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叙事詩の進行  作者: あいすに刺さる茶葉
第一章

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第2話  ザイン・カーディフ



下層到達宣言をした翌日、明日の攻略の為にカインと、ザインは都市の商店街を歩いていた。


「いやー、昨日は最高だったなぁ!夜遅くまで飯を食ったり、腕相撲で勝負したりとか、、ああ最高だったなぁ、、、でも今日から切り替えていかないとな!」

 

 ザインの足取りは、石畳を砕かんばかりに力強い。


「まぁ、とりあえず新しい武器買いに行こうぜ!」


 カインの目は、早くも新装備の重みを求めて、武器屋の並ぶ通りを鋭く射抜いていた。


2人はとても楽しそうに会話しながら歩いている。


ふと、ザインが聞いた。


「てか何で昨日急にあんな事言ったんだ?何かきっかけでもあったのか?」


「えぇっと、、何でだろ、何かやらなくちゃいけないんだって感じが強くなって、、、?」


「まぁいいか、お前がやっときっぱりと先へ進むって断言してくれたんだ。俺は嬉しいぜ!」


「ははっ」


(確かに俺は何で急にあんな事を言ったんだ?確かあの時は、、、)

 

 カインが思考しているとザインが喋りだした。


「そういや俺とお前が初めて会った時の事覚えてっか?」


「当たり前だろ忘れるわけもない。なんせお前が初めてのパーティだったんだから」


「ハハッ、あの時はここまで仲良く無かったからなぁ、、、特に、お前が初めて言った言葉まだ忘れてねぇからな?」


「うるせぇ!過ぎたことだろ?」


 と、彼等は軽口を叩き合った。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 カインのランクが3になり、初めて迷宮に潜ってみた。

 第1階層、第2階層は以外と難なく踏破できた。

 事件が起きたのは第3階層だった。


 カインが第3階層を進んでいると、奥の方から悲鳴が聞こえた。


 「た、助けてくれぇーー!!!」


 カインは直ぐに走り出し、声がする方へ向かった。その先にいたのは、、

 ゴブリン3対相手に立ちすくんでいたドワーフだった。自分よりガタイもいい。


 カインはゴブリンはレベル3なら難なく倒せるはずだが、、と思っていると、、


「おい!そこのお前!俺を助けてくれぇ、、!ゴブリン怖ぇよぉ、、」


 と今にも泣き出しそうな顔で懇願してきた、、、いや、もう既に泣いていた。更に彼の股間部分から黄色い液体も漏れていた。


 それを見たカインは、、


「え、きもぉ」


 と、無慈悲な発言をした。

 それはとても率直な発言だった。

 

 その言葉が余程心に効いたのか、目の前のドワーフは気絶してしまった。


  カインは突然目の前でぶっ倒れられて驚いたが、とりあえずゴブリンを全て切り、彼の目が覚めるのを待った。






「う〜ん、、あれ?俺は一体どうして、、」


 と、ドワーフが戸惑っていると


「起きたか」


 マスクと手袋、更に消臭剤まで持ったカインが現れた。


ドワーフはあの時の悲劇を思い出し、、、



「うわぁぁぁぁ!!!」


 声にならない声を叫んだ



***



「本当に助かった、感謝する。俺の名前はザイン・カーディフ、ドワーフで18歳だ!お前は?」


「え、お前年上だったの?」


「....」


「あ、悪い、、俺はカイン・ディペンダー人間で17歳だ、まぁ、、一応よろしく?」


 ザインは目を輝かせ


「おう!よろしくな!」


 と、握手をかわそうとしたが、、


「あ、握手とか無理っす。衛生的に」


 …断られてしまった。

 しかも酷い理由で





 2人は一緒に迷宮を出た。


「じゃあまたな」


 と言い残し、カインは帰ろうとした。


「ちょ、ちょっと待ってくれ」


 とカインを呼び留めた。


「ん?まだ何かあるのか?」


 ザインは恥ずかしそうに、、


「そ、そのぉ、、なんだ、ここで出会えたのも何かの縁だしさ、俺と一緒にパ、」


「断る」


「え?」

 食い気味、、?とザインは思った


「聞こえなかったか?断るって言ったんだ」


「な、何でだよ?!」


「あのなぁ、見ず知らずの人とパーティ組みたいなんて思うわけないだろ?」


「いや、大体見ず知らずの人と組むだろ!!」

 と、返したが、


「まぁ、大半の人はそうだろうけど、、俺はやだな」


「何でだよ?冒険者は助け合いが大切だろ?」


「確かに助け合いは大切だ。だが、俺はとある意思の強い者としか組みたくねぇと考えてる」


「とある意思?どんな意思だよ」

 と、ザインが問う


「不可能を可能にするっていう強固な意思だ。なぁ、お前に、それがあるか?」


「ッ!!」


 ザインは頷けなかった。なぜならつい先刻ゴブリンに勝つという意思を全く持たず、ただ助けを待っていたからだ。自分で抗おうともせず。


「そういう事だ、じゃあな。」


 カインは歩き始めてしまった。


 しかし、ザインにはそれを止める言葉が見つからなかった。



 そして、ザインとの声が届かなくなる距離にカイン達しようとしたその瞬間

 

 ザインの意思を無視して、喉の奥から這い出してきたのは、彼自身の記憶には存在しない言葉だった。


「ラ、ン、ディ、む、ら」


 ――自分の声ではない何かが、無理やり声帯を震わせているような、吐き気を催す違和感。



 その瞬間、カインの足が止まってこちらを振り向きザインの胸ぐらを掴んだ。


「おい、何で知ってんだ?」


 ザインは抵抗出来なかった。それ程の力だったからだ。


 しばらくすると胸ぐらを離し、


 「おい、着いてこい」


 と、ザインを呼びかけた。

 ザインは


「あ、あぁ」

 

 と、曖昧な返答を返した。






 ギィィと古い扉が開く音がする。

 

 そう、ここはカインの家だ。

 家の中はとても散らかっていて、埃だらけ、更には蜘蛛の巣まで大量にあった。


「お、お前こんなきた、、」


「なんか言ったか?」


 その無言の圧にザインは黙り込んだ。


「まぁ、とりあえずそこに座ってくれ。」


 周りより多少は綺麗な所にザインは腰をかけ、カインも机を挟んだ反対側に座った。


「じゃあもう一度聞くぞ?なんで()()()()()()()()()を知ってんだ?」


「えっとそれはだな」


 と、その先の言葉をザインは発しようとしたが、




 辞めた。




「んな事どうだっていいだろ?」


「はぁ?何言って」


 と、カインも言葉を止めてしまった。


「まあ、()()()()()()()


「なあ、お前ってどこから来たんだ?」


 ザインは少し言い淀んだが話し始めた。


「俺は神聖国家セーラで生まれたんだ。親は父親が1人で母親は俺が産まれる前に死んだ。それに、一人っ子だった。」


「家では散々だったなぁ、、父親が酒で酔っ払った後の暴力がかなり酷かった。そりゃ、小さい時は本当に怖かった。今でもそうだ。誰かに力を振るわれそうになると、ビビっちまう、、今日の事みてえにな。」


 カインは無言で聞いていた。


「んで、とうとうこの生活が嫌になって家出したんだ。勿論父親は俺を血眼で探してた。自分のサンドバッグが無くなっちまうんだからな。」


「だが俺は逃げ切った。そして、逃げた先が迷宮国ランズだったんだよ。そこからは金を稼ぐ事に一生懸命だった。つっても魔物討伐の依頼はできるだけ受けなかった。なんせ怖ぇからな。」


「んで今日やっとランク3になったからトラウマを克服するためにも迷宮に潜ったってわけだ、、、結果駄目だったけどな、、」


 そんな悲しそうな目にカインは


「、、、じゃあもう一度潜りに行こう。今すぐに」


 ザインは驚いた顔をした。


「は、はぁ?今から?!てかなんで俺に協力してくれるんだよ、強い意志を持たねぇ奴には興味ねぇんじゃ無かったのか?」


「お前が、、、昔の俺に似てるからだよ。」


「昔のお前、、?」


「そうだ。俺がこの都市ガダルに来た理由は、迷宮の最深部に行くのが夢だったからだ。」


「さ、最深部?!ランク9の奴らですら行けてねぇのに?!何でだよ?」


「小さい頃、父さんがこんな話をしてくれたんだ。」




「なぁ、カイン迷宮って知ってるか?」


「うん!知ってるよ!とっても広いとこでしょ?」


「ああそうだ。父さんの夢は迷宮の最深部に行く事なんだ。」


「どうして?」


「最深部にはきっと誰も知らない景色が広がっている。そんな物男のロマンだろ?」


「ろまん?」


「ハハハ!まだカインには早かったか。まあ少し大人になれば分かるさ」




「そんな話をしてくれた父さんは、、いや、村の皆ごと死んだ」


 カインはとても悲しそうな目をしていた。


「ッ!!」


「村に大量の魔物が押し寄せて来てな。友達や、知り合いは全員死んだんだ。そして俺達は父さんが必死に逃がしてくれて助かったんだ。」


「俺達?お前以外にも誰か助かったのか?」

 

 不思議そうにザインが聞いた。


「あれ?俺達って言ったか?すまんそれは間違いだ俺だけが生き残ったんだ。魔物が居なくなった後全員の墓まで作ったからな」


「その時の俺は思ったんだ。自分を守ってくれた父さんの夢を叶えて、そばで見守ってくれてるはずの父さんに最深部の景色を見せてやろうって」


 「…」


 今度はザインが無言で聞いていた。


「それからこの都市に来ていっぱいクエストをこなしていった。早くランクを上げて迷宮に挑むために。」


「でも、色んな冒険者の話を聞いているうちに自分は本当に最深部まで辿り着けるのかって不安が出てきたんだ。中層や、下層で死ぬやつ。そして大規模なクランのパーティでも死ぬって。そんな話を聞いて足がすくんじゃったんだ。」


「そうだ、、俺もお前と同じで最初は怖かったんだ。でかい目標を持つだけ持ってビビってた。

でも、俺は変えたんだ。ビビってる俺じゃこの先何も出来ないと思って」


「どうやって変えたんだ?!教えてくれ!!」


 藁にもすがる思いでカインに聞いてみると、カインは少し笑って


「、、、自分のこの先の人生を考えてみたんだ。そしたら出来ないことは出来ないで済ませて、また別の事を始める、、諦めが早くなる奴になるって思ったんだ。」


「、、、」


「俺は、そんなつまらねぇ男になりたくないって考えた。ただそれだけだ。」


「お前はどうだ?諦めてるのか?怖さに打ち勝つことを」


「諦めてなんか、、ねぇよ!」


 カインはその回答がまるで分かっていたように聞いた。


「じゃあ、打ち勝つためにも迷宮に潜りに行こうぜ!!」


「おう!!」


 とても元気な声でザインは応えた。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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