千尋とチャラ男と腐男子
俺のクラスは1-Bだ。
家柄だとか成績だとか、あと容姿(これ謎なんだけど)でクラス分けされていて、上から順に
S、A、B、C、Dとなっている。
俺は真ん中のB。(高槻先輩はSだって。すごいよね!)
家柄的にはSらしいけど(何気に有栖川父もすげぇな)入院中のブランクがあるので、Bクラスになった。
ーーーガラッ
「お前ら!静かにしろ!」
先に要先生が教室に入った。
「キャー先生カッコいい」って、甲高い声が聞こえてきたけど・・・ここ、男子校だよね?
有栖川入ってこい、と呼ばれて俺も教室に入る。
クラス中の目が一斉に俺を見る。
ーーーひええ。緊張する!
「有栖川は事故にあって入院していた為、遅れて入学することになった。」
「有栖川千尋です。よろしくお願いします。」
こんなときの挨拶はシンプルに。
俺は軽くお辞儀をする。
「俺のお気に入りだ。お前ら、手ぇ出すんじゃねえぞ。」
ーーーいつの間にお気に入りに!?
遅れて入学した俺がイジメられないように気遣ってくれてんのかな?
意外と良い先生なのかも。
少しざわつく中、指示された席に座る。
窓際の後ろから3番目だ。
クイっと後ろの席の奴に、襟首を引っ張られた。
「なに?」
振り返れば、ほとんど金の茶髪にピアスの派手な顔立ちのイケメン男子だ。
コイツも茶色いカラコンしてる。
何なんだ。このクラスは。教師も生徒もホストかよ。
「アリスちゃんってこんな可愛い子だったんだ。ほんとは俺と同室になる予定だったんだよ。知ってる?」
「あ!」
有栖川父が断固反対した同室者って・・・!
「アリスちゃん。か~わい~。いや~惜しかったなぁ。」
ーーーなるほど。チャラいわ。
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休憩時間、チャラ男が俺に質問してきた。チャラ男は、美村晶帆という名前だ。
「アリスちゃんって眠り姫なんでしょ?」
「は?」
「3年、意識不明だったって聞いたよ~。眠り姫だって皆噂してたのよ。」
眠り姫って。3年寝太郎じゃないのか。
「はぁ。まあ。」
他の生徒は聞き耳を立てて、俺と美村の会話を聞いてるみたい。
確かに、3年も意識不明だった奴なんて、接しにくいよなぁ。
「どんな感じ?」
美村は遠慮なく聞いてくる。
見た目チャラいけど、この手の無遠慮はキライじゃない。
「一回、死んだなって感じ。」
「アハ。そっか~。」
美村と雑談してたら、1人の生徒が寄ってきた。
「美村くん。ちょっと無神経すぎない?有栖川くんは大変だったんだよ。」
「え~。園ちゃん。」
「や、俺は全然気にしてないし。むしろ、気遣われる方が遠慮しちゃうっていうか。」
コイツは園田聡といって、背は俺より低い。(やった!)
目がクリクリして、茶色いゆるふわな髪型の女の子みたいな生徒だ。
「ってゆって、園ちゃん、アリスちゃんとおしゃべりしたかったんでしょ?」
「う・・・。」
ーーーあ。そうなの?
「アリスちゃん、可愛いからさぁ。みんな話しかけんの。ためらってんのよ~。」
「可愛いとか言うなよ。俺、全然普通だし。普通に話しかけてくれたら、嬉しいよ。」
俺は園田に笑いかけた。
「む・・無自覚受けだ!いい!先月来たアイツとは大違いだ!」
「あいつ?」
美村が、あちゃーみたいな顔をした。
「ツボっちゃったね~。アリスちゃん。園ちゃんは腐男子だからね。」
「普段死?なにそれ?」
「アリスちゃんみたいなの見て、萌え死にしちゃう~みたいな?」
「燃え死に?なにそれ恐い。」
「やめてよ。美村くん。僕なんて無垢な妄想で楽しんでるだけだよ。リアルに美少年を入れ食いしてる君とは違うんだから!」
「美少年を入れ食い!?なにそれも恐い!」
全然話についていけないまま、チャイムが鳴って授業が始まった。
ーーージェネレーションギャップか。言ってる意味が分からん。