第1話 プロローグ
この世界『トール』には4つの国が存在する。
その中の1つ迷宮国ランズは世界で唯一
『迷宮』を所持している。
迷宮はとても資源が豊富であり、貿易等様々な用途で使用される。
その迷宮の資源採取を主に仕事にしている職業が『冒険者』という者たちだ。
冒険者達は迷宮で採取した物を
『冒険者ギルド』へ提供し、お金を得たり…
クエストを達成すると、冒険者ギルドを通してクエストを発注した者から報酬を得ることができる。
迷宮は上層、中層、下層、深層と4つに分かれていて、『魔物』という人類の敵対生物が存在しており、魔物の強さは下へ潜れば潜る程強くなっていく。
殆どの冒険者は『パーティ』という集団で行動し、迷宮探索を進めていく。
そんな中とある2人が第11階層で魔物と戦闘を行っていた。
「おらぁ!」
と少年が叫び、剣で魔物の下位狼の群れを切り刻んでいた。
彼の名前は『カイン・ディペンダー』
17歳で『ランク4』の冒険者だ。
『ランク』
冒険者には必ず、冒険者ギルドが定めた
『ランク』がつけられる。
ランクは1から10まで存在しており、始めはランク1からスタートする。
冒険者達はランクを上げることを目標にしている者が大半だ。
ランクは主にクエストや、迷宮、魔物の適正ランクを冒険者達が自分の実力に合うクエストや、階層を見定める為に存在する。
「そっちに3体行ったぞ!!」
と報告をしてくれた斧を振り回して魔物を狩っている大男
彼もまた冒険者であり、
名は『ザイン・カーディフ』
18歳でランク3の冒険者だ。
カインは人間だが、ザインはドワーフという
『亜人』に分類される。
人類の種族は5つに分かれる。
人間、ドワーフ、エルフ、鬼人、魔人。
人間以外は亜人と分類されている。
「やっぱこの層で苦戦してるレベルじゃ、まだまだ深層へは挑めないな…」
と、カインはしょんぼりと言葉を零した。
「大丈夫だって! だって俺らまだ10代後半だぜ? まだまだ人生は長いんだからよ!」
ザインが励ましてくれるが、それでもカインは落ち込んだままだ。
そんな様子を見たザインは
「あー…、そうだ今日はここまでにしよう。もうだいぶいい時間だし、帰って美味いもん食おうぜ」
「ああ、そうだな…」
2人は家に帰り食事をする事にした。
「「ただいま〜」」
と2人が声を出すと、
「カイン! ザイン! お帰り!!」
と元気に出迎えてくれた少女がいた。
彼女の名は『リア・シリオン』
14歳の冒険者でランクは2だ。
種族は人間、この『クラン』の管理を主に行っている子だ。
クランとは、複数のパーティ集団であり小規模クランであれば2、3つ程しかパーティが存在しないが、大規模クランだと、10や、中には20程のパーティがいるクランも存在する。
クランはギルドに申請書を提出すれば誰でも作成でき、最低で14人の在籍が必要である。
14人という数字はパーティの基本的な人数から来ていて、パーティの基本人数は7人。なぜなら増やせば増やす程指揮系統が乱れるからだ。
クランを作成するとき名前を付けることが出来る。
そして、カイン達が在籍するクランの名は――
「団長、副団長帰り遅せぇよぉー、このクラン『七色のテラス』皆で夕食を待ってたんだぜぇ?」
そう、『七色のテラス』という名で、
団長はカイン
副団長はザインが担当しており、団員は団長、副団長含めて21人だ。
「悪かったって…こいつがまだやりたいーって聞かねぇからよ」
「はぁ? ザインが金欠だーとかほざくからわざわざ着いてきてやったんだろ? 人のせいにすんじゃねぇ!」
そうして口論する2人を尻目に団員達は夕食を食べ始めていた。
◇◆◇
「ていうか団長知ってるー? 『白剣姫』の事」
と質問してきたのは小柄な少年『ライ・ベネフ』
15歳でランク4だ
「あー、名前だけは聞いた事あるな。どんな人なんだ?」
「えぇ、それ団長としてどうなの…? 『白剣姫』はランク8の冒険者で全クラン内現最強と言われてる『天頂の円卓』に在籍している人間の女の人で、名前は『メルダ・ディンス』団長と同年代で最強のレイピア使いって呼ばれてる人だよ。ここ最近凄い戦果をあげてるんだってー」
「ら、ランクは、はちぃ?!」
と、話半分に聞いていたザインが急に驚愕の声を発した。
「いや、なんで君も知らないんだよ? あんたらリーダーの自覚ある?」
と、ライが言うと、周りから大爆笑が起きた。
「てか俺らの情報収集力はともかく、ランク8って国に数十人しかいないって言われてる『最上位冒険者』だろ? バケモンじゃねぇか!」
と、ザインが叫んだ
ザインが叫ぶのも無理はない。冒険者はランクによって名称が変わる。
ランク1、2が
『駆け出し冒険者』
ランク3、4が
『冒険者』
ランク5〜7が
『上位冒険者』
ランク8〜10が
『最上位冒険者』と呼ばれている。
その中でも最上位冒険者は、殆どの者が至れない否、至ろうと目指さない。なぜなら最上位冒険者は人の領域を逸脱したレベルであり、大抵の冒険者が目指す目標はランク7までだからだ。ランク8からは人外であり、皆が憧れる存在であるが、逆に化け物として恐れられる存在でもある。
「おい、ザインそんなんでびびっちゃいけねぇぞ?なんせ俺達はいつか現最強クラン『天頂の円卓』を超して、迷宮の最深部を目指すクランだぞ? ランク8にビビるよりも、超えるべき目標として捉えないといけないんだ」
その真っ直ぐで純粋な言葉に団員達は震える。何故なら出来て当たり前だと彼は捉えているからだ。
ランク8なんて雲の上の存在だと思っている自分達とは圧倒的に自信や、覚悟が違うからだ。
「…団長言い方は悪いっすけど、俺らの最高到達階層は中層の第27階層ですよ? 今のままで行けると思います?」
団員の1人、ランク3の『ライズ・ガーラ』が言った。
「確かにそうだな今のままじゃ行けるわけもない。なんせ行こうとする覚悟が皆弱いからな」
カイン以外の全員が息を呑んだ。彼等に実感があったからだ。
自分達じゃ最深部に行けるわけない。
現最強なんか超せるわけがない。
各々思うところがある。
しかし、カインはここで喝を入れた。
「俺らのクランに勧誘する前、あるいは入団時に聞いたよな? 不可能を可能にさせようという遺志を持っているか」
団長達はハッとした。
そうだ、そんな質問をされてこのクランは普通のクランとは何か違うと思って入団を決意したんだと、各々が自分の勧誘日や、入団日を思い出した。
◇◆◇
「やぁこんにちは。俺はカインって言うんだけど、君、言っちゃあ悪いけどあぶれ者だろ?」
「…なんですか? 嫌味を言いに来たんですか?」
カインののらりくらりとした態度にライは内心めちゃくちゃイライラしていた。
「違ぇよ。俺はクランメンバーを集めてるんだよ」
「だったら帰ってください。あぶれ者とか言うやつの所に入りたくありませんから」
「俺はまだ入ってなんて言ってないが?」
「ッ!!」
本当になんなんだこの人は。僕をイラつかせて楽しいのか?
ライは目の前の男の内心がさっぱり分からなかった。勧誘もせず、ただ煽っているだけだからだ。
「まあ、でもあれだよな。少なくともこんな路地裏で暮らすぐらいなら死んだ方がマシだよな」
「ッ!!」
本気でキレた僕は、カインに殴り掛かる。だが、弱すぎる僕では相手にならず、簡単に避けられ腹に一撃を喰らう。
「オボッ!」
「なんだ、つまんないやつだったか」
そう言い、彼は立ち去ろうとした……が
「ふざけんじゃ…ない…。待て…」
そんな事は許さない。絶対に一撃でも入れてやる。
散々煽られて、負けてもう一生こいつに復讐出来ないなんてやだ。
「ふん。以外と根性あんじゃねぇか」
そして、半日俺達は殴り合った。
当然俺はボコボコにされた。一撃すら入れられなかった。
床にぶっ倒れて動けない僕に対して、彼は告げた。
「やっぱお前みたいなやつがいいんだよ。出来ないって分かってても挑もうとするやつが」
「?」
「なあ、お前。名前は?」
「……ライ・ベネフ……」
口すら動かすのも辛いのに、掠れた声で名を口にした。
「そうか。ライ。お前に不可能を可能にしようとする意志はあるか?」
そんな問いに僕は
「……無かったらこんな生活嫌で自殺してるでしょ」
「確かにな。なぁ、ライ」
「……」
次の言葉を僕は察する。既に返答は決まっていた。
「俺達のクランに入らないか?」
「……入ったらカインとまた勝負できる?」
「当たり前だろ。いつだって受けて立ってやる」
「……その、これからよろしくお願いします……」
「…! あぁ、よろしく」
◇◆◇
何故今まで忘れていたんだと心の中で自分を叱責する者もいた。
全員がこれは自分達が決意した道だと理解した。
「一度問おう」
「お前らに覚悟はあるか?」
その問いに
『はい!』
と、全員からの力強い返答が返ってきた
すると、カインは
「よし! では明後日クラン総出で迷宮に挑む! 目標は下層到達だ!!」
と、無茶な事を言い出した。
だが、このクランは不可能を可能にするクラン
誰からも文句は出なかった。
文句よりも自分を鼓舞する声が上がった
「うぉーーー!」
「やってやる…いや、必ずやりとげるんだ!!」
「中層なんてちょちょいと攻略してやる!!」
等たくさんの声が家中に響いた。
カインは言った
「絶対に明後日、下層まで進む。必ずだ! 俺らの目標への1ページを刻もうぜ!!」
団員達から大歓声が上がった
この日の夜は長い夜になりそうだ
◇◆◇
夜遅くクランのテラスで月を眺めている者がいた。
ザインは彼に声をかける。
「どうしたんだ? そんな黄昏てぇ、まあ年頃だからなぁしゃあないか!」
と、冗談を言うように声をかけた。
「年頃って…俺とお前は1個しか違わねぇだろ…ていうか黄昏てるわけじゃねぇよ…でもなんだろうな、何か大切な物を忘れてる気がするんだ」
カインの表情は夜のせいでよく見えない。
その為どんな感情で発しているのかザインは分からなかった。
「忘れてる? それってどういう意味だよ?」
と、ザインが聞いてしまった。
「うーん…やっぱなんでもないや。大丈夫」
と、カインが先程までの様子が嘘のように変わり、答えた。
「そうだな、そんな事より俺らもランク上げねぇとな!!」
ザインも質問を辞め、カインと、自分達の事を相談し始めた。
この時彼等は知る由もなかった。
あの悲劇を
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