千尋とシャワーと謎の金髪男
俺は委員長にトレッドミルの使い方を教わって、マシンの上でウォーキングを始めた。
委員長は道場の方へ行ってくると言い、
「何かあったら来い。先に帰るんじゃないぞ。」
と、俺の頭をくしゃっと撫でて出て行った。
・・・委員長まで過保護なんだから。
とりあえず、俺はiPodで音楽を聴きながら歩いた。
「ふぅ。」
俺は一時間ほど歩いて、マシンを止めた。
汗かいた。いい運動になったわぁ。
委員長はまだ道場にいるみたい。
どうしようかな?
先に帰るなって言われてるから、シャワーだけ浴びてこようっと。
俺は1人、トレーニングルームを出て歩いてった。
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とりあえずスマホはロッカーに入れたまま、着替えだけ持ってシャワールームに入る。
着替えを棚に置いて、タオルを一枚取った。
シャワールームは空いていた。
1人だけ、誰か奥でシャワーを浴びてるみたいだ。
俺は真反対のシャワーブースを使うことにした。
Tシャツとハーパンを脱いで、広めのシャワーブースに入って磨りガラスのドアを閉めた。
ドア横のフックにタオルを引っ掛ける。
蛇口を捻って、熱いシャワーを浴びた。
汗かいたから、超気持ちいい。ボディソープで体を洗う。
もうここでお風呂済ませちゃえ。
フンフンと鼻歌を歌う。ちなみにちょっとだけ音痴だ。
ときどき音が外れてるんだって。小林に「山田の鼻歌は時々、音程が家出してる」って言われたなぁ。
なんてことを思い出してると・・・
バンッと磨りガラスのドアが外から開けられた。
「・・・その不愉快な鼻歌を止めろ。」
地を這うようなというのは、この事だ。
背後からすっげぇ低くて、不機嫌な声で言われた。
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「ひっ!」
俺は凍り付いた。
なにせ真っ裸だし、相手めっちゃ怒ってるみたいだし。
「す、すみません。」
とりあえず謝っとこ。鼻歌もやめた。
だが、一向に背後の気配が去らない。
ーーーな、なに!?
「顔を見せなさい。」
「えっ!?なんで?」
「不快な思いをさせた生徒を覚えておく為です。」
ーーーえええ!?なにそれ?ひどくない!?
俺は恐る恐る顔だけ振り向いた。
「!!」
相手は目を見開いて俺を見た。
金髪に緑の瞳の外人みたいな顔した奴だ。ちょっと冷たい雰囲気してる。
ロシアのお貴族さまみたい。
「・・・あの?」
「クラスと名前は?」
「えっ?」
ーーーなに?俺、音痴のせいで仕返しされんの!?
「あの。もう出て行くので・・・すみませんでしたッ!」
俺はシャワーを止め、後ろ手にタオルを取って女子みたいに裸を隠した。
ど、どいてくんないかな?
そいつは立ち塞がるように、ドアのとこに立ってる。腰にタオル巻いた裸で。
うお。こいつもムキムキだな。
委員長みたいなガチムチじゃなく、無駄の無い細マッチョって感じ。
「し、失礼しま~す。」
ちょっと怖いけど、俺はそいつの横をすり抜けようとして・・・
「うわっ!?」
ガシっと両腕を掴まれた。
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「な、なに!?」
「僕を知らないんですか?」
「えっ?どっかで会った?初対面でしょ!?」
そいつは怪訝そうな顔で俺を見てる。
ハタと俺は思い出す。
入学初日に、保健室で俺の寝込みを襲った奴は
ーーー金髪だった。
ゾワワっと鳥肌が立つ。
「このっ!離せよっ!」
俺は暴れるが、強い力で掴まれ引き剥がせない。
「何なんだよ!あんた!!離せっ!」
「大人しくしなさい。あなた、名前は?」
体に巻いたタオルがパサっと落ちた。
俺の体を見てそいつが息を呑み、拘束する力が緩んだ。
ーーー今だ!!
「死ね!変態!!」
「うぐッッ!!」
俺はそいつの股間をタオルの上から、思い切り蹴った。
うずくまってる隙に、落ちたタオルをひっ掴んで急いで逃げ出した。




