落ち着いて考えてみるとこっちのがいいのかな。
ジャー・・
「なかなか清潔にしておるではないか」
「はい、右手あげてー」
「わひゃひゃひゃ!くすぐったい!!」
高いところからぬるいシャワーが落ちている。
そこで、ベラル執事とベランじいさん親子に囲まれながら、身体を洗われていた。
「土蜘蛛は、いつも薄汚れた格好をしてますしね。もっと垢まみれかと思ったのですが」
「流石に、神子の扱いは特別だったということかの」
「わひゃひゃひゃ!やめて!もう無理だよ!」
「終わりましたよ。次からはメイドにやらせるか…」
「まだ幼いし、それでいいんじゃないかの」
ぬ。メイドに身体を洗われるとか。ナニソレ俺得過ぎる!
「ちょっと、動きが止まっておるの。なんじゃ、子供の癖に色気付いておるのか?」
「ふむ。教育上問題ですかな。これは、明日以降も私の仕事ですかね」
「えー…」
呆れた顔で見られた。
風呂上がり、清潔な白い木綿の上下を着させられる。上はガバガバの長袖Tシャツみたいな。下は短パンだね。昔の運動着みたい。
さらに、太股に余裕がある黒い長ズボンを渡されて履く。ちょっと、ガバガバすぎねー?
すると、ベラル執事さんが、二の腕と腰、その後膝下のところで、革紐で結んで調整してくれた。
なるほど。効率的なことだね。
「グラミのお下がりかの?」
「そうですよ。直ぐには用意できませんから」
「グラミ?」
「私の子供ですよ。6歳になります」
ふーん。。執事さんて20そこそこに見えるんだけどな。16で結婚すればそんなもんか?てか、ベラン→ベラル→グラミ・・ベラミじゃないの?
外に出ると、 ミレア“お母さん”が、待っていた。
「まあまあまあ!綺麗な髪ね!キラキラしてるわ!」
そう言って少し顔を上気させながら近寄ってきた。
「もう、ぎゅーってしちゃうから!」
ぎゅー
よし、ふわふにゃ展開!
ってなると思ったのに。生地は厚いし、ガーターベルトとブラも固いし。
ぶっちゃけ痛いだけとか…。
まぁ、いいにおいだけど。バラと甘いにおいだ。なんか、中高生の頃を思い出すねー。美少女って、なんでいいにおいすんだろうね。
そうやってくんかくんかしていたら、“お父様”と“お姉様”もやって来た。
「私は、庁舎に申請を出しに行く。ついでに、その子の保護申請も出そう」
「この子も一緒に行くのかしら?」
そう言って、身体を離す。
ふっ、苦しかったぜ…てか、過呼吸気味とか。無心に吸い込みすぎて苦しい…。
「そうだな。姿形を登録するからな」
「私も行きますわ!大人だらけの所に一人で置いておけませんもの!」
そしてまた、ひしっと、抱き抱えられる。
「わ、私も!私も行く!お姉様だから!」
「あらあら!ミレニエットが、自分から外に出たいだなんて!お姉様ですものね!偉いわ!」
「ふむ。では、庁舎に行くのは明日にするか」
パンパンッ
大きく手を叩く。
すると、奥からタタタッと、メイドさんが一人出てくる。
「御呼びでしょうか」
「少し早いが、食事の準備を。前菜と軽くつまめるものだけでよい。後は、出来上がり次第出してくれ」
「畏まりました」
メイドさんは、すぐまた奥へ走っていく。
ぐー…
「おなかすいた…」
「うふふ!さぁ。食堂に行きましょう!今日の前菜は何かしら!」
「私も!私も行く!」
「そうか。今日は、姉として、立派な食べ方を見せてくれるのかな?」
「ぅう…お父様のイジワル!」
朗らかに食堂へ移動する。
あれ?俺、今朝方殺されかけて、昼頃死にかけて、それ、この目の前の人が全て悪いんだよね…?
村の景色とか、村人の視線とか、真・お父様(らしき人)のぬくもりとか、まだ残ってはいる。
でもまぁ、生き残るためだし、よく知らない人ばっかだし。今目の前の人達の方が名前も知ってるし。
お父様はああいう人。でも、家族愛はしっかりしてる人。お母様は美少女。お姉様は可愛らしい幼女。
とりあえず、それでいいか。
なんて。甘い考えをしていたときが僕にもありました。
自分の神子としての価値とか、よくわかっていなかったんだから、しょうがないよね?