状況開始
「これは由々しき問題やで、先生ぇ!!」
台所で皆の食器を洗いながら、彩音が隣にいる蒼崎に言い放った。
「何が由々しき問題なのよ。結局彩音達の勘違いだったんでしょう。それなのに話も聞かずにマナと一緒にあんな一方的にやっちゃって、先生はそっちの方が由々しき問題だと思うけどな」
「あっ、あれはどう見たってあいつの言い訳にしか聞こえんかったし。あと少しで葵ちゃんがあいつの毒牙の餌食になっとったんや」
「亮くんの話も聞いたけど、たまたま引っ掛かった帯が緩んで解けただけだと思うけどな。先生も浴衣の帯した事あるけど、結構絞めたつもりで、解けたりするからね」
「先生ぇ、なんであいつの肩もつようなマネするんやぁ。ひとつ屋根の下で男女が暮らせば絶対何かおきるもんやろう」
「何かが起きる前提で話進めてない、彩音」
「うちだって、あいつを追い出してっとまで言うつもりはないで。ただ、少しは警戒した方がいいとおもったんや、例えば部屋は2人共同にしてや、もちろん安全を考えればお風呂もみんな一緒って事はどうかや? もちろん女子同士やで」
饒舌にしゃべりながら、彩音の口元が緩みだす。いくらそれらしい建前を述べても、本音が顔に出てしまっている彩音を、蒼崎は本気で相手にする気はなかった。
「先生はどっちかって言うと、あたなの方に由々しき問題があるきがするわよ」
「なんでぇ! 先生ぇ。うちのどこに問題があるって言うんやぁ」
「ほら! 彩音手が止まってるわよ。ちゃんと手を動かして水が勿体ないでしょう。大体あなたいつからここの経営者になったつもりなの、私たちのやり方が気に入らないっていうなら、直にでも周防先生の所で診てもらって、入所変更届けを書いてもらって出て行ってもらおうかしらね」
「そんなぁ・・・そらぁーあんまりやで先生ぇ」
「だったら黙って手を動かしなさい」
叱責された彩音は唇を尖らせながら黙々と食器は洗い始めた。やっと大人しくなった彩音からカウンターごしに居間に目を向けると、マナと楓の姿がなく、葵が1人テーブルで日本語の勉強をしていた。
早く言葉を覚えようとする姿勢に関心を覚えるたが、蒼崎は葵の雰囲気にどことなしか近づきがたい薄い膜のよくなものを感じていた。
「葵ちゃん。もう少ししたら先生と一緒に買い物に行きましょう。葵ちゃんの服を買いに行かないとね、あと市役所に行って保険証の手続きもしないとだし」
すると葵は首を勢いよく左右に振り出した。
「どうしたの? 少し買い物行くだけよ?」
『そと いや みつかる いや りお まつ』
今度は昨日渡されたスケッチブックにひらがなを書いて見せた。それらしい返事を書いたつもりでも、文法がまだ甘い。だけど、ひとつひとつの単語から葵が言いたい意味は何となく理解できた。
「ううん、亮くんは今センターに行ったから帰ってくるのは多分昼過ぎぐらいになるかな。ねえ葵ちゃん、その見つかるってどういう意味なの? 誰かに見つかっちゃうとダメなの?」
『りお あいたい まつ もういや』
スケッチブックに書く葵の顔に、すこし陰が浮かぶ。やや俯き、碧く潤んだ瞳に寂しさを宿しながらペンを置いた。
その様子を見た蒼崎は葵に近づいて隣に座ると、置いたペンを手に持ち、ゆっくりと漢字を一文字書いて見せる。
「葵ちゃん、これが『亮』よ。亮くんの名前よ。それと『りお』じゃなくて『りょう』よ、今日は少し先生と言葉の勉強をしましょう、亮くんが帰って来るまでね」
蒼崎の言葉に葵は頷くと、『はい おねがいします よろしく』と書き足した。それを見た蒼崎は思わず苦笑いをみせる。
「正しい文法も教えないとだね」
一体この子は亮とどんな繋がりあるのか、蒼崎にとって葵は気にはなる存在でわあるが、早くこの環境に馴染ませる必要あると感じていた。
その為には心を許しあえる人間が必要だ。
「あの~、おたくら二人してうちの事忘れてるんとちゃいますか?」
振り返るとカウンター越しから恨めしそう彩音が眺めている。すっかり自分を忘れられ二人だけの世界に入り込んでしまっているこの状況に、腹立たしさを感じていた。
「忘れてるっていえば、彩音あなた何か大事なコト忘れてないかしら」
「んっ? 一体なんのことや?」
「忘れちゃってるんだ。もうすぐよ」
「なにがや?」
首を傾げる彩音の様子に、タイミングよく食堂のドアが開くと、マナが顔を覗かせた。
「それじゃーせんせーぇ、行ってきまーす!」
支援学校に行くマナの格好は、涼しげな青色の着物で膝丈をスカートのように膝下の所に調整している。清潔感があり、非常に動きやすい格好になっている。
「はい、いってらっしゃい。ほら彩音、もう学校の時間じゃないの? 早く支度しないと遅刻するわよ」
「くううう、今の今まで忘れてとったんのに、先生ぇ、葵ちゃんに先ツバつけたらあかんからな」
「・・・彩音、それ以上しゃべったら・・・どうなると思う」
目を据わらせ、蒼崎の指がコキコキ鳴りだすと、彩音の顔色が青くなる。
「い、いややわぁー先生ぇ。冗談キツー、まっ、マナっ!! 待ってやぁ、うちも支度していくから、ちょいまちぃ!」
蒼崎に目を合わせず早足で食堂を出ると、玄関先に用意してある鞄を持ち靴に足を通す。すでに玄関にはマナの姿はなく、恐らく亮がいるバス停に向かっているのだろう。
葵の事も気になるが、彩音にとって今はマナが一番気になったいた。昨晩の出来事があったお陰で、千載一遇のチャンスが到来したからだ。マナと亮の間に亀裂が生じ、上手くいけば自分の入り込む余地が大いにあると考えた。
靴を履き終わると、彩音の亮に対する反抗心がメラメラと沸き立ち、追いかけるように玄関を開けた。
「ほな、いってきまーす! ぶぅっ」
ドアを出た彩音は突然現れた黒い壁に、顔から衝突した。
「いったぁ! 何や一体?」
「おおっ、元気のいいお譲ちゃんだね。ここの子かい? だれか大人の人いるかな?」
現れたのは汗臭い白のシャツに深いシワ顔の男だった。自分の胸に飛び込んできた彩音に対して、やさしい表情で話しかけるが、次の瞬間、彩音の両手で突き飛ばされた。
「おっとっとっと、あっ、危ないじゃないか!」
後ろによろめきながらバランスを保つと、彩音に向かった注意を放った。いくら身体を鍛えてるとはいえ、急に倒されたら腰を痛めていた。
だが、言い終わってから彩音の様子がおかしい事に男は気づいた。顔色から血の気が引き蒼白になり、呼吸が乱れはじめる。
「おい、どうしたんだ。どこか悪いのか? おい、大丈夫か?」
「かっ、はぁっ、はっかはぁ、あぐっ・・・かっあっ、」
呼吸を乱し首元を押さえながら、彩音がゆっくりその場にうずくまる。地面には額から落ちた汗が跡を増やしていく。
「おい!! だれかいないかぁ!! だれか来てくれぇ!! 大変なんだ、誰かぁ!!」
助けを求める男の大声がたんぽぽ内に轟くと、奥の方から蒼崎が様子を伺うみたいに顔を除かせた。そこで玄関の状況を確認すると、すぐに彩音に駆け寄って来た。
「彩音! 大丈夫? しっかりして。 また発作が起こったのね、大丈夫よ、大丈夫だからゆっくり息を吸うのよ、ねぇっ大丈夫から」
彩音を起こし、壁に寄りかからせると脈を取りだした。パニック発作の過呼吸で頻脈を起こしていた。
「なあ、大丈夫か? 何か手伝う事はあるか?」
心配した男が声を掛けながら蒼崎のそばまで近づこうとした瞬間、蒼崎の伸ばした手に静止させられた。
「こっちに来ないでください! 離れて! あなたが来るともっと酷くなるから、もう少し離れて下さい」
「そんな言い方はないだろう、こっちだって心配してやってるんだし。もう少しだな―」
「いいから離れてぇ!!」
蒼崎の一渇に男の声が止まった。そして男は納得したのか後ずさりながら二人から離れてみる。
不思議な事に男がその場から離れると、あれ程苦しそうにしていた彩音の顔色に生気が戻り、呼吸が落ち着き始めた。
やがて蒼崎が男の方に顔を向けてその場で少し待ってくれと言うと、蒼崎に肩を抱かれながら彩音が家の中へと入っていた。足取りはまだ悪く、歩くのがやっとな状態だ。
男は仕方なく、その場で待つ事にした。手持ち無沙汰に周りに目を向けると、隣の近所の住人達がこちらの様子を伺っていた。
向かいの男と目があうと、そのまま何事もなかったかのように戻っていた。
「やれやれ、コレだから野次馬どもは嫌いなんだよ」
男が不満を呟くと同時に蒼崎が玄関先から姿を見せた。
「先ほどはすいませんでした。どうぞこちらまで」
「ああっ、失礼するよ」
男が玄関先まで来ると、蒼崎の顔に警戒心が表れた。男がバツが悪そうに頭を掻いてみせる。突然現れた男の側で少女が倒れていたのだから、警戒して当然と思っているみたいだ。
だが、男の予想に反して、蒼崎が深々と頭を下げてきた。
「さっきは、その・・・強い口調で言ってしまってすみませんでした。事情が事情だっため、あんな態度をとってしまって・・・本当に申し訳ございませんでした」
「えっああ、こちらこそ。何か事情があったのでしょうから、その、そんなに気にしないで下さい」
「そうですね、私はここの施設管理人兼生活指導主任をしています蒼崎玲子と申します。それで改めてお聞きしますが。何か御用でしょうか?」
「ええ、実はこちらに入所している亜民についてお聞きしたい事がありまして、できれば本人と直接話しを聞きたいと思いまして、こうして早い時間から伺したしだいです」
低姿勢で丁寧な言葉使いを使ってはいるが、蒼崎には単調な決まり言葉を言っているだけにしか聞こえなかった。
蒼崎にはこの男の態度や口調で市役所の認定調査員ではないかと感じていた。
「それは、それは。わざわざお越しいただいてすみません。ですが、あいにく『たんぽぽ《うち》』の子供たちは、もうほとんど学校に行ってしまってさっきの彩音ぐらいしか残ってません」
あえて葵の存在は言わなかった。ことの成り行きで預かったにせよ、規則や条例・決まり事にうるさい役所に人間に知られたら、後々面倒な事になると思ったからだ。
これ以上、この男を中に入れないように蒼崎は玄関先で腕を組んで見せる。
「それで、どの子に御用でしょうか?」
「ここに入所している、月宮亮という子に用があるんですけどね、ご在宅でしょうか?」
「亮くんに? なんでまた? あの子が何かしたんでしょうか?」
「はい、昨日発生した事故につてなんですが、何でも彼が通っているリハビリセンターの友達が事故にあったみたいでなんですよ、なんでもその子を彼が病院まで運んできたそうですよ。」
荻野美花の事だと直感した。緊張しながらも、蒼崎は相手に悟られないように平静のふりをしてみせる。
「ええ、知ってますよ。亜民の子供たちは横の繋がりが強いですから、あの子たちが通う施設だと皆大小様々な集団に入ってます。それ以外にもお互いに助け合ったりしますから、たまたま事故現場に遭遇して助けたんじゃないんですか」
「そうなんでしょうけど。気になる事がありましてね。いやね~これはまた別の話になるんですが、昨日の事故を起こした不良達に話を聞いた際に、ある男に殺されかけたって言うんですよ。念のために似顔を描いてもらって、それをあのセンターにいる何人かの亜民に見せたら、全員が『月宮亮だ』って言ったもんですから、それで少し話しを聞きたいなと思いまして」
「ちょっと待って、事故を起こした不良達ってどういう意味ですか?」
「ご存知ありませんか? 昨日、彼の通う『都島リハビリセンター』の付近で車の単独事故があったんですよ、幸い死者はでませんでしがあれはもう普通の事故とは言いがたい状況でしてね。何かご存知ですか?」
「いっ、いえ・・・初耳です」
「そう言えば、確か月宮亮って子は一年前に傷害事件を起こしましたよね。裁判になるくらい派手にやったみたいで、彼には暴力的な傾向があるんですか?」
「そんな昔の話、今は関係ないでしょう!! それに今亮くんは居ません。お引き取りを」
「ダメですか? どうしても?」
「いい加減にしないと警察呼びますよ!」
蒼崎が強い口調で言い放つと、男はズボンのポケットから黒いパスケースを取り出して見せた。そこには顔写真と一緒に『埼玉連邦警察 警部補 平松鳴海』とある。
「私が警察ですよ」
手帳を見せられ一瞬声を詰まされた蒼崎は、組んでいた手を解いた。
「彼の事を詳しく聞かせて下さい。これはあくまでも任意ですが、なんなら令状を持ってきてもいいですよ」
先ほどまでの低姿勢だった男は、すでに刑事の顔になっていた。
閑静な住宅街を真夏のセミが耳やかましく鳴き始めだし、道路上から蜃気楼が出現しだした光景を車内で眺めながら、ポーンはある人物が来るのを待っていた。
この場所は東京郊外にある一条賢治という名の男が使っていたアパートの駐車上だ。2階建て築30年は軽く越えているいだろう外壁に、建物の半分を緑のツタで覆い隠された状態はとても中に人が踏んでいる雰囲気ではなかった。
数時間前この場所を確認したポーンは何かの間違いと思って二度確認したくらいだ。だたツタの絡まったベランダを開けて2~3人の住人が洗濯物を干す光景を目にした瞬間、これがまだ居住可能なのだと納得した。
ロメロ神父に言われた情報は正しく、ポーンはすぐにアパートの表紙を確認、『一条賢治』の名を見つけるとピッキングで手際よくドアを解除した。サングラスを外し部屋の中に入ると、台所から強烈な生ゴミの異臭が漂ってきた。
「ノォッ!? クセェ!」
一瞬窓を開けようとしたが、痕跡は最小限にしたほうがいいため止めた。鼻を摘んだまま探索を開始する。溜まった郵便物に洗濯カゴに積まれた衣類、ここの住人はしばらく帰宅したない事が分かった。
奥の4畳半の居間には目袋一つと本が数冊しかないかった。テレビも音響機器類が一切なく、唯一あるのはモバイルパソコンが一台だけだった。
「コイツは一体どんな生活をしてやがったんだ?」
ゴミ箱を確認するとコンビに弁当に混ざって開け終わった錠剤のケースが大量に出てきた。
「セレネース、トリオミン、メレリル、ネオペリドール、デパス・・・ケッ薬物中毒かよ。よくもまあこんなにわけの分からん薬を飲んだもんだな」
一応部屋の写真と一緒に薬のケースもデジカメで撮影しておいた。
一通り見て回っると台所で何かを蹴っ飛ばした。見るとそこには文庫本が一冊落ちていた。拾い上げてみると何度も読み返したみたいで、表紙が色あせ、ページの所々に折り目がついていた。
本のタイトルは『死に至る病 著:キェルケゴール』と書かれていた。ページをめくると手書きで『死は終わりではなく、全体の極一部である』と書かれている。
「そうとうな変わり者だな、こんな本を愛読書として読むヤツがまだいたんだ。まあいいや、さてとそろそろ始めるとするか」
拾った本を部屋の隅に投げ飛ばし、ポケットから長方形の小さい名詞サイズの箱は取り出した。その場に箱を置くと、ポーンはポケットナイフで自分の親指を刺し血判を押すように箱に指を押し付けた。
箱にポーンの血判が写されると、その場でポーンの指紋がバラバラに広がって魔法陣が作り出された。
ポーンがここに来た理由は、この部屋の住人である一条賢治なる人物を生け捕りにすることだった。これは捕縛で使われる魔法陣で、部屋に入った人間は身体の自由を奪われ強制催眠に陥る。後はポーンの言葉に従って怪しまれる事なく車に運ぶだけだ。
魔法陣は仕掛け終り1人車内で待機中のポーンは、腕時計に目を向けた。部屋を出て既に3時間が過ぎようとしていた。
退屈を感じ始めた頃、目の前を色白の若い男が横切った。その後を目で追うと案の定一条賢治の部屋に入っていった。
「よし」
車から降り、男の後を追うようにしてポーンが部屋に入った瞬間。全身に強い衝撃を受けると今度は引き寄せられるように前方へと倒される。
「ガハッ!?」
すぐに起き上がろうとするが、身体に力が入らず。身動き一つ取れない状態になった。首元に力を感じると仰向けに返された。
部屋の中にいたのは、法眼の道士と右腕に包帯を巻いた村岡が立っていた。
「ご苦労だ道士。後は任せろ」
「では、後はお任せします。村岡殿すでに虚無の結界を張っておりますので、この部屋の音は絶対に外には出ません」
村岡は道士に下がれと手で指示を出す。
「さて、マヌケ野朗。気づかなかったのか、お前達は空港から出てから24時間体制でずっと監視されてたんだよ。それにこの部屋はその前から監視体制に入ってたんだ。どういう理由だかお前らが来るって事は、ここの住人の事もある程度知ってるって事だなよ。それにこんな子供だましな術がコイツに通じるわけないだろうが」
「おっ、俺は外交官だ。お前達は外国の要人を不当に扱っている。今すぐ外交特権に基づきこの状況からの開放を要求する」
ポーンは動揺しながら外交権利を述べだすと、自身の解放を要求しだした。国際法上外交官には外交特権があり、当事国は外交官に対して不当な行為を行ったならない決まりになっている。
だが、返って来た回答は言葉ではなく、厚い皮靴での蹴りだった。顔を蹴りとばされ奥歯が抜け落ちる。
「貴様っ、何をする・・・わっ、わかってるのか! お前は今重大な国際法違反を犯したんだぞ!」
「馬鹿が、わかってねぇーのはオメェーの方だよ。ここじゃもう誰もオメェーの声は聞こえねーんだよ。お前が死んでも誰にもわからねぇーしな」
「そんな事をしたら国際問題になるぞ! 今なら軽い抗議だけにしておいてやる。だから―」
「まだ分かってねぇーのか? 国際法違反やこの国の刑事罰は証拠がなければ立件できねぇーんだよ。ましてや死体がなけりゃ抗議すらできねだろうが」
村岡が冷ややかな笑みを浮かべると、ポーンの背中に戦慄が走った。
動けないポーンの手を硬い靴底で踏むと、ポーンが震えた声を出す。
「やっ、ヤメロっ・・・」
「この国で人が消える事はよくある事なんだよ。特に外国人はな」
それだけ言うと、踏んでいた足に全体重を乗せだした。何かが折れる鈍い音が数回鳴ると、ポーンの悲鳴が部屋全体に響きだす。
「さてと、尋問を始めるとするか。痛みのレッスン1だ。まずは鳴け」
今度は踵で捻りながら更なる痛みを加えると、されるがままにポーンの悲鳴は大きくなり、すでに悲鳴なのか叫びなのか分からなくなっていた。
その光景を冷めた目で見ている道士は、法眼を一緒につれてこなくて正解だったと確信した。
こんばんは、朏天仁です。今回久しぶりに道士と村岡氏の登場です。
それぞれの線が亮を含め「たんぽぽ」に迫りだそうとしています。
次回おたのしみに!
今回で21話まで連載できました。これも読んでくださる皆様のおかげです。本当に有り難うございます。そしてこれからも応援よろしくおねがいします。m(__)m