22.ゲオルグ・フォン・アーバン
【エクストラ王国・北東の雪道】
夜明けとともに、補給馬車は静かに出発した。
馬車が揺れながら、拓弥は静かに口を開いた。
皆に前世で何あったのか
王族として生まれ、奪われ、闇に落ち、また再び歩きだしたこと。キールが親友だってこと。そして自らの意志で転生したこと。
雪「……信じられない話だが、お前が言うと不思議と納得できる。」
光「ヴァンパイアが……前世の敵……!」
麻里奈
「……転生なんて、絵本の中のことだと
思ってたのに……」
拓弥はわずかに笑い、空を見上げた。
拓弥
「逃げたわけじゃない。
“勝つために”生まれ変わった。
そして――キールとの約束を果たすために戻ってきた。今なら言える」
光「……キールさん、今どこに?」
拓弥
「わからない。
でも東のルートを進むなら――
“ルオ=ハルド”に寄るはずだ。」
雪「じゃあ、急ごう。必ず再会できるさ。」
【グリフォニア海峡・建設中の巨大橋】
馬車が到着し4人は補給馬車から降りた。
麻里奈「……わぁ……!」
その先には――
海峡をまたぐ巨大な橋。
まだ途中だが、黒い骨組みが海の上に伸びている。
光
「すごい……!
でも、なんでこんな大規模な……?」
雪
「……いや、あれは……」
建設中の橋の上には無数の人影。
足には鎖。
監督兵が怒鳴り、鞭を打つ音が風に混じる。
麻里奈「……これ……全部、労働者……?でも鎖なんて……」
拓弥「……“自分の意思で働いてる顔”じゃないな。」
光「グリフォニア……何をしてるんだ?」
雪「これ以上ここにいたら怪しまれる。
急ごう、拓弥。」
拓弥「……ああ。」
四人は海岸沿いの倉庫へ向かい、
アンジェラが準備した“荷物便”の船に紛れ込んだ。
【ルオ=ハルド側・密かに上陸】
船員「着ましたぞ。急いでここから先は自分たちでお願いしますね!」
船底の扉を開くと、薄暗い桟橋の下に出た。
拓弥「ありがとう。
ここが……ルオ=ハルド……」
雪「灰色の街……と言われる理由がわかるな。」
光「あっちに灯りがある。街はすぐそこだ。」
麻里奈「よかった……やっと着いたんだね。」
四人は静かに歩き出す。
拓弥(心の声)
「キール……ジール……リーナ……
今、どこにいる……?」
灰色の風が吹き、四人を迎えるように街へと流れ込んだ。
――そして、
この時、彼らはまだ知らなかった。
“すぐ近くに、キールたちが来ている”ことを。
【灰色の街・ルオ=ハルド】
灰色の空が街を覆い、疲れ切った顔の人々が行き交っていた。
拓弥たちは雑踏の中を進みながら、キールたちの痕跡を追っていた。
光「……本当にこの辺に来てるのかな?」
雪「手がかりが薄いな……とりあえず、情報を集めるか。」
麻里奈「じゃあ、手分けして聞き込みしようよ。」
拓弥「そうだな。
……大鎌を持った男なんて、そうそういない。」
その時、近くで野菜を並べていた老人が、ふいに口を開いた。
老人「――大鎌の男なら、この前見かけたぞ。」
四人が一斉に振り返る。
拓弥「本当か!? どこで見たんだ!」
老人「ああ、裏路地でエルフの子供が大人に絡まれててな。
そこへ“大鎌の男”、それに明るい姉ちゃんと……無口な奴が助けに入った。」
光「完全に一致ですね…!」
麻里奈「ジールさん、無口って言われてる……」
雪「その三人だ。間違いねぇ。」
老人は街の出口を指差す。
老人「助けたあと……そのエルフを追って、街の外へ向かったぞ。」
拓弥「……外に出たのか。」
雪「よし、すぐに追おう。」
老人「おい、若いの、待ちな。」
その声に、四人の足が止まる。
老人「ひとつ忠告だ。
……最近この辺りな、“グリフォニアの聖獣騎士団”がウロウロしてる。」
光「っ……!」
麻里奈「ゲオルグ……!」
老人「金の槍を持った団長がこう言ってた。
“悪魔の手先がこの街を通る。必ず裁く”……とな。」
雪「完全に俺たちを追ってきてるな……」
拓弥「……あいつが来てるのか。」
老人「気をつけろ。
この街は“悪い影”がよく動く。」
拓弥「ありがとう。助かった。」
四人は走り出す。
拓弥(心の声)
「キール……ジール……リーナ……
この先にいるんだろ?
絶対に追いつく。」
【ルオ=ハルド北門・灰色の風の中】
拓弥たちは街の北側へと走った。
灰色の雲が低く垂れ込み、海峡から冷たい風が吹きつける。
雪「……キールたち、本当にこの先に……」
拓弥「呼ばれてる気がするんだ。間違いなく……ここだ。」
光「……ん? みんな……止まって。」
光の声に、三人が足を止める。
空気が――変わった。
冷たい風が、急に無音になる。
麻里奈「……何、この空気……?」
拓弥「――来る!!」
次の瞬間。
白い閃光が大地を抉った。
ドォンッ!!!
雪「っ!?」
光「危なっ!」
爆風が街道を吹き飛ばし、砂塵が舞い上がる。
砂煙の向こうから、重い靴音がゆっくりと響いた。
???「……まさか……」
青いマント、蒼銀の鎧。“聖槍”を携える男。
グリフォニア聖獣騎士団、団長――
ゲオルグ・フォン・アーバン
ゲオルグ
「……見つけたぞ。“悪魔と行動していた者たち”を。」
拓弥
「悪魔……?」
雪
「キールのことか……!」
麻里奈
「ゲオルグは……本気でキールを“ヴァンパイアの仲間”って信じてるんだ……」
光
「だから僕たちまで狙うですね……!」
ゲオルグ
「迷いの森を生きて出れるとは幸運な奴らだ。」
拓弥
「キールはヴァンパイアの手先なんかじゃない。俺たちも」
ゲオルグ
「戯言を!
“悪魔の軍勢”に与する者――我ブリューナクで成敗してやる!!」
ゲオルグの足が大地を砕いた。
ルオ=ハルド――
再会の地にして、激突の始まりだった。
拓弥は腰の雷の剣に手を添えた。
その瞬間、刀身が蒼白い閃光に包まれ――
ギィィィン!!!
雷が刀身の形を作るように収束し、
“刃が存在しない剣”は、蒼白い光を纏った。
光「……拓弥さんの雷の剣が……青く光ってる……!」
雪「“輝きが違う”。あれは……完全な雷聖剣だ。」
麻里奈「拓弥くん……!」
拓弥
「来い……ゲオルグ!!」
ゲオルグ
「《閃光突》!!」
聖槍が光の弾道を残し、空気を裂いて襲いくる。
拓弥
「《クロスブレイク》!!」
雷の刃が槍を受け止め――衝突!!
ドガァァァァン!!!
雷と光が四散し、周囲の瓦礫が紙のように吹き飛ぶ。
麻里奈「きゃっ……!?」
光「衝撃波だけでこの威力……!」
爆煙の中から、二つの影が跳び出す。
ゲオルグ
「……なるほど。
闇の同盟者にしては、悪くない腕だ。」
拓弥
「だから俺たちは闇なんかじゃ――!」
ゲオルグ
「黙れ!!」
槍が空気を裂く。
光「……あれ……!?
ブリューナクが……様子がおかしい……?」
雪「違う……“詠唱なしの強化”だ!
ゲオルグは本気で殺しに来てる!!」
ゲオルグが足を引き、重心を極限まで低く落とす。
ゲオルグ
「――《聖槍術・神速一型》。」
その姿は、もはや残像すら残さない。
拓弥
「くっ――《ライトニング・ステップ》!!」
雷光と蒼光が交差する。
ガガガガガッ!!!
雷と槍が激突し続け、地面は抉れ、空気は焼ける。
拓弥
「ハァッ!!」
ゲオルグ
「遅い!!!」
槍の柄で受け流され、拓弥は地面を滑らされる。
雪
「くっそ……見てらんねぇ!!」
光
「三人で援護します!!」
麻里奈
「いっくよー!!」
雪
「《氷牙乱舞》!!」
雪が地面を凍らせながら氷刃を飛ばす!
光
「《フレイムバースト》!!」
麻里奈
「《ストーンブレイク》!!」
三方向から、
氷・炎・土、完全な連携攻撃!
ゲオルグ
「小細工を!!」
槍を横一文字に振る。
バチィィィィン!!!
炎も、氷も、土すらも、
“聖槍の結界波” に触れた瞬間、霧散した。
光
「そんな……!」
雪
「全部、消された……!?」
麻里奈
「ウソでしょ……!」
ゲオルグの体がふっと消える。
雪
「……ッ!? どこだ!?」
ゲオルグ
「――ここだ。」
雪の背後。
ドガァッ!!!
雪
「ぐはっ!!」
雪が吹き飛ばされ、石畳に叩きつけられる。
麻里奈
「雪さん!!」
ゲオルグ
「貴様らもだ。」
ドゴォッ!!
麻里奈
「きゃあっ!!」
麻里奈も一撃で吹き飛ぶ。
光
「ぐっあ……!」
光自身も地面に転がった。
ゲオルグがトドメを刺そおうと光に槍をむける。
光
「くっ……身体が……動か……」
拓弥
「やめろ!!」
雷を纏い突っ込むが――
ゲオルグ
「邪魔だ!《破砕閃》。」
聖槍から暴光撃が走り、拓弥の身体が宙を舞う。
ドガァァァン!!!
拓弥
「――ッ……!!」
麻里奈
「た……拓弥くん……!」
雪
「クソ……立てねぇ……!」
光
「こんな……無茶苦茶な……!」
ゲオルグは静かに拓弥に歩み寄る。
ゲオルグ
「終わりだ。
“悪魔と行動する者”に生かす価値はない。」
ブリューナクの先端が光を帯びる。
ゲオルグ
「死ね――!」
聖槍が拓弥の心臓へ向かって突き出される。
◆その瞬間――黒い影が割り込む。
カァンッ!!!
金属と金属が激突する、甲高い音。
ゲオルグ
「……!」
拓弥
「……え?」
視界に飛び込んできたのは――
◆巨大な“魂喰いの大鎌”
その大鎌が、ブリューナクの刺突を横から弾き飛ばしていた。
拓弥「ソウル・リッパー……」
男(???)
「――相棒に手ぇ出してんじゃねぇよ。」
低く、冷たい声。
ゲオルグ
「貴様……!
死神族の……!」
拓弥
「……キール……!」
キール
「立てるか?相棒。」
拓弥
「……当たり前だ…!」
キール
「積もる話もあるが後だ。」
大鎌が風を裂き、黒い軌跡を描く。
拓弥
「ああ」
キール
「行くぞ!」
ゲオルグ
「悪魔めッ!!」
キール
「黙ってろ、“正義バカ”。」
ゲオルグ
「貴様ら……二人まとめて粛清する!!」
ゲオルグが槍を回転させ、光の竜巻が生まれる。
拓弥
「キール、行くぞ!」
キール
「言われなくても!」
二人が同時に踏み込む。
拓弥
「《ライトニング・ダッシュ》!!」
雷を纏い、地面に青白い稲妻を刻みながら突撃。
キール
「《リーパー・スラッシュ》!!」
黒い斬撃が弧を描き、槍の光を切り裂く。
ゲオルグ
「っ……何……!?」
光と闇と雷――三つの力が槍にのしかかり、ゲオルグの足が一瞬だけ後退した。
光(倒れながら)
「か、勝ってる……!!」
麻里奈
「がんばれ……!」
ゲオルグ
「認めん……認めん……!!
悪魔と組んだ者など、存在自体が罪!!」
叫びとともに、槍の光が極限まで増す。
ゲオルグ
「《聖槍術・絶式――神裂閃》!!!」
空気が裂け、地平線まで続く光の斬線が放たれる。
拓弥
「キール!!」
キール
「来るぞ相棒!!」
拓弥
「合わせるぞ!」
キール
「ああッ!!」
拓弥
「《ライトニング・ドライブ》!!!」
キール
「《断罪一閃》!!!」
雷光と黒影が融合し、
一本の巨大な“斬光”となってゲオルグの光線にぶつかる。
ドガァァァァァァン!!!!!!
爆風が山のように盛り上がり、瓦礫が宙を舞う。
ゲオルグ
「ぐ……ぬぅぅぅあああああっ!!!」
必死に耐えるように槍を握りしめるゲオルグ。
その手に青白い雷と黒閃が降り注ぎ――
バキィィィィッ!!
黄金の柄が砕けた。
ゲオルグ
「……ッ……!?」
手の中から何かが崩れ落ちる感触。
聖槍ブリューナクの“柄”が真っ二つに裂け、地面に転がった。
残ったのは
――神の核を宿した“先端部分”だけ。
拓弥
「今だ、キール!!」
キール
「任せろ!!!」
二人が一気に踏み込む。
拓弥
「《ライトニング・ザ・サン》!!!」
キール
「《デス・エンペラー》!!!」
蒼白い稲妻と黒い斬撃が重なり、
ゲオルグの胸甲を縦に斬り裂いた。
ゲオルグ
「――――ッ!?」
衝撃に耐えられず、ゲオルグの全身が宙を舞い……
ドガァァァァア!!
背後の石壁へ叩きつけられる。
槍の穂先だけを握ったまま、
ゲオルグは崩れ落ち、膝から崩れ――
ゲオルグ
「ぁ……ぐ……
まだ……私は……」
言いかけた瞬間――
視界が揺れ、意識が暗転した。
ズサァ……
聖槍の穂先が転がり落ち、
ゲオルグは完全に倒れた。
麻里奈
「倒れた……!」
雪
「あのゲオルグが……!」
光
「……聖槍ブリューナクが……」
拓弥
「……終わったな……」
風が吹く。
互いに武器を下ろし、二人は静かに向き合った。
拓弥
「……キール」
キール
「なんだよ。そんな顔すんな」
拓弥
「……思い出したんだ。全部」
キール
「……!」
拓弥
「ベルだった頃のことも。キールたちと旅したことも。
俺が……みんなを置いて転生したことも」
キール
「……遅ぇよ、相棒」
キールは笑った。
けれど、その声は少しだけ震えていた。
キール
「でも……ちゃんと戻ってきたな」
拓弥
「ああ。約束したからな」
キール
「……なら、許してやる」
リーナ
「おーい。もうさきいっちゃうだから。あれリーダー」
ジール
「…………」
拓弥
「リーナ、ジールも」
キール
「コレでみんな揃ったな。じゃあ行くとするか」
エルフの子供(???)
「待ってください。」
あのエルフの子供が現れ話かけて来た。
キール
「何だアーロンも、いたのか。」
アーロン
「はい。もう一度、里まで来て下さい。長老様がお呼びです。」




