7.新たな予感
数日前…
魔佐『覇弥斗さん、お久しぶり』
光から家の場所聞いてた魔佐はいきなり覇弥斗の前に現れて声をかけてた。
覇弥斗『魔佐……はぁ』
覇弥斗は魔佐見るなり全て把握してため息を吐いた。
魔佐『甥っ子を見るなりいきなりため息とは失礼ですよ』
魔佐は少し揶揄う様に言った。
覇弥斗『昨日、光が帰って来なくて、お前がいきなり来たと言うことは光はそっちの世界(イディア世界)に行ってしまったんだな』
魔佐『お!話が早いですね。じゃ僕が来た理由も分かりますか?』
覇弥斗『………………俺にあの世界(イディア世界)に帰って来いとか言いに来たのか?』
魔佐『違いますよ…覇弥斗さんはもう帰って来ないことはなんとなくわかってたので。
僕が覇弥斗さんに会いに来た理由は……光を当分わが家で暮らして貰うのを伝えに来ました。』
覇弥斗は黙り込んで心で思った
覇弥斗(心の声)『(コイツまた何か企んでやがるな)』
魔佐『嫌だな〜何も企んでませんよ。光くんにもっとあの世界を知って貰うと思ってるだけですよ』
魔佐は心を読むかの様に答えた。
覇弥斗『お前はあの世界の何を知っているんだ?』
魔佐『僕は何も知りませんよ。逆に覇弥斗さんは何を知ってしまったんですか?』
魔佐は見透かした様に答えた。
覇弥斗『……わかった……。』
魔佐『ん?』
覇弥斗『光を当分そっちの世界に住まわせていいぞ。』
魔佐『ありがとうございます。』
覇弥斗『魔佐!一つ頼みがある……あんまり俺に会いに来ないでくれ……』
魔佐『あら冷たいですね。甥っ子なのに。安心して下さい僕の目的は済んだので当分は会いに来なですよ。逆に気が向いたらこっちの世界にいて下さいよ。』
覇弥斗『………………』
魔佐『まあ、もしかしたら親父とは頻繁に会ってたりしてでは』
魔佐はイディアの世界に帰って行った。
ナイトメアを倒した次の日の朝――希龍家
光「ふあぁ……おはようございます。朝ごはん、できてるのかなー」
光が寝ぼけ眼でリビングに降りてくると、すでに魔佐と翔が話し込んでいた。
翔「お、光。おはよう。昨日はよく頑張ってくれたなありがとう。」
そこへ拓弥も、まだ寝癖のついたままの頭で降りてくる。
拓弥「……なんか体ダルいな。昨日の戦いのせいか」
すると魔佐が何かを持ってきて、拓弥の前に差し出した。
魔佐「おはよう拓弥。あー、そうそう。さっき君宛に手紙が届いてたよ。」
拓弥「んだよ、こんな朝っぱらから……」
手渡された封筒を受け取った拓弥は、表に書かれた文字を見て目を細めた。
そこには――『雨川 拓弥 様』と、はっきり書かれていた。
拓弥「……えっ?」
手が止まり、血の気が引く拓弥。
光「どうしたんですか?」
拓弥「この世界で……『雨川』って名前知ってるのは、光と兄貴たちだけだろ?」
翔もそれを見て顔を曇らせる。
翔「確かに……ここでその名前を知る奴はいないな」
魔佐も眉をひそめた。
魔佐「ふーん……確かに」
拓弥はゆっくりと手紙の封を開ける。
中には短い文章が一言だけ。
『雨川の名を持つ者よ。
本日、スターリーの女神像の前で待つ。
一人で来い。
来なくてもいい。
……ただ、それだけだ。』
拓弥「……誰だ、これ……」
光『これってもしかして新たな敵?』
翔『今は何とも言えないが罠ぽいな』
光『僕も行きます!』
拓弥『いや、光は今日実家に荷物取りに行く予定だろ。それに相手は1人で来い!って要求してる。何処の誰だか知らねーがお望み通り1人で行ってやるよ!』
翔「……無理はするなよ。少しでもおかしいと思ったらすぐ帰ってこい。」
拓弥「わかってるって。」
光「気をつけてくださいね、拓弥さん……!」
光と翔に見送られ、拓弥は手紙に記されていた場所――
『森の中の町スターリー』へと向かった。
拓弥(……妙な感じはない。罠っぽいにしてはこの町はのどかすぎるな)
やがて拓弥は、石造りの女神像の前にたどり着いた。
すると――
???「……来てくれたんだね」
女神像の影から、フードを深くかぶった小柄な少女が現れた。
顔はよく見えないが、どこか懐かしい気配をまとっていた。
拓弥「……お前が手紙の送り主か?」
少女は無言で頷いた。
そして、静かに両手をあげ、フードを外す。
拓弥「──!」
金色の陽差しの中、姿を現したのは、
かつてこの世界とは違う場所で出会った、あの少女だった。
拓弥「……ツッチー!!」
瞬間、拓弥の顔がぱっと驚きに染まる。
ほんの一瞬で──遠い記憶が、走馬灯のように蘇った。
11年前あの森で出会った幼き少女。土田 麻里奈
彼女は土人。小さな世界で慎ましい暮らしをしていた種族
土人。
拓弥は、まるで夢を見ているかのように、立ち尽くした。
麻里奈は、ぎゅっと手を握りしめながら、
ほんの少し寂しそうに、でも嬉しそうに微笑む。
麻里奈「ちゃんと……覚えてて、くれたんだ。」
拓弥「あたりめーだろ。
──あんな大事な友達、忘れるわけねーじゃねえか!」
麻里奈「……変わらないね、拓弥くんは。」
拓弥「お前のほうこそ……ずいぶんたくましくなったな。
ツッチー、どうしてここに?」
麻里奈「うん……聞いてほしいの。
あたし、ここまで来た理由──」
麻里奈の表情が少しだけ引き締まる。
そして、静かに語り始めるのだった。
麻里奈「……あの日、村は……吸血鬼に襲われたの」
彼女の声が震える。
拓弥は何も言わず、じっとその言葉を受け止めた。
──9年前。
静かな土人の村。
夜風が木々を揺らし、月明かりが優しく村を照らしていた。
普段と変わらない、穏やかな夜……だったはずだった。
「ギィィィ……」
突然、軋むような異音が響く。
それは村の外れから聞こえてきた。
麻里奈(……何、いまの音……?)
家の中で、麻里奈は兄の徹と寄り添いながら、異変を感じ取っていた。
窓の外を見ると、黒い影がうごめいている。
次の瞬間――
「キャアアアアアアアア!!」
悲鳴。
それは、村人のものだった。
麻里奈「えっ……?」
戸を激しく叩く音。
土ぼこりの中から、血まみれの村人たちが逃げてくる。
「吸血鬼だ!!逃げろ!!」
叫び声が重なり、村は一瞬で地獄と化した。
父「徹!麻里奈!ここに隠れろ!」
母「何があっても出て来ちゃダメよ!」
父「徹、麻里奈お互いの耳をしっかり塞ぐんだ」
麻里奈「お父さん!、お母さん!」
徹「大丈夫だ、麻里奈……兄ちゃんがいるから!」
父「──頼んだぞ、徹!!」
最後に見たのは、武器を手に、必死に家族を守ろうとする父と母の背中だった。
ギィ……バタン。
徹と麻里奈は、かろうじて入れる小さな地下食料庫に押し込まれ、
重い扉が閉められた。
闇。
真っ暗な空間。
音だけが、鼓膜に突き刺さる。
悲鳴。怒声。肉を裂く音。
ぐちゃり、ぐしゃり──血の匂いが充満してくる。
麻里奈「う、うう……」
徹「耳、塞いで。いいな、麻里奈……!耳、塞いで!」
お互いの耳をふさぎあいながら、
必死に、必死に、ただ時間が過ぎるのを待った。
(お父さん……お母さん……みんな……)
心が壊れそうになる。
でも、徹のぬくもりだけが、唯一の希望だった。
どれほど時間が経ったのか。
静寂が訪れたとき、扉の向こうに、もはや命の気配はなかった。
恐る恐る、地下庫を出た二人。
目に映ったのは──
乾ききった大地。
血に染まった土。
首筋に2つの穴を開け、干からびた村人たちの亡骸。
父も、母も。
友達も。
誰も、もう動かない。
麻里奈「……いや……いやだぁぁぁぁ……!!」
声を上げて泣き叫んだ。
喉が裂けるまで、声が枯れるまで。
──村は、死んでいた。
──血に染まった村を離れ、徹と麻里奈は夜の森を彷徨った。
草木はざわめき、吹きすさぶ風がふたりの小さな体を叩きつける。
行く当てもなかった。ただ──本能のように、足は湖へ向かっていた。
やがて、木々の切れ間から、月明かりに照らされた湖面が現れる。
願いの湖。
そこは、かつて土人たちが「どんな小さな願いも叶えてくれる」と信じていた、聖なる場所だった。
麻里奈「……ここ、だね……」
徹「……ああ。」
二人は湖のほとりまで歩み寄る。
夜の湖は静かで、冷たくて、だけど──どこか懐かしい温もりがあった。
麻里奈は小さな手を合わせ、ぎゅっと目を閉じた。
麻里奈(お願い……)
(もう、誰も奪われませんように……)
(お兄ちゃんと、ずっと生き延びられますように……)
(もう一度、大切な人たちに会えますように……)
そっと湖に向かって祈る。
隣で徹も、固く拳を握りしめた。
幼いながらも、彼の瞳には強い決意が宿っている。
徹「……俺が麻里奈を守る。絶対、守りぬく……!」
二人の祈りに応えるように、
湖面がふわりと淡い光を放った。
風が、静かに吹く。
麻里奈「あ……」
徹が持っていた石が、淡く光を灯した。
それは麻里奈が湖で拾った、美しい石──
『願いの石』。持つ者に加護を与える、奇跡の証だった。
徹「……これが……」
そっと石を胸に抱きしめた瞬間、
ふたりの体を優しい光が包み込む。
小さな希望だった。
たったひとつの、小さな奇跡。
けれどそれは、ふたりにとって、絶望を越えるために必要な確かな力だった。
徹「行こう、麻里奈。……俺たちは、生きるんだ。」
麻里奈「うん……!」
ふたりは手を取り合い、
夜の森へと、希望の光を胸に歩き出した。
──再び、誰かと出会う日を信じて。
【数年後】
あの日から、何年もの時が流れた。
吸血鬼の襲撃は、たった一度きりだった。
生き残ったのは、徹と麻里奈──たったふたりだけ。
彼らは小さな手で、家族と村人たちの墓を、願いの湖のそばに作った。
静かで、悲しくて、けれどあたたかい日々が流れる。
2人は互いに支え合い、成長していった。
森で食べ物を探し、古びた家を修理し、季節ごとに湖に花を手向けた。
願いの湖は、いつも静かに彼らを見守っていた。
徹『麻里奈、オレたちは生きなきゃな。みんなの分まで。』
麻里奈『うん。あたし、強くなるって決めたの。』
小さな命たちは、絶望を越え、力強く根を張った。
【旅立ちの夜】
そして──
またひとつ、願いの夜が巡ってくる。
麻里奈は願いの湖に立っていた。
月光が静かに湖面を照らし出す。
麻里奈(心の中)
『あたしは、世界を見たい。
家族を奪った奴らを、この目で確かめたい。
そして、守りたい。二度と、何も奪われないために。』
麻里奈『……願いの湖。
今度は、あたしの力を下さい。
大切な人を守るための、強さを。』
そっと手を合わせる。
胸の中で小さく、しかし確かな光が芽生えた。
徹『麻里奈、行こう。オレたちなら、きっとできる。』
麻里奈は小さな祈りを終えると、徹と肩を並べた。
そして、ふたりは静かに歩き出す。
まだ見ぬ未来へ向かって──




