#21
残りの授業は滞りなく進行し、比較的安定した一日を過ごせた。
これが明日以降も続くと思うと、憂鬱な気分になるのは仕方ないと割り切ってスマホを見た。
「零祓は返信なしっと____。 取りあえず、メッセージだけでも送っとこ」
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《今から帰るね》
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その一文を送信し、教室を出た。通り過ぎる他教室から聞こえてくる賑やかな笑い声やグラウンドで運動に勤しむ生徒。
「あ____生徒会室に呼ばれてるんだった・・・・・・・・・」
思い出した途端に押し寄せた重たい気分を枷に下駄箱へと向いていた足を変え、生徒会室へと向かった。
トントンッ__
右手の甲でゆっくりとノックする。
____入れ。
聞こえてきたのは旧校舎で自らを生徒会長と名乗った男子生徒の声。緊張した面持ちでドアを開け、中へと入った私に向けられたのは品定めを思わせる鋭い眼光だった。
(・・・・・・・・・)
苛立っているのか、それとも素の表情なのか?と、気を紛らわすための疑問を頭に浮かべる。
「えっと、・・・・・・欠席届の件でお伺い致しました」
要件を聞くや否や机の引き出しを開け、一枚の紙を取り出す。
「この書類に日付・氏名・欠席の期間と理由を書いて提出してくれ。 ____見た所、大した理由も無さそうに見えるがな」
それを聞いて、私の中で何かが曇った。
何に対して?
一体どうして?
__そう思ってしまったのだろう。
見つからない答えを前に思い返されるのは零祓と初めて出会った、あの夜の事だった。きっと、あの時、彼女は既にキズを負っていたはずだ。それなのに・・・・・・って、最初から私を代役にする為だったのかな・・・?
でも、それでも助けてくれたのは事実なんだ。
だから____
「そんなこと・・・そんなことありませんっ_!」
(私は何を言っているんだ? 波風立てないのが主義じゃなかったのか?)
「ほう、では一週間の無断欠席に値する理由があると?」
(相手は生徒会長なんだ、下手に歯向かっていいはずがない!)
「・・・それは____」
黙り込んでしまった。開かない口を無理やりこじ開けようと言葉を探すが何も出てこない。持ち時間のみをただただ消費していく。
その時____
プルルルル・・・・・・!
緊迫した空気を割るように鳴り響いた着信音。
「____失礼」
生徒会長は一言断ってから、電話を取った。その間も私は要件が終わった後の会話の続きを考えていた。啖呵を切ったのは私で相手はそれを真っ向から受け止める準備をしていた。
「「あぁ、それでいい。 俺もすぐに行く」」
会話の感じから終わりが近いことを察した。
ピッ____
電子音が鳴り、静かになった。耳に当てていたスマホを机に置いた、生徒会長の注意が再び私に向けられる。
「中断しておいて悪いが、これから生徒会の用事が立て込んでいてな。 書類は週末までに持ってきてくれ。 ____今回はそれでいい」
思いがけない展開に意表を突かれながらも、好都合な事に変わりはなかった。このまま話を続けていても、私には言い返すだけの言葉を持ち合わせていなかったのだから。
「はい・・・」
鞄に書類を入れ、チャックを閉めた。一秒でも早くここから逃げたかった。
「____そのキーホルダー?」
そそくさと部屋を後にしようとする私に疑問形の言葉が歩みを止めさせた。
「____校則違反でしたか・・・・・・?」
続きが怖くて、回答を誘導させる。
「____いや、少し見覚えがあってな」
その発言に思わず息を呑んだ。感覚の短い息遣いが苦しい。
「____妹がそれと似た物を集めていた気がしてな」
自然に続けられる会話。
それでも、雨野 椿姫の顔には微弱な動揺と影が見え隠れしていた。
澪の事を知らないはずはない。むしろ、知っていたからこそキーホルダーの存在に気づいたのだと思う。
「____そうなんですね」
私から言及することは別にない。
零祓の言っていたことをそのままの意味で解釈するなら、雨野 澪の死体は速やかに処理され発見つからない。
(・・・・・・そう言えば、処理ってどうやって・・・?)
「無駄話はここまでにしておこう。 俺はこれから、生徒会の仕事が立て込んでてな」
ふと、出現した気味の悪い想像に被せる様に聞こえた椿姫の声。見た目通りの現実主義者だと思った。
「____失礼します」
交わす言葉も程々に廊下に出た私を窓から指し込んだオレンジ色の夕焼けが照らし出す。数分間に凝縮された疲労は、さることながら知らない学校での一日の疲弊はすさまじいものだった。
とは言え、これから帰宅しないといけないわけで・・・私の苦労はまだまだ終わりそうになかった。
「・・・・・・・・・はぁ」




