帝都防衛戦(後編)
「貴様ら……! 貴様らのせいで、我が悲願が……!」
「即戦力しか取らないなんて考え、今のご時世じゃ割りに合わないぜ」
「そうだね。 次の世代の為に新たな冒険者を育成するのが重要な時世だし」
「五月蠅い! 弱者を育成など、そんな甘い考えなどあってはならん!! ましてや女などに冒険者など……!」
「うわぁ、これはどうしようもないね。 聞いただけで吐き気がするよ」
帝国のギルド派の残り半分の人数が正面に攻めて来たのだが、その多くが各ギルドのギルマスだったりする。
しかも、即戦力主義の前皇帝の考えを盲信している上で、これも前皇帝の考えでもある『冒険者は男だけの職業』と主張している。
アルマはそれを聞いただけでも吐き気を催し、ケリンやシルスはそれを真っ向から否定する。
「自分達の都合のいいものしか聞く耳持たない……か」
「とにかく話を聞かない相手なので、思い切ってやっちゃいましょうか」
「やってみろおぉぉぉぉ!!」
エレノアやセリアもギルド派の主張に呆れつつ、全力でやろうと決意。
それに怒りを露にしたギルド派が、一斉に襲撃してくる。
「ケリン君!」
「ああ。 アルマも頼むぞ。 アイシア、行くぞ」
「はいっ!」
一斉に襲撃してきたギルド派にアルマがケリンに声を掛ける。
ケリンもアルマに目配せして、アイシア共にギルド派の集団に向かう。
「トッシュ!」
「ああ、任せろ、エレノアお嬢!」
エレノアのギルドからも【戦士】のトッシュがケリン達の援護に回る。
セリアも同様にケリン達と一緒に斬りかかる。
「ぐわあっ!!」
「がはっ!?」
「ぎゃあぁぁぁ!! う、腕があぁぁ!!」
ケリンは、ルキアから貰ったドラゴンの鱗で作られた剣を振って、ギルド派の両腕を斬り落としていく。
アイシアも同じくドラゴンの鱗で作られた槍で相手を貫いていき、トッシュやセリアも負けじとギルド派を次々と斬っていく。
「よし! 【フレイム】!!」
「な、無詠唱……ぐわあぁぁぁ!!」
そこにアルマが無詠唱の【フレイム】を使い、ギルド派の残りを焼き尽くしていく。
「『癒しの雨よ! 彼の者達を癒せ』!! 行きます、【ヒールレイン】!!」
前線を張る四人にルーデシアも上級回復魔法の【ヒールレイン】で、味方を癒していく。
この雨は、光の雨なので浴びても濡れない。
「すげぇな、リーベル公国のギルドの面子は」
「無詠唱魔法を使う魔術師やらスピードに乗せて斬っていく剣士とか……。 規格外もいいとこだ」
トッシュやエレノアは多少苦笑はするが、今はこの戦力はありがたい。
エレノア自身も生産した爆弾で相手を爆死させていく。
足止めも兼ねた効果を持つので、この爆弾はかなり有用である。
そうしているうちに、ギルド派の数は一気に減っていった。
「もうすぐだよ! 一気に行こう!!」
「「「おおっ!!」」」
アルマの激に、呼応するケリン達。
シルスの忍者のスキルやケリンの技、アイシアの槍捌きで一気にギルド派のメンバーを葬っていく。
「さて、止めだよ! 『冥界の力よ、敵を飲み込め』」
そして、アルマが再び闇の魔法の詠唱を始める。
ケリン達がいるおかげですぐに詠唱が終わった。
そして、その魔法は再び発動する。
「【ファントムハザード】!!」
「う、うわぁぁぁ!」
「ば、馬鹿なぁぁぁぁ!!」
「く、くそうぉぉぉ!!」
「あっ!!」
闇の上級魔法の【ファントムハザード】によってほぼ全てのギルド派のメンバーが闇の沼に引きずり込まれていった。
しかし、アルマは一人が転移アイテムで逃走したのを見た。
「くっ、一人逃がしたよ……!」
「とはいえ、これでギルド派は壊滅したはずだ」
「そうだね。 今は割り切って、皇女様に報告をしよう……」
一人逃げられたのを悔しがるアルマだが、エレノアが諫める。
ともかく、帝国からギルド派が一掃できたのは大きいだろう。
アルマも割り切って、まずは皇女たちに報告をすることを優先する。
「終わった……のか?」
「みたいですね。 一人逃げられたようですが」
「アルマさんがその件も報告されるみたいですし、私も『スチュワート』のギルマスとして同席しますよ」
静けさが訪れた帝都に、ケリンとアイシア、セリアがそんな話をする。
ひとまず終わった。
しかし、一人逃げられたのが厄介だ。
「報告を聞きました。 一人逃げられたようですが、少なくとも帝国ではギルド派の一掃に成功しました」
メルア皇女がケリン達の元に行き、そう言ってくる。
その瞬間、多くの冒険者が勝鬨を上げる。
「皆様。 帝国をギルド派から救っていただき感謝します。 報酬は各国や連盟を通じてお渡ししたいと思います。 お疲れ様でした」
メルア皇女のスピーチによって、帝国内におけるギルド派との戦いは、終わりを迎えたようだ。
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