、男は初めて私を見た。
目が、変だった。
黒目が大きい。
というより、目の中が暗い。
光が入っていない。
「人違い?」
男はゆっくり繰り返した。
「また、それを言うんだね」
私は、何も言えなかった。
⸻
【LINE】
17:01 早乙女
話しかけられた
17:01 真帆
何て?
17:01 早乙女
友達に言うんだろって
17:02 真帆
きも
次の駅で降りな
17:02 早乙女
次まであと5分
17:03 真帆
通話する?
17:03 早乙女
イヤホン出すの怖い
17:03 真帆
画面こっち向けたままにして
ずっと送って
⸻
電車は田んぼの間を走っていた。
夕日が窓に反射して、車内がオレンジ色になる。
男の横顔も、その光に照らされた。
でも、男の顔だけ少し暗かった。
影が濃い。
夕日が当たっているのに、暗い。
男は缶コーヒーを私の方へ少し押した。
「飲む?」
「いりません」
「昔は飲んだのに」
「飲んでません」
「甘いやつ、好きだったろ」
「違います」
「嘘ばっかり」
男の声が、少しだけ優しくなった。
それが余計に気持ち悪かった。
怒っている方がまだ分かる。
優しく知らない記憶を押しつけてくるのが、一番無理だった。
「本当に人違いです」
私ははっきり言った。
男は、しばらく私を見た。
それから、にこっと笑った。
笑ったのに、目は暗いままだった。
「じゃあ、名前は?」
「言いません」
「香奈じゃないの?」
知らない名前だった。
私は首を振った。
「違います」
「でも、制服が同じだ」
「高校なんて、似た制服あります」
「髪の長さも」
「違います」
「声も」
「違います」
「降りる駅も」
私は、息を止めた。
降りる駅なんて言っていない。
男は、窓の外を見た。
「次じゃないもんな」
車内アナウンスが流れた。
『次は、南川原。南川原です』
私の降りる駅は、その二つ先だった。
男は、笑った。
「まだ降りないんだろ?」
⸻
【LINE】
17:06 早乙女
名前聞かれた
香奈じゃないのって言われた
17:06 真帆
誰それ
17:07 早乙女
知らない
17:07 真帆
次で降りて
乗り換えた方がいい
17:07 早乙女
降りようかな
17:08 真帆
絶対そうして
⸻
電車が次の駅に近づいた。
私はカバンを持ち直した。
立つなら今しかない。
男の前を通らないといけない。
でも、通路側に座っている男は、膝を少し前に出していた。
まるで、通せんぼするみたいに。
私は勇気を出して言った。
「すみません。降ります」
男は動かなかった。
「ここじゃないよ」
「降ります」
「香奈は、ここでは降りない」
「私は香奈じゃありません」
「じゃあ、どうして同じ席に座ったの」
その言葉に、ぞくっとした。
同じ席。
私はたまたま座っただけだ。
でも、男の言い方は違った。
まるで、この席には意味があるみたいだった。
電車が駅に停まった。
ドアが開く音。
私は立ち上がった。
その瞬間、男が缶コーヒーを持ち上げた。
「忘れ物」
「いりません」
「昔、忘れていった」
「知りません」
「ずっと持ってた」
男の指が、缶の表面を強く握っていた。
水滴が垂れる。
それが床に落ちた。
ぽた。
水じゃなかった。
黒い液体だった。
コーヒーの匂いがした。
私は男の前を通ろうとした。
すると、男が低い声で言った。
「また置いてくのか」
足が止まった。
自分の意思じゃないみたいに。
ドアの閉まるチャイムが鳴った。
私は焦って通路へ出ようとした。
でも、その瞬間。
車内アナウンスが変わった。
『まもなく、返事待ち前。返事待ち前です』
そんな駅はない。
ドアが閉まった。
電車が動き出した。
ホームが遠ざかっていく。
私は降りられなかった。
⸻
【LINE】
17:10 早乙女
降りられなかった
17:10 真帆
なんで!?
17:10 早乙女
変なアナウンスがあって
17:11 真帆
何それ
17:11 早乙女
返事待ち前って
17:11 真帆
そんな駅ない
17:12 早乙女
知ってる
17:12 真帆
車掌のとこ行けない?
17:12 早乙女
男が通路側
17:13 真帆
大声出して
17:13 早乙女
他の人ほぼいない
⸻
向かいのロングシートにいたサラリーマンは、いつの間にかいなかった。
おばあさんもいない。
車両には、私と男だけだった。
いや。
奥の方に、一人だけいた。
制服を着た女の人。
私と同じ学校の制服に似ていた。
窓に映っているだけかと思った。
でも違う。
反対側の端の席に座っている。
長い髪。
うつむいた顔。
手には、缶コーヒー。
私が目を凝らすと、その女の人は、すっと立った。
そして、隣の車両へ移っていった。
「香奈」
男がつぶやいた。
私は男を見た。
男の顔が、泣きそうに歪んでいた。
「今、見えたよな」
「見てません」
嘘だった。
男は笑った。
「見えたんだ」
「知りません」
「やっぱり、君は知ってる」
「知らないです」
「ずっと、返事を待ってるんだ」
「私に言われても困ります」
男は缶コーヒーを見た。
「これ、あの日のままなんだよ」
私は何も言わなかった。
「好きな子に渡すのって、変かな」
返事をしてはいけない気がした。
でも、男は続けた。
「夏だった。暑くてさ。あの子、いつも駅の自販機で甘い缶コーヒー買ってた」
男の声は、どんどん近くなる。
体は動いていないのに、声だけが耳元に寄ってくる。
「だから、俺も買った」
「返事、聞こうと思って」
「でも、あの子、友達と笑ってた」
「俺のこと、気持ち悪いって」
男が私を見た。
「君も、そう思った?」
私は答えられなかった。
思った。
最初から思っていた。
でも、それを言ったら何かが終わる気がした。
男は小さく笑った。
「正直でいいよ」
言っていないのに。
男は分かっているみたいだった。
⸻
【LINE】
17:17 早乙女
昔の話してる
17:17 真帆
何の
17:18 早乙女
好きな子に缶コーヒー渡そうとしたとか
17:18 真帆
やばいよ絶対
関わらないで
17:18 早乙女
同じ制服の女の人見えた
17:19 真帆
え?
17:19 早乙女
たぶん香奈って人
17:19 真帆
早乙女
17:20 真帆
今乗ってる電車
どこ走ってる?
17:20 早乙女
分からん
17:20 真帆
位置情報
線路から外れてる
17:21 早乙女
は?
17:21 真帆
地図上だと
川の上にいる
⸻
窓の外を見た。
田んぼは消えていた。
代わりに、黒い水面が広がっていた。
川だった。
でも、電車が橋を渡っている音はしない。
水の上を、滑るように走っている。
夕日はもう沈みかけていた。
車内だけが、妙に明るい。
男は、缶コーヒーのプルタブに指をかけた。
「開けてもいい?」
「私に聞かないでください」
「前もそう言った」
「違います」
「君はいつも違うって言う」
「私は違う人です」
「じゃあ、返事だけして」
「何の」
「受け取ってくれるか」
男は缶コーヒーを差し出した。
「受け取ってくれたら、降りられるよ」
それは、脅しのようにも聞こえた。
お願いのようにも聞こえた。
私は缶を見た。
古いデザイン。
表面の水滴。
指の跡。
底の方が少しへこんでいる。
受け取ったら、終わりな気がした。
でも、受け取らなくても終わる気がした。
スマホが震えた。
⸻
【LINE】
17:24 真帆
絶対受け取るな
17:24 早乙女
なんで分かるの
17:25 真帆
今調べた
17:25 真帆
その路線
昔噂があって
17:25 早乙女
何
17:26 真帆
失恋した男が
缶コーヒー持ったまま
いなくなったって
17:26 真帆
詳しくは分からん
でもその男
告白する相手をずっと探してるって
17:27 真帆
受け取った子のところに
しばらく出るって
⸻
しばらく出る。
その言葉が、一番嫌だった。
一回で終わらない。
今日だけじゃない。
男は、私のスマホを見ていない。
でも、また笑った。
「ひどい言われようだな」
私は声が出なかった。
「霊とか、噂とか」
男は缶コーヒーを胸の前に戻した。
「俺だって、好きでこうしてるわけじゃない」
「……じゃあ、やめればいいじゃないですか」
やっと、それだけ言えた。
男は、目を丸くした。
本当に意外そうだった。
「やめる?」
「はい」
「待ってるだけなのに」
「でも、違う人に話しかけてます」
「似てるから」
「似てても違います」
「制服が」
「違います」
「髪が」
「違います」
「声が」
「違います」
「気持ち悪いって思っただろ」
私は黙った。
男の顔が、少し歪んだ。
「ほら」
「それは」
言いかけて、止まった。
どう言えばいい。
怖いから怖い。
気持ち悪いから気持ち悪い。
でも、それをそのまま言ったら、この人は。
この何かは。
きっと、ずっとここにいる。
私は深く息を吸った。
「あなたのことを知りません」
男が固まった。
「だから、私は返事できません」
「……返事」
「香奈さんに言ってください」
「香奈はもういない」
「でも、私じゃありません」
男は、缶コーヒーを見つめた。
その手が震えていた。
人間みたいに。
「じゃあ、これは」
「私には渡さないでください」
男は俯いた。
電車の揺れが、急に小さくなった。
窓の外の川が消えた。
代わりに、夕方の住宅街が戻っていた。
車内アナウンスが流れる。
『次は、東町。東町です』
私の降りる駅の、ひとつ前だった。
男はまだ隣に座っていた。
でも、さっきより少し遠く感じた。
物理的な距離は変わっていないのに。
「香奈も、そう言った」
男がぽつりと言った。
「私は違うって」
私は何も言わなかった。
男は、笑った。
今度の笑い方は、少しだけ普通だった。
「そうだよな」
缶コーヒーを膝に置く。
そして、ぼそっと言った。
「みんな違うんだよな」
電車が駅に止まった。
ドアが開く。
私は立ち上がった。
今度は、男が足を引いた。
通れる。
私は通路へ出た。
でも、ドアへ向かう前に、男が言った。
「早乙女さん」
私は振り返った。
名前。
言っていない。
男は、缶コーヒーを持ったまま、こちらを見ていた。
「次に乗る時は、窓際に座らない方がいい」
「……どうして」
男は、ゆっくり首を傾けた。
「隣が空くから」
ドアのチャイムが鳴った。
私は逃げるようにホームへ降りた。
ドアが閉まる。
電車が動き出す。
窓の向こう。
さっきまで私が座っていた席に、男がいる。
その向かいに、制服の女の人が座っていた。
長い髪。
うつむいた顔。
膝の上には、缶コーヒー。
男は彼女を見ていない。
彼女も男を見ていない。
二人は向かい合ったまま、動かなかった。
電車は夕日の中へ消えていった。
⸻
【LINE】
17:34 早乙女
降りた
17:34 真帆
生きてる!?
17:34 早乙女
生きてる
17:35 真帆
よかった
ほんとよかった
17:35 早乙女
男まだ乗ってた
17:36 真帆
もう乗らんといてその電車
17:36 早乙女
無理だよ。電車で通ってるし
帰れなくなっちゃう
17:37 真帆
次の電車にして
人多い車両乗って
17:37 早乙女
そうする
⸻
私は次の電車を待った。
ホームには、少しずつ人が増えてきた。
普通の高校生。
会社員。
買い物帰りのおばさん。
普通の人たちがいるだけで、泣きそうなくらい安心した。
駅の自販機の前に、古い缶コーヒーは売っていなかった。
当たり前だ。
あんなデザイン、見たことがない。
次の電車に乗って、私は無事に家へ帰った。
その日は、親にも何も言えなかった。
言ったところで、疲れてるんじゃない、で終わる。
高校生の怪談体験なんて、だいたい寝不足かスマホの見すぎにされる。
便利な処理である。腹は立つ。
夜、制服を脱いで、カバンの中身を出した。
教科書。
筆箱。
プリント。
イヤホン。
その奥に。
缶コーヒーが入っていた。
茶色い缶。
古いロゴ。
表面には、びっしり水滴がついていた。
私は叫びそうになって、口を押さえた。
触っていない。
受け取っていない。
なのに、カバンの中にある。
スマホが震えた。
真帆からだった。
⸻
【LINE】
21:12 真帆
大丈夫?
21:12 早乙女
大丈夫じゃない
21:13 真帆
何かあった?
21:13 早乙女
缶コーヒーがカバンに入ってた
21:13 真帆
は?
21:14 早乙女
受け取ってないのに
21:14 真帆
捨てて
21:14 早乙女
触りたくない
21:15 真帆
親呼んで
21:15 早乙女
言えない
21:16 真帆
じゃあ袋に入れて
外に出して
⸻
私はビニール袋を二重にした。
缶コーヒーを直接触らないように、タオルでつかむ。
冷たかった。
冷蔵庫から出したばかりみたいに。
缶の底に、何か貼りついていた。
小さな紙。
古い切符だった。
硬く、黄ばんでいる。
そこには、薄い文字でこう書かれていた。
片道
早乙女
駅名のところは、かすれて読めない。
ただ、降車駅の欄だけは読めた。
返事待ち前
私はその切符も一緒に袋へ入れた。
玄関の外へ出そうとした。
その時。
缶の中で、何かが揺れた。
ちゃぽん。
コーヒーが入っている音。
未開封なのに。
プルタブは開いていないのに。
中から、小さく声がした気がした。
「違うんだよな」
私は袋ごと靴箱の上に置いた。
それ以上、動かせなかった。
⸻
次の日。
袋はなくなっていた。
家族は誰も知らないと言った。
ゴミの日でもない。
玄関の鍵も閉まっていた。
でも、靴箱の上には、輪っか状の水滴だけが残っていた。
缶コーヒーの底の形。
その日の登校は、母に車で送ってもらった。
理由は腹痛ということにした。
嘘ではない。
胃はずっと痛かった。
駅には近づきたくなかった。
でも、放課後。
スマホに通知が来た。
知らない番号からのSMSだった。
本文は、短かった。
⸻
【SMS】
16:48
今日は窓際じゃないんだね
⸻
私はすぐ削除した。
ブロックもした。
でも、その夜。
真帆からLINEが来た。
⸻
【LINE】
22:03 真帆
早乙女
22:03 早乙女
なに
22:04 真帆
今日さ
22:04 真帆
駅で缶コーヒー持った男見た気がする
22:04 早乙女
どこの駅
22:05 真帆
うちらの学校の最寄り
22:05 真帆
でも変だった
22:05 早乙女
何が
22:06 真帆
男の人
ホームの向こう側にいたのに
22:06 真帆
目が合った気がした
22:07 真帆
それでさ
22:07 早乙女
うん
22:08 真帆
缶コーヒー
二本持ってた
⸻
それを読んでから、私はJRに乗る時、絶対にボックス席には座らない。
窓際にも座らない。
缶コーヒーも買わない。
自販機の前で、茶色い缶を見るだけで息が詰まる。
あの男が本当に霊だったのか。
失恋して、返事を待ったまま消えた人だったのか。
私は知らない。
知りたくもない。
ただ、たまに電車で空いたボックス席を見ると、思う。
向かい合う四人分の席。
そのうち三つが空いている時。
残り一つに座るのは。
本当に、生きている人だけなんだろうか。




