第23話 翡翠の輝き
カインは目覚めて動けるようになってから実戦形式に入った。
リアは最初の二年くらいで基礎体力がある程度出来てきたので、攻撃魔術のバリエーションを増やしたり、魔力密度を上げる修行に入った。
ユルンは…あの日から帰ってこない。
そんな中、俺だけが何も成長してなかった。
『覇断』それは最上位冒険者達が息をするかの如く使用する技。
アルバート、メルダ、ルーク…使用者は多岐にわたる。
武器に異力を纏わせて、攻撃力を増加させることが出来る。それも彼等は常時だ。
最小限の異力を纏わせ、最後の一撃だけ大量の異力を纏わせてもっと威力を底上げする事も出来る。
カールはよく見ると常時異力を纏わせていた。それも最小限。
カインはまだ常時とまではいかないが、着々と成長している。
そんな中で俺だけなのだ。何も出来ていない奴は。
斧に纏わせる以前の問題でまず、異力の感覚すらあまり掴めていなかった。
カインや、カールは心臓部辺りから全身に流れていると言っていたが、俺には異力の残量しか感じ取ることができなかった。
俺は……何しに来たんだよ。
カインに命を繋いでもらって、罪を償う為に皆に協力した。
だがどうだ? 何も出来てない。何も成長しない。
それどころか、もはや足を引っ張ってる。
あの日、オーサーに操られていたがその時の力も殆ど残って……
操られて……?
そういえばあの時、
『オーサーが膝をついているカインに、斧を大きく振りかぶった。その刃には漆黒の魔力と緑色の何かが集束し、空間そのものが歪んでいる。』
あれは…覇断だったんじゃないのか? オーサーが俺の体を使って放った技…
じゃあ俺にもその資格があるってことか…?
……
やれるか? じゃないよな。やるんだ。
不可能を可能にする。この誓いを立てたのは自分だ。
資格がある事は分かった。じゃあ次はやり方だ。
確かあの時は…うーん、あまり思い出せない。何せ三年前だしな…
異力はスキルを使う為の原動力と聞いているが…
まて、じゃあ俺のスキルはどうなんだ?
武器の重量を上げる…それって、覇断に近しい技なんじゃないか?
重量はおそらく、異力が底上げしているんだ。俺の斧には鉄、魔石、後ちょっとだけオリハルコンが使われている。それらに異力を浸透させて、重量をかさ増ししているのだろう。
じゃあ無意識に俺は斧に異力を伝わせる事が出来てたって事かよ?!
じゃあ話は早い。スキル発動時に異力を流している筈だからその感覚を掴み、応用するだけだ。
「…『獣の重圧』!」
発動と同時に今なら分かる。心臓部から、腕、手、そして、斧へと異力は向かっていく。それを…
「ねじ曲げるっ…!」
異力を無理矢理にでもいいから斧に伝わせるんだ。斧の内部じゃなくて、外部に。あの時オーサーがやっていたように!!
異力は歪に蠢き、斧の外部へと行った。だが…
「?! やべぇ?! 霧散しちまう?!」
異力が霧散しかけてしまう。
後一歩なのにっ……!
『その刃には漆黒の魔力と緑色の何かが集束し』
……!
魔力で抑え込むんだ!
一か八か、やってみるっきゃねぇ!!
溢れ出る異力の奔流。それに流されそうになる斧に自分の魔力でおさえつける。
あの時の黒い魔力ではなく、ザイン本来の青色の魔力で!!
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
ザインの斧は、美しいエメラルドグリーンに輝いていた。
「しっ…しゃあぁぁぁ!!!!」
「ほらな? 言ったろ? 熱が入ったって。お前が出来ればあいつもできるんだよ」
「自分の魔力で押さえ込んだのか…あいつ意外と頭いいよな」
そんな他愛もない会話を、儚くも美しい翡翠の輝きの前で交わしていた。
◇◆◇
「よし! 今日からザインも参加だな!」
満面の笑みで兄貴は喜びを顕にしていた。隣にいるザインは何をするのかと、目を輝かせているが…どうなっても知らねぇぞ?
「ぐべぇッ?!」
「おぼぉッ!!」
ザインと俺の汚い声が神山に響く。
山の一部は赤く染まり、二つの人? のようなものが転がっていた。
「おいおい。んなんでへばってちゃ、オーサーなんて無理に決まってんだろ?」
((いやいや、オーサーの前にあんたに殺されるって!!))
奇跡的に二人の思考が時間差無く完璧に一致する。だが、今そんな無駄な事に奇跡を使ってはこの先どうなるか分からない。
ザインが覇断を使えるようになってから、兄貴対俺達という一見こっちが有力に見える戦闘が始まった。
当然、結果は惨敗。
まず、ザインが瞬く間に顔面を地面に叩きつけられ、それに気づいた俺も気づくのが精一杯。兄貴はザインを殺った次の瞬間、目視するのがギリギリの速度で俺の鳩尾を剣の柄を思いっきりぶつける。
痛い痛い痛い痛い痛い痛いィィィィ!!! ザインあの時俺も同じ事してごめんなさい! ごめん、死ぬぅ!!!
と、過去の俺、現在の俺は完全に悶絶していた。
「せめて避けてみろよ? 修行にすらなってねぇぞ?」
「クソッ……格が違いすぎる…」
「マジで一回死んでんじゃね? 俺ら」
「よし、そんな愚痴が飛ぶならまだまだ元気だな」
「「うぎゃぁぁぁぁああああ?!?!?!」」
二人の絶叫は神山に留まらず、エデンの園までとどいてしまい、聞いていたエルフ達は
「魔物かしら?」
「多分、赤竜でしょー」
「ただの汚いゴブリンじゃない?」
散々馬鹿にされていた。
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