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_______心が内部分裂を起こした。
ああしてみたかった。
そうしてみたかった。
こうしておきたかった。
ありとあらゆる可能性を芽吹かせては、その悉くを枯らせていった。どうやら、これは風邪とは比べ物にならない程の傷を刻んでしまっていたらしい。遥か彼方を見据える瞳の先には、いつもと変わらない天井があって成し得ようと思った感情までもかき消してゆく。
_______だからかな?
この世界を…日常を……壊してみたくなった。
代り映えのしない風景に飽きがきていたんだと思う。
それを幸せと定義する事もできるだろう。
だが、自分にとっての当たり前が誰かにとって、羨む対象だったとしても人は人の心の在り方を決して理解できない生き物だ。だから、他人の価値観は意味をなさない。
もし、それができていたら現状の世界はもっとシンプルで事の善悪が明確にされているはずだ。
「そういや、夜ノ舞のやつ、先週から来てないんだっけ……」
雨音に耳を傾け、暗く沈んだ風景の端に目をやりながら考えていた。特に何かしたいわけでも、思いを伝えたいわけでもなし____。
ただ、席が隣で必要最低限の会話をする仲なわけで、これでも一応、隣がいない事への虚無感というか違和感には多少なりとも気にしていた。俺の座席は教室に入って一番奥の後ろ。そして、退屈な学校生活の隣人が夜ノ舞だ。感情が読み取れない声色に腰まで伸ばした黒髪、暗い性格というわけではないが交友関係も広い様にも見えない。かという自分自身も人の事を言えた立場じゃないが………。
どちらにせよ、彼女が長期にわたって学校を休むということはこれまでになかった。休日を挟んで明日は月曜日。
「明日は、いるといいんだけどな」
____っと、これ以上、彼女について考えるのはよそう。これまで必要以上に人との関わりはしてこなかったんだ。たかが、隣の席の少女一人が学校に来なくなったくらいで自分には関係ない。もし、関係があったとして、それはその時になって考えればいい。
だって、関係値の蓄積は過ごした時間ではなく想った瞬間の数で決まるのだから。
辿り着いた結論とそれが自分にとってどう影響しているのかしばらくの間、考えたそして、そっと夜の安寧に意識を手放した。




